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建設業A社会計システム構築における設計レビューについて

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(設問ア)
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1.	ユーザニーズの特徴とそのシステムの概要
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1.1 ユーザニーズの特徴
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 建設業A社の旧システムは、汎用機上に自社開発され
たシステムであり、25年間使用されてきた。ユーザニ
ーズを取り入れ続けてきた結果、プログラムの保守性が
悪くなり、ニーズが素早く反映されないことやサブシス
テム間の連携に問題が発生し、データの二重入力やデー
タをパソコンに取り出して活用できないなどの問題が起
きていた。
 このようにデータ二重入力防止やデータ活用などの操
作性向上が主なユーザニーズであった。
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1.2 システムの概要
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 建設業A社が再構築するシステムは、施工系、人事・
給与・総務系、会計系の大きく3つのシステムで構成さ
れており、会計系だけでも8つのサブシステムに分かれ
ている大規模なシステムである。

 今まで利用してきた汎用機ベースのシステムからクラ
イアントサーバ型のシステムに変わることにより、デー
タ活用のニーズは満たされるが、その反面、見た目や操
作性が大きく変わることになる。

 私は、ユーザニーズを新システムにうまく取り込み、
プロトタイプなどで見た目や操作性を確認しながらレビ
ューを進めていくことが重要だと感じた。

 またシステムの規模が大きいことから、他のサブシス
テムとの操作性をできるだけ統一的なものにしながら、
債権管理業務を行うユーザ独自のニーズをうまく取り込
んでいくこともレビューのポイントであると私は考えた。

 私は、システムインテグレータB社に勤務しており、
アプリケーションエンジニアとして会計系の債権管理サ
ブシステムのチームリーダを担当した。

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(設問イ)
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2.	レビュー方法と工夫した点
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2.1 レビュー方法
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 私が、レビューを最も重視したフェーズは外部設計フ
ェーズである。なぜなら本開発プロジェクトは旧システ
ムの再構築であるため、システム要件についてはほぼ明
確になっていたことに加えてユーザが操作性について不
満を持っており、新システムではより高い操作性を求め
られていたからである。

 レビュー方法は、ウォークスルーを採用した。なぜな
らインスペクションのようなフォーマルなレビューより
も意見が出やすいと考えたからである。
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2.2 レビュー実施における問題点
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 プロジェクト発足当初からユーザ側の体制をサブシス
テム毎に1名専属で割り当てるよう依頼していたが叶え
られず、一人のユーザが2〜3のサブシステムについて
現業をやりながら兼任でおこなうこととなっていた。

 私は、担当したユーザは経理部に所属しているので、
外部設計フェーズの期間中は半期決算作業で忙しくなる
と考え、ユーザに確認したところ半期決算作業の約1ヶ
月はメールのやり取りも難しくなるとのことであった。
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2.3 レビュー実施において工夫した点
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 私は、半期決算前後の短期間に効率的にレビューを進
めるために、以下3つに分けてレビューの進め方におけ
る工夫をおこなった。
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2.3.1 半期決算前のレビューの進め方における工夫
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 私は、要件定義の結果を反映した設計書を使って、担
当ユーザと私と設計者1名の3人に絞ってレビューを進
めることとした。なぜならば、多くの人を参加させてい
ろいろな意見を聞くのも大事だが、意見が発散して収集
がつかなくなり時間が長引くことを恐れたためである。

 機能間の連携に関する問題については私が対応して設
計者に伝えることとし、設計者は交代でレビューに参加
させて、自社に戻っている間に設計書を修正させた。こ
れらにより、短期間ではあったが債権サブシステムの
26機能全てのレビューを期間内に終えることができた。
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2.3.2 半期決算中のレビューの進め方における工夫
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 私は、ユーザを含まない内部レビューにおいて、問題
点の抽出のみを行うように徹底させた。なぜならレビュ
ーで出た問題点についてはその場で検討したくなるもの
であるが、時間がかかってしまうためレビュー参加者全
員の時間をそれに拘束されたくなかったためである。問
題点の解決案は設計者に検討させることとし、スキルの
低い設計者については私か他のメンバがサポートするこ
とで検討させ、次回のレビュー時に確認するようにした。

