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1.業務と情報システムの概要
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 当社は大手酒類メーカーの子会社で、特定の顧客への
小売等を業とする従業員数約40名の会社である。私は
総務部次長として情報システムの企画・運営にあたると
共に、販売部門の管理も兼任している。販売部門では親
会社から提示された商品と販売先リストに従って、グル
ープ会社や取引先の社員等に販売するが、受注から代金
回収までの伝票処理が主な業務となっている。
 不況のため親会社の資金繰りが厳しく、過剰在庫の処
分のための販売依頼が増加している。販売品目・顧客数
ともに急増し、業務量の増加が問題となっている。
 当社には以前からパッケージソフトの会計管理システ
ムが導入されており、売上伝票の入力から請求書等の発
行、更には予算実績管理迄が行えるようになっている。
このシステムはデータの格納等を行うサーバに、入出力
を行う2台のクライアントがLANで接続されたC/S
システムであった。しかし、これは約8年前に導入され
たCUI環境で、操作性や拡張性が不充分なため、私は
かねてより更新の必要性を感じていた。凝れ以外にスタ
ンドアロンのパソコンが十数台あるが、ワープロや表計
算にしか利用されておらず、会計システムとのデータの
やり取りは行われていなかった。また、親会社とのデー
タの受け渡しもフロッピーディスクを送ったり、出力帳
票を見て再入力する等、効率の悪い作業をしていた。繁
忙期には連日数百件の売上データを処理するため、入力
担当者の残業が多いことが問題になっていた。
 業務全般を見直し、効率良くシステム化するためには
会計システムの更新が必要であったが、年商の1%近い
費用が掛かるため経営陣は渋っていた。私はシステム更
新が業務の合理化からコストダウンにつながることと、
西暦二千年問題への対策も万全になることを説明し、昨
年夏にシステム更新が決裁された。
(設問ア 800字ライン)
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2.システムの更新と業務改善
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2.1.システム更新前の問題業務の洗い出し
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 8年前に会計システムを導入した時からずっと当社を
担当しているベンダのT氏にシステム更新の意向を伝え
ると、「あ、Y2Kですね。」と言われた。私は単に西
暦二千年問題のためだけではなく、業務を効率化するこ
とが主目的である旨を伝えたが、新システムが必要とす
る機能を早急に取りまとめる必要性を痛感した。そこで
販売部門の係長の協力を得て、以下のように非効率的な、
あるいは問題を生ずる恐れのある業務や手順をピックア
ップした。
1)顧客マスターのメンテナンス
 登録済の顧客からの受注は顧客コードが分からなくて
も氏名や電話番号で検索して入力できるが、新規の顧客
はマスターに登録しなければならない。顧客がグループ
会社の社員の場合、社員コードを顧客コードとし、所属
部署等を入力するが、これは事前に親会社のシステムか
ら出力された帳票を見て入力してある。ところが異動が
多いためメンテナンスに時間が掛かり、中途採用者の登
録漏れ等の問題も発生していた。
 それ以外の顧客の場合、新規にコードを与え、住所、
氏名、電話番号その他のデータを入力することになるが、
1件の登録に数分を要していた。
2)発注、売上管理、受注伝票の重複作業
 販売担当者は売上を管理するために表計算ソフトを用
いて顧客の氏名、商品名、数量等を入力している。その
集計結果をもとに手書きで発注伝票を作成し、親会社の
物流センターへファックスしている。表計算のデータは
親会社のセンターはもちろん、当社の会計システムでも
利用されることはなく、それぞれの入力担当者が販売担
当者の手書きの伝票を見て入力していた。また、後日親
会社から送られる請求書と当社で保管している発注伝票
の突合せは、一切行われていなかった。
3)グループ会社社員の給与天引データの非効率な扱い
 グループ会社の社員からの受注は個別に請求せず、親
会社の人事部が一括して給与天引することになっている。
毎月表計算ソフトに社員コードと金額の一覧を入力して
フロッピーディスクを送っていたが、これは売上伝票の
一覧を出力した帳票を見て、手作業で集計して作成して
いた。そして、親会社から入金があると、もう一度1人
ずつ帳票で確認しながら消し込みを行っていた。
4)システムのセキュリティ管理
 サーバのデータベースのバックアップ作業は毎週末に
入力担当者が行うことになっていたが、時期テープを用
いた作業が煩雑で時間が掛かるため、実際には月に2回
程度しか行われていなかった。幸いにもシステムに重大
な障害が生じる事故は今まで起きていなかったので、特
