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 (システムテストの計画立案について)

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(設問ア)
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1−1.私が携わったシステムの概要
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 A社は信販系大手のカード会社である。大型機上で稼
動する基幹系システムを用いて、中心事業であるカード
業務を行っている。また、基幹系システムと回線に接続
されたフォールトトレラントサーバがあり、与信システ
ムが稼動している。そして、会員がA社のカードを利用
する場合は、全て与信システムにより与信(審査)する
ようになっている。また、それを補完する形でコールセ
ンターを設けており、手動での与信や、会員からの利用
状況についての問い合わせへの対応といった自動与信だ
けでは不可能な、きめ細かいサービスを行っている。
 今回、コールセンターの管理者から、与信機能に対し
て以下の改善要望があった。

・会員からの利用可能残額についての問い合わせに対し、
 回答すべき金額を画面に出力するようにして欲しい。

・同一会員の保有する複数カードについての問い合わせ
 に対応できるよう、関連するカードの利用状況も名寄
 せして画面に出力して欲しい。

 私はシステムベンダーB社に所属するアプリケーショ
ンエンジニアとして、要件定義からこの開発に携わった。

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1−2.システムテストの計画
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 要件定義において、システム方式設計が終了した後、
私はシステムテストの計画に着手した。計画において、
概要は以下の通りとした。

・テスト体制・・・私をリーダーとし、4人のメンバー
 で実施する。ただし、客観性を持たせるため、プログ
 ラミングの担当者とテスト担当者は別々となるように
 する。また、画面の使用方法について、必要に応じて
 A社の担当者からのサポートを得られるようにした。

・テスト項目・・・品質を確保するため、同値分割、限
 界値分析の観点から考えられる全ての項目を確認する。

・テスト環境・・・A社のテスト用環境を使用する。

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(設問イ)
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2−1.システムテスト実施にあたっての制約
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 外部設計、内部設計と開発が進んでゆくにつれ、シス
テムテスト計画に従ってテストを実施するにあたり、以
下の制約事項が存在することが明らかになった。

a.システムテスト計画で定めたテストケースにうち、
 いくつかのケースに対応するテストデータがテスト環
 境に存在しない。本番環境のデータを移行しようとす
 ると、検索に負荷がかかる上、必ずしも該当するデー
 タが見つかる保障は無い。

b.テスト環境と本番環境でサーバー機種の性能が異な
 る。

c.コールセンターには端末が100台あるが、テスト
 環境には10台しか無い。その上、他の開発でも使用
 することがあるため、