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 A社DWHにおける、A社・SIベンダ間の保守業務について
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(設問ア)
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1.A社DWHの構築
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1.1.開発の背景
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 A社は東日本を中心に100店舗を展開する中堅クラ
スのスーパーである。A社では業務の効率化、単品管理
の強化を目的として、データウェアハウス(以下DWH)
の構築を企画し、現在は運用フェーズに入っている。
 SIベンダであるE社に勤務する私は、A社DWH構
築について、プロジェクトマネージャとして参画してお
り、立場的には被監査部門に近い。本論文においてはA
社DWHの構築をテーマとし、A社との間に発生する保
守業務について、システム監査基準に照らし合わせた結
果、システム監査者の立場としての意見を述べるもので
ある。
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1.2.DWHに対する保守の必要性
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 DWHとは、発注・仕入・販売を担う基幹業務システ
ムに付帯し、過去25ヶ月分のデータ提供を行うもので
ある。DWHの理想としては、全て正規化されたデータ
である事が望ましい。しかし、高度なレスポンス保証・
利用者の立場に立った視点でのデータ提供など、様々な
理由から非正規化されたデータも持たざるを得ない。
 当然、DWHに対しては、業務の変化に伴う新しい
データ分析視点の発生、SCMなどA社を取り巻く業界
の構造改革に伴い、日常的に保守作業が発生する。
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1.3.保守を行う上で重視すべき点
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 保守作業の結果提供されるデータが正確である事。D
WHにおいて、これは大前提である。加えて、以下事項
を特に重視して保守は実施されなければならない。
 a.費用対効果が充分に見込まれる事。
 b.関連システムと連携をとった作業が実施される事。
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 (設問イ)
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2.保守作業を円滑に行う為に各工程で実施すべき事
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2.1.企画段階において
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 保守作業を円滑に行う為に、企画段階において考慮す
べき事項は、「体制の明確化」であると考える。A社D
WHにおいては、保守・運用体制を以下の通り定めた。

(1) 利用者
 a.DWHを利用し、データの分析・本来業務への
  フィードバックを行う。
 b.DWHの延長に、利用者・利用部門独自のEUCシ
  ステムの構築を行う。
 c.情報システムに対し、新たなデータ項目の追加、非
  正規化テーブルの導入等、保守作業を要請する。
 d.情報システムおよびA社が実施した保守作業に対す
  る承認を行う。

(2)A社情報システム
 a.DWHを安定的に運用するために、その利用状況・
  性能などを定期的にモニタリングする。特にEUC
  により利用者が独自に構築したシステムも、利用状
  況という視点ではその管理対象としなければならな
  い。
 b.利用者からの保守要求に対し、費用対効果を検討し
  た後に、SIベンダに発注を行う。
 c.SIベンダが実施した保守作業に対し、承認を行う。

(3)SIベンダ(E社)
 a.A社情報システムからの要求に伴い、保守作業に対
  する費用見積、および発注後の保守作業を実施する。
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2.2.開発段階において
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 保守作業を円滑に行う為に、開発段階において考慮す
べき事項は以下の2点にあると考え、開発を行った。

(1)ドキュメントの標準化
 A社システム部門とSIベンダの共通認識に基づき、
ドキュメントの様式・記述内容のレベルを合わせた。特
に、以下2点については正確かつ、漏れなく記述する事
を確約した。
 a.DWHの各項目について、POS・EOSをはじめ
  とする基幹システムとの関連。
 b.正規化されたデータから、非正規化データを導出す
  るためのデータフロー。

(2)データ項目の標準化
 利用者が誤ったデータ利用を行わない事、保守要求を
齟齬が無いものにする事を目的に「データ項目名称」の
標準化も必須であると考えた。
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2.2.保守段階において
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 保守作業を円滑に行う為に、保守段階において考慮す
べき事項は以下の3点がある。

(1)関連するシステムとの整合性確保
 先に述べた通り、DWHについては、その元となる基
幹系システム、利用者自身により構築されたEUCシス
テムと密な関係がある。当然、これらと整合性を保った
保守は必須であり、A社システム部門により関係先との
調整が行わなければならない。
 特にEUCシスステムにおいては、利用者が本来業務
の延長に構築したものであり、担当者はおろかドキュメ
ントさえも不在である場合もあり、A社側において保守
の負荷見積は慎重に行わなければならない。

(2)ドキュメントの更新
 保守が完了したDWHについては、関連するドキュメ
ントも合わせて修正されなければならない。従って、S
Iベンダは修正ドキュメントを納品する義務を負うと共
に、A社システム部門もその内容を検証する義務を負う
事になる。

(3)保守の管理
 利用者から提出された保守については、「実施希望時
期」「システム部門での検討状況」「実施予定時期」な
ど、多くの管理情報とステータスを持つ。
 保守作業を円滑に進めるためには、保守の1件単位に
「保守NO」等の一元管理可能なキーが付与され、台帳
もしくはシステムにより管理されておくべきである。
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(設問ウ)
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3.保守作業の監査手続き
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 監査については、保守に関わるドキュメントだけでな
く、関連するシステム設計ドキュメントをA社システム
部門より入手し、以下事項を確認する。
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3.1.保守に関わるドキュメントについて
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 DWH保守における役割分担については、2.1.に述べ
た通りであるが、これらの手続きがドキュメントに基づ
いてかつ、関係個所間において承認の手続きを踏みつつ
実行されている事を確認する。

(1)保守の目的について
 保守依頼は、その目的・効果とともに、利用者がA社
システム部門に提出するものである。A社システム部門
では費用対効果を検討した上で、その結果を利用者に回
答している事を確認する。
 特に、システム部門においては、承認・却下いずれの
場合においても、保守依頼に対する理解内容・検討結果
について利用者の承認を得ていなければならない。
 A社システム部門は、保守作業依頼をSIベンダに提
出する。SIベンダでは、その理解内容についてA社シ
ステム部門の承認を得ている事を確認する。

(2)保守スケジュールについて
 DWHについては、SIベンダが保守作業を実施する
が、基幹システム・EUC等関連システムについて、全
体計画としての保守計画が記述され、かつ関係個所で承
認が得られている事を確認する。
 また、保守の規模が大きく関連システムの保守に伴い
保守作業が長期化する場合には、スケジュールの計画対
実績および、途中段階での品質評価など、本番開発並の
マネージメントが実施されている事を確認する。

(3)保守実施報告について
 SIベンダが実施した保守について、目的を達成して
いる事を、A社情報システムは確認・承認しなければな
らない。
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3.2.システム変更に関わるドキュメントについて
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 SIベンダは、実施した保守作業に関わる設計ドキュ
メントの改訂版を提出し、A社システム部門の承認を受
けている事を確認する。
 当然、保守依頼とシステム設計ドキュメントは、保守
の管理NOと改定履歴よる関連付けが可能でなければな
らない。





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