 また、この期間中に連携するサブシステムを交えたレ
ビューを行うようにした。なぜならば、今回のシステム
は大規模なシステムであり、操作性をできるだけ統一さ
せることも重要と考えたからである。
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2.3.3 半期決算後のレビューの進め方における工夫
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 私は、半期決算後にプロトタイプを使ったレビューを
実施することとした。なぜならば、汎用機ベースのシス
テムからクライアントサーバ型システムに変わることに
より、操作性だけでなく見た目も大きく変わるため、実
機を使って確認することが重要と考えたためである。

 プロトタイプ作成作業については、工数がかかるもの
ではなかった。なぜならば、設計書の画面レイアウト設
計は、開発ツールで作成したものをキャプチャーして設
計書に貼り付けていたため、画面プログラムのレイアウ
ト部分の開発は完了していたからである。私は、これを
利用して、パソコン上で動作するように若干の手を加え
させることとした。

 私は、プロトタイプで利用した画面プログラムを廃棄
せず流用させることで製造工程の効率化にもつなげた。

 今回のレビューでは、担当のユーザ1名だけでなく、
他の担当者や責任者を含めたメンバでレビューを行った。
なぜならば、一人のユーザの意見だけでは、後になって
問題が発覚することを恐れたためである。

 プロトタイプを見せながら、設計書のレビューを多く
のユーザに対して行うことにより、更に多くの意見を収
集するとともに、問題点をその場で解決するなど有効な
レビューとなった。

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(設問ウ)
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3.	レビュー結果のフォローアップと今後の課題
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3.1. レビュー結果のフォローアップ
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 私は、レビュー結果のフォローアップについては、対
応漏れを完全に排除することと、優先度をつけて速やか
に対処する必要があると考えた。そこで、プロジェクト
で標準化された議事録とレビュー結果報告書以外に、私
が独自で作成したレビュー結果記入表も合わせて利用す
ることとした。

 なぜならば、標準化されたレビュー結果報告書は、ユ
ーザへの納品物となっており整ったフォーマットとなっ
ているとともに、品質管理システムへの入力項目も含ま
れており優れたものであるのだが、1つの問題点を1シ
ートづつ記入する形式であることと、結果欄が一つなの
で経緯がわかりにくかったためである。

 私の工夫は、表計算ソフトのソート機能を使って発生
順や優先度順に並び替えたり、ステータスごとに絞り込
んだりして一覧形式で見ることができるようにした。ま
た、1つの問題に対して時系列に回答や結果を記入でき
るようにして最終結果が出るまでの経緯がわかるように
した。これをサーバ上で共有できるようにして、メンバ
から問題点や検討結果を書き込めるようにし、それを受
けて私がレビュー結果記入表でユーザに確認を取り、そ
の結果を記入してメンバがリアルタイムに参照できるよ
うにした。

 これらにより、修正の漏れを排除するとともに優先度
に応じた速やかな対応ができた。

 このフォーマットは他のサブシステムでも真似して利
用するようになり、プロジェクト内部の標準フォーマッ
トとなった。
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3.2 今後の課題
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 ユーザの体制をサブシステム毎に専任で配置してもら
えなかったことは、スケジュールや品質に若干の影響が
あったと反省している。チームリーダとして、プロジェ
クトリーダにもっと進言してユーザを説得すべきだった
と思う。

 しかしながら、今後のプロジェクトにおいても同じよ
うな体制で進めなければならないことがあると思うので、
今回工夫したレビューの進め方と結果のフォローアップ
方法を更にブラッシュアップして、より良いレビューに
なるように努力していきたいと思う。





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