に問題にはされていなかったのである。
 また、端末からのアクセスにパスワードなどは必要な
く、サーバが稼動している限りは誰でもデータの閲覧お
よび書き換えができるようになっていた。しかし、部外
者の出入りは殆どなく、実際にデータの漏洩や改ざんの
問題は起きていなかった。
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2.2.業務の見直しと新システムの特徴
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 以上の問題点を踏まえ、私と係長は業務の見直しを行
い、それに必要なシステムの用件を取りまとめてベンダ
のT氏に伝えた。新システムは従来使用していたパッケ
ージソフトの最新版をベースに、必要な機能をベンダが
開発する方式で進めた。サーバ、クライアントともに高
速・大容量の新型機種に更新し、スタンドアロンのパソ
コンも3台の旧型機を除いてLANに接続した。システ
ムのレビューから検収までは、私と係長の他に、ベテラ
ンの入力担当者も加わった。新システムは11月初めに
稼動し、業務は以下のように改善された。
1)EUCとのデータ共通化
 販売担当者が受注状況を集計する際使用する表計算ソ
フトの書式を統一し、そのデータを会計システムへ送れ
るようにした。新システムでは顧客名を検索し、登録済
顧客の住所等のデータを書き込んだファイルを返すよう
になっている。入力担当者はこれと受注表を突合せ、住
所等の変更や新規顧客のデータを表計算ソフトで入力す
る。これを再び新システムに送ると、顧客マスターの更
新と受注伝票の入力が終了する。また、このデータは同
時に販売担当者のパソコンにも返され、そのまま受注デ
ータとしてEUCに利用されている。
2)親会社のシステムとの連携
 従来親会社のシステムのデータを当社で利用すること
は殆ど認められていなかった。しかし、当社社長は親会
社の役員でもあり、グループウェアの端末を支給されて
いて、基幹システムのデータにある程度アクセスできる
ようになっていた。私は社長とともに親会社の情報担当
役員に交渉して、以下のファイルを社長の端末へ送信し
てもらうようにした。
 a)最新の社員コード表(人事異動発令時)
 b)当社への請求明細票(毎月)
 a)を用いて顧客マスターのメンテナンスが自動的にで
きる上に、新システムは毎月の給与天引データの作成や
入金時の消し込みを自動的に行う機能も備えている。
 b)のデータを新システムに送ると、発注伝票と突き合
わせ、過不足があれば一覧が出力される。これによって
イレギュラーな受発注の伝票を計上し忘れた場合にも確
実に発見し、データを修正できるようになった。
3)セキュリティ管理
 サーバのバックアップには作業が容易なMOを用い、
5枚のMOで月曜から金曜まで毎夕終業時にバックアッ
プを取ることにした。これにより、常に5世代のバック
アップを持つことになった。
 また、入力および販売の各担当者全員にIDとパスワ
ードを与え、販売担当者はデータの閲覧および出力のみ
ができるようにすることで、データの漏洩や損壊を防ぐ
ことにした。
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3.新システムの評価と今後の課題
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 以上のような改善の結果、販売担当者および入力担当
者の過負荷が緩和され、繁忙期の残業も殆ど必要なくな
った。当社は今春から新しい事業を展開し、各担当者に
新しい業務が加わったが、現在まで増員の必要はなかっ
た。本来なら1〜2名の増員を予定していたことを考え
ると、新システムへの800万円の投資は十分に採算が
取れていると、経営陣から評価されている。
 社内のEUCと新システムの連携やセキュリティ管理
は現在のところ十分であると考えられるが、親会社のシ
ステムとの連携はまだ不十分である。以下の点が今後の
課題であるが、子会社との接続に消極的な情報システム
部と粘り強く交渉し、少しずつ改善して行きたい。
1)発注のオンライン化
 当初、発注伝票を当社で入力するだけで自動的に親会
社に発注できるシステムを考えたが、公衆回線を通して
基幹システムにデータを送ることには問題があり断念し
た。現在でも発注書をファックスしている状態である。
2)社内LANと親会社グループウェアの接続
 当初社長が支給されているグループウェア端末を社内
LANに組み込むことを考えたが、親会社に拒否された。
親会社とのやり取りのデータはフロッピーディスクを持
って社長のデスクへ行くことになる。社内LANに接続
すればこのようなことはなくなるし、また1)の発注のオ
ンライン化の問題も専用線で実現できる可能性がある。
技術的な問題を十分に検討した上で、改めて交渉する予
定である。
(設問イ、ウ合計 3200字ライン)





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