Click here to visit our sponsor



----------------------------------------------------------------------

(情報システムの開発優先順位の決定について)

----------------------------------------------------------------------


----------------------------------------------------------------------
(設問ア)
----------------------------------------------------------------------
1.情報戦略、経営戦略の概要
----------------------------------------------------------------------
1−1.当社の概要
----
 当社は資本金40億円、従業員800名、年商約60
0億円の株式会社であり、総合アパレルの企画・製造・
卸売りを事業としている。製品の企画を自社で行い、生
産を全て協力工場に依頼している。出来上がった製品を
全国6箇所の物流センターに入庫し、一般小売店、百貨
店、量販店など、多様なチャネルへの卸販売を行ってい
る。

 デフレ傾向が強くなる中、市場環境はさらに悪化し、
消費は一段と冷え込んでおり、売上高は当初中期経営計
画で掲げた数値を下回るなど厳しい状況が続いている。
----
1−2.当社の経営戦略と経営課題
----
 低価格化が続く傾向の中、徹底したローコスト戦略を
取り、確実に収益を出せる体質作りが必要である。中心
となるローコスト戦略は大きく3つに区分している。1
つは増販による売上高の確保として、組織の再編で製販
管理を一元化し、スピードある業務運営で、納品率改善
を図る。1つは収益性の確保として、海外生産比率の拡
大、海外工場の見直しを行いコストの引き下げを行うと
共に、ターゲットを明確にした付加価値商品を強化し、
採算性の悪い商品からの撤退を行う。もう1つは経費削
減として人的生産性の向上と徹底的なコストカット経営
を行う。

 当社の主な経営課題はローコストオペレーションの早
期実施と日々の企業活動で発生する大量データの収集分
析の 2点があげられる。前者については、製・販・物が
一体となって業務改革を行い、トータル的に効率化する
ことが必要である。このためには、後者の販売実績から
商品・顧客情報の多面的な収集・分析を行い、顧客ニー
ズをつかむことが必須となる。経営企画室課長である私
は、情報戦略と情報システム全体計画の策定をすること
になり、以下の作業を行った。

----------------------------------------------------------------------
(設問イ)
----------------------------------------------------------------------
2.開発する個々の情報システム優先順位の決定
----------------------------------------------------------------------
2−1.当社の情報システムの調査分析
----
 現状分析作業を行った結果、当社の情報システムはコ
ンピューター導入当初から汎用機でシステムの構築を行
っており、現在ではほとんどの業務処理が汎用機のアプ
リケーションとしてシステム化され、全社で利用されて
いる。

 長年汎用機でシステム開発をしてきており、新技術を
使用した情報系システムがあまりない。汎用機の端末と
してパソコンが設置されており、そのパソコンは表計算
などにも利用されている。実績データを手で入力し管理
資料作成を行っているので、利用部門からは汎用機のデ
ータをパソコンにとりこみ、自由にデータを利用したい
要求が多くなってきている。

 汎用機で作成している実績データは、販売管理、仕入
れ管理、財務管理などデータベースを用いながらも業務
単位で開発し、運用している。そのために、個々の要求
に対するその都度の個別対応が開発の面でも運用の面で
も不整合を起こし、情報システムの効果的な活用を妨げ
ると同時に無駄な費用の発生を招いている。個々のシス
テムがばらばらに開発される結果、全体でみた場合に、
いろいろなシステム間に重複した帳票出力データの不正
合などを発生させている。

----
2−2.当社の情報戦略
----
 調査分析の結果、私は当社の情報戦略を次のように立
案した。オープン化、ダウンサイジングの流れは今後も
ますます進む。この認識のもと、情報システム基盤を従
来の汎用機依存型から、パソコンを活用した複合システ
ムに置き換え、ユーザーがより自由にデータを利用でき
る環境を作成する。業務処理系システムと情報支援系シ
ステムの二つに分け、業務処理系のみ汎用機で行い、汎
用機の実績データ処理については、 JOB作業、プログラ
ム、情報システム部のメンテナンス人員を全て廃止し、
情報系システムに移行する。新たに、情報系サーバーを
設置し、これを業務処理系システムと同一の LAN上に接
続する。これによって現在 LANに接続されている全ての
パソコンから、情報支援系サーバーを参照できるように
する。

----
2−3.情報サブシステムの定義
----
 私は、戦略を実地するためには現状情報システムだけ
では対応が不可能と判断し、ITベンダーを含めたプロジ
ェクト体制の提案を当社に行った。経営会議で討議の後、
経営企画部長を中心として全社プロジェクトを組織し、
情報系システムを構築する事になった。プロジェクト作
業として、情報戦略策定後の業務モデルの定義から始ま
り、情報システム体型モデルの定義を行い、情報サブシ
ステムの定義を完了させた。完了された新しい情報シス
テムの機能概要は次の通りである。

・得意先のニーズに対応した販売提案ができるように、
 販売実績を分析し、スムーズな商品発注ができる営業
 支援システム

・事業部が販売情報及び在庫管理を使用して、売れ筋や
 死に筋を素早く把握し、協力工場に商品を発注する発
 注管理システム

・本部スタッフの経営会議資料作成や、経営者の意思決
 定をサポートするデータ支援システム

----
2−4.工夫した優先順位の決定
----
 次に私は情報サブシステム開発の優先順序づけを行う
作業に入った。開発順序決定にあたっては、貢献効果に
基づく評価基準を定義した上で優先順位を決定すること
にした。開発優先順位を決定する前提となる、貢献要件
は次の通りである。

・売上高確保 ・収益性確保 ・コストの低減 
・業務のスピード化 ・顧客サービスの向上 

 評価項目毎に1〜5点の評価点をつけた。さらに、こ
れらの評価基準にウエイトを持たせ、評価点とウエイト
の総合点によって総合評価を行った。プロジェクトメン
バーの評価を集計した結果、開発優先順位は営業支援シ
ステム、事業部支援システム、データ支援システムとな
った。結果の優先順位を経営トップ層に報告し、評価承
認を得た。

----------------------------------------------------------------------
(設問ウ)
----------------------------------------------------------------------
3.経営戦略が優先順位にあたえる影響
----------------------------------------------------------------------
3−1.経営環境の変化と経営戦略
----
 競合他社に打ち勝ち利益を出すためには、経営環境の
変化に合わせて経営戦略を変化することが必要である。
近年の経営環境は,消費経済の成熟化,経済のグローバ
ル化,IT革命など,経営に与える影響が大きい要因が
激しく変化している。小売店の不振や価格破壊による取
引価格の低下など、現在の経営環境をもとに、ローコス
ト戦略を経営戦略としているが、今後考えられる経営環
境変化は、得意先からの小口出荷、量販店の仕入れ体制
の変化、新業態の販売、規制緩和などがあり、当社とし
て、物流体制の見直し、販売体制の変化、新規販路の開
拓、規制緩和に対応したビジネスプロセスの変化といっ
た具合に、経営戦略を変更する可能性が十分にある。

----
3−2.経営戦略の変化と優先順位の変更
----
 情報化が進む中、卸売業の新しい展開にとってコンピ
ューターによる情報システムの構築は不可欠である。作
業効率やサービスの質、生産性を高め、部門間の統合を
進めて新たな経営戦略を可能にするのも、この情報シス
テムをいかに構築し、活用するかにかかっている。した
がって経営環境が変化すれば、経営戦略を変化させ、開
発途中であっても優先順位を変化させる、あるいは開発
計画そのものを見直す必要がある。それを行わない場合、
経営資源を浪費する結果になり、競合他社との競争関係
において一歩水をあけられる要因となる。





[ 戻る ]