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A社におけるヘルプデスク業務の高度化と効率化

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(設問ア)
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1.ヘルプデスクの概要と利用者の特徴
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1.1.システム概要とヘルプデスクの機能
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 A社はステンレス鋼鈑を製造するメーカであり、シス
テムの利用者は協力会社を含むと約1,000人規模と
なっている。システムは、生産管理機能を有するホスト
計算機と、端末として300台のPCから構成されてい
る。PCには、端末エミュレータの他に表計算ソフトを
はじめとするOAソフトがインストールされている。
 ヘルプデスクについては、当初PCの環境設定やOA
ソフトの使用方法に対する問い合わせに限られており、
ごく一般的な内容であった。しかし昨年、ホスト計算機
とは別に、情報系サーバを導入した事に伴い、データの
利用方法にまでその範囲は拡大した。また、その内容は、
500を超えるテーブルの関連付けや、ホスト計算機機
能との関連など、かなり高度なものになっている。

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1.2.A社システム利用者の特徴
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 元々A社では、品質・工程解析のために表計算やDB
ソフトを積極的に利用していた。これに加え、情報系サ
ーバの導入以降、利用者のレベルは各段に上がり、A社
内のほぼ全ての部署においてEUCを構築可能なレベル
の人材が揃っていた。勿論、年配の社員を中心とする、
PCの操作に不慣れなユーザも一部には存在している。

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1.3.私の立場
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 A社では、ホスト計算機を含め、システムに関する全
ての機能を、システムインテグレータであるN社にアウ
トソーシングしている。私は、A社のヘルプデスク強化
の要請に伴い、5名のヘルプデスクを統括するリーダと
してA社に常駐する事となった。
 リーダである私の責務は、ヘルプデスクのレベルを高
め、ユーザの期待に応える事にあった。

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 (設問イ)
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2.ヘルプデスク運営における課題
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2.1.業務に密着したサポートの必要性
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 ヘルプデスクには、一般的なOAソフト等に関する使
用方法に加え、EUC構築支援が期待されるようになっ
ていた。この期待に応えるためには、生産管理システム
は当然、ユーザ業務に関しても深い知識が必要となる。
しかしながら、生産管理システムを維持管理するSEメ
ンバーでさえ、機能別の縦割りになっており、広く全般
的に業務を理解する者は少ない。当然、ヘルプデスクに
もそのような人材は居るはずも無く、ユーザ業務に踏み
込んでヘルプデスクを行える者は、5名中1名という状
況であった。

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2.2.ヘルプデスク業務効率化の必要性
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 私はヘルプデスクのレベルアップに取りかかる前に、
現状ヘルプデスク業務の分析を行った。
 紙ベースで残された、過去の対応履歴を確認すると、
同じような問い合わせが繰返し行われているにも関わら
ず、異なるヘルプデスクが担当した場合、再度調査を実
施し、回答を行っている事が判った。
 また、A社のユーザに直接ヒヤリングを行うと、次の
問題が提起された。
「難易度の高い問い合わせについては、クロージングま
 でに数日間を要する場合がある。しかし、進捗状況が
 判らないためとても不安を感じる。」
 特にヘルプデスクで解決できずに、メーカへの問い合
わせを行う場合に、この問題が研著に発生していた。
 いずれの課題も、その原因は、ヘルプデスク業務その
ものが、紙ベースとハンドで行われている事に集約され
ると判断した。

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3.ヘルプデスク運営における工夫
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3.1.勉強会の実施による業務知識の取得
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 私は、ヘルプデスクのレベルを上げるために、ユーザ
業務・生産管理システムの勉強会を企画した。これにつ
いては、システムの維持管理を行うSEを講師としたが、
企画した当初は一時的に負荷が上がる事から快良くは引
き受けては貰えなかった。私は維持管理のリーダに以下
の内容を説明し、理解を得るに至った。
「ヘルプデスクのレベルアップは、生産管理システムへ
 の問い合わせに関して、ヘルプデスクで一時的な引き
 受け・切り分けを可能にするものであり、長期的に見
 て必ず維持管理の負荷軽減に繋がる。」
 勉強会にあたっては、生産管理システムの既存ドキュ
メントより、業務フロー・機能階層図等を用いて実施し
た。
 尚、この時に使用したドキュメントは、ユーザが
EUCを構築する上で有益なものであると判断し、A社
内イントラネット上に公開する事とした。

