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 A社システム移行におけるリハーサルの計画と評価

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(設問ア)
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1.システムの概要と私の立場
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1.1.移行対象システムの概要
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 A社は東日本を中心に100店舗を展開するスーパー
である。A社規模のスーパーにおいては、発注業務を電
話・FAX等で行う事は現実的では無く、システムの停
止が営業に与える影響は大きい。従って信頼性の観点か
ら、システムはホスト計算機上に構築されていた。しか
し一方で、PCサーバの信頼性がここ数年で格段に向上
した事、システム費用削減の経営方針を受けA社システ
ム部では、ホスト計算機の更新タイミングでダウンサイ
ジングする事を決定した。

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1.2.移行の概要と特徴
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 昨今のシステム統合・移行の失敗により社会的信用を
失墜した事例を受け、A社システム部においては最低1
ヶ月間の並行運用期間を設け、かつこの期間中に4回の
切り替えリハーサルを行う事とした。尚、リハーサルの
ポイントとしては以下を挙げる事ができる。

 ・現在ホストで稼働中のデータを、確実に新システム
  に移行する事。
 ・約1,000台のPCをリプレースする。

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1.3.私の立場
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 私の勤務するN社は、A社ダウンサイジングをSI契
約で受注しており、私は運用設計・移行のチームリーダ
として当プロジェクトに参画した。リーダである私の責
務は、A社および設計チームと連携し、円滑な移行を実
行する事にあった。

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(設問イ)
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2.移行体制と役割
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 移行作業に限らずシステム開発の全ての工程において、
体制と作業分担を明確にしておく事は重要である。これ
らが不明確なままプロジェクトが進行した場合、重大な
作業に漏れが発生したり、場合によっては責任の押し付
け合いになる。従って私は、今回の移行について基本計
画時点で、以下の考え方をN社設計部門・A社ユーザ部
門と協議し決定した。

 A社は、データ移行に必要な条件提示を行い、正確性
の検証をN社設計部門と共同で実施する。またPCのリ
プレースにあたっては、各店舗の現状の配置図・配線図
等を用意し、実際の作業にあたっては、店長をはじめ関
係各所との調整作業を実施する。

 N社設計部門は、データ移行に必要なプログラム開発
を行い正確性の検証をA社と共同で実施する。PCのリ
プレースにあたっては、詳細な手順書を運用部門に提示
する。

 N社運用部門は、データ移行作業を実施しA社の提示
する時間制約等に収まる事を検証する。また必要に応じ、
N社設計部門に対して改善の依頼を要求する。PCのリ
プレースにあたっては、A社100店舗をエリア分割し、
各拠点で迅速に作業可能なベンダーを選定し、共同でリ
プレース作業を実施する。

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3.検証対象とその評価基準
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 前述の通り、今回の移行作業のポイントは、データ移
行・PCリプレースを夜間の内に完了させる事にある。
これは、システム切り替えのために日中の営業に支障を
きたす事があってはならないというA社からの大前提と
して要求されたものである。
 一方、4回のリハーサルを行う機会をA社に設けて頂
いたが、リハーサルの実施にあたっては、リハーサルの
結果を評価する明確な基準を用意し、関係者の共通認識
をなっていなければならない。従って私は、以下の評価
基準をN社設計部門・A社ユーザ部門と協議し決定した。

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3.1.データ移行の評価基準
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 旧システムでの一日の締め作業が完了してから、新シ
ステムでの営業を開始するまでの6時間内に切り替え作
業を完了しなければならない。但し、切り替えの作業ミ
スや失敗時に旧システムで営業を開始するリスクを考慮
すると、実際の切り替え作業は3時間で完了させなけれ
ばならない。

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3.2.PCリプレースの評価基準
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 100店舗を10のエリアに分割すると、各ベンダー
がリプレースを実施する台数は、平均的に50台となる。
時間的制約は、各店舗での業務終了から翌日の開始まで
の約8時間である。つまり、1台あたりの作業時間は
48分となる。但し、店舗間の移動時間や実行時の問題
が発生する事を考慮すると、1台あたり30分で完了さ
せなければならない。

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4.テスト実施後、発見された問題点とその対策
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4.1.データ移行の問題
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 まず1回目のリハーサルにおいては、5時間を経過し
ても計画されたジョブの半分を終了せず、評価基準の3
時間には程遠い状況であった。勿論、N社設計部門も立
会いの上で作業を実施しており、後日チューニング作業
を実施するためにCPUやディスクの使用率等パフォー
マンスデータを収集して作業は終わった。
 私は運用部門のリーダとして、設計部門の対策会議に
出席し、原因分析・解決策の検討状況をフォローした。
その結果、移行プログラムの問題は、新システムへのデ
ータ移行作業を、開発工数を抑えるため、SQLを用い
てDBからDBで実施点にある事が判った。具体的な対
策としては、SQLやDBを使用せず、移行プログラム
はC言語で書き直し、最終的にDBに書き出すまではフ
ァイルを使用するというものである。

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4.2.PCリプレースの問題
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 移行リハーサルにおいては、実際の作業時間に収まる
か、収まらない場合どの作業に時間がかかっているかを
分析するために、作業時間の実績を記録する事を各ベン
ダーに義務付けた。1回目のリハーサル結果では、作業
を実施するベンダや個人差はあるものの、概ね1台当た
り50分を要する状況であった。
 実績記録からその原因を分析すると、N社設計部門の
作成した手順では、OSは事前にインストール・設定す
るものの、クライアントプログラムについては、移行時
に最新版をインストールし動作確認を実施するという手
順にある事が判った。
 私は、当日の作業を極力少なくするために、新システ
ムのプログラムテスト・改良を切り替えの3日前には凍
結する事を、A社とN社設計部門に提案した。これが可
能であれば、インストール作業は移行前に完了させる事
が可能であり、当日の作業は設置と動作確認のみに限定
され、30分を達成できる見込みであった。

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(設問ウ)
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4.システム移行計画の評価
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 前述の対策を採った結果、3回目のリハーサルで作業
時間は評価基準をクリアする事となり、最後の4回目は
リハーサルを中止するに至った。勿論、本番の移行作業
時にも何ら問題は発生しなかった。これは、入念なリハ
ーサルと適切な対策結果であり、今回の移行計画が適切
なものであったと評価している。

 今回はA社の判断により、3回のリハーサルを行い、
かつ回数を重ねつつチューニングを行う事ができた。し
かし、一度のリハーサルだけ、もしくはリハーサルを行
う事無しに本番移行を迎えざるを得ないプロジェクトも
多く存在する。このような場合には、机上での確実な検
証と可能な限りの開発環境での試験が重要であると考え
る。





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