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3.2.パッケージの導入による業務の効率化
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 私は、ヘルプデスク業務を効率化するために、パッケ
ージの導入を行った。その目的は次の通りである。

 a.過去の問い合わせ、対応の履歴をヘルプデスクおよ
  び、ユーザで共用する事により、問い合わせの負荷
  を下げる。

 b.電話での受け付けを基本的に廃止し、システムへの
  エントリ方式とする事で、受付の際に必要な情報を
  定型化する。これにより、対応の迅速化を図る。

 c.受付・調査・回答などのステータスを管理・公開す
  る事により、ユーザに安心感を与える。

 この、ヘルプデスクをサポートし、ユーザとの情報共
有を図るパッケージとしては、WEBで動作するものを
選定し、先のシステムに関するドキュメントと共に提供
を行っている。

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3.3.SLAの導入による業務内容の規定
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 私は、上記の施策を推進する一方で、以下の理由によ
りSLAの規定が必要であると考えた。

 a.ヘルプデスク業務の効率化の結果、従来とは異なる
  サービスの内容を提供する事となる。これにより、
  ユーザの満足度は変わるはずであり、定量評価でき
  る仕組みが必要である。

 b.ヘルプデスク業務の対象範囲やレベルが際限無く広
  がる事を防ぐ必要がある。

 私はA社と協議の上、主として以下の内容を定めた。

 a.ヘルプデスク業務は、事務職の営業日・営業時間に
  限定する。

 b.午前中の問い合わせであれば、少なくとも第一報は
  午後に返答する。

 c.従来のPCの環境設定・OAソフトウェアに加え、
  情報系サーバを対象範囲とする。EUCに関しては、
  構築支援のみを対象とし、構築後のシステムについ
  ては対象外とする。

 d.難易度により一概には決定できないが、1日に30
  件程度の問い合わせに対応する事を目安とする。

 e.ヘルプデスク業務のサービスレベルを評価するアン
  ケートを、半期に1回実施する。

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(設問ウ)
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4.対応策の評価と今後の改善点
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4.1.対応策の評価
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 先に述べた施策により、ヘルプデスク業務の高度化を
達成する事が出来た。具体的には、個々人のレベル差は
あるものの、5名全員がEUC構築支援業務を担当でき
る迄に至っている。
 一方のヘルプデスク業務の効率化については、当初は
必ずしも高い評価では無かった。具体的には、アンケー
トを行った結果、効率化の前後で「満足・ほぼ満足」と
答えた割合が、70%から50%に激減した。それは、
これまで電話での対応が基本であったところを、WEB
に切り替えた事によるものであり、一部のPCの操作に
慣れないユーザには不便と受け止められてしまった事に
あった。しかしながら、ヘルプデスクのシステムを利用
する事によりFAQを自ら検索し、自らの手で問題を解
決が可能である事を実体験させる事により、次第に満足
度は向上し、1年後には先の数字は85%にまで向上し
ている。

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4.2.今後の改善点
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 A社とN社のアウトソーシング契約は、更改を迎え、
更に5年間の契約を受ける事となった。これは、今後さ
らにヘルプデスクへの期待が大きくなる事を意味してい
る。
 私は、ヘルプデスクの更なる高度化のため、維持管理
を行うグループのジュニアSEとのローテーションを図
りたいと考えている。これにより、広く浅く業務を知る
ヘルプデスクと、限られた業務とシステムを深く知る
SEが、上手く協調する事が出来ると考える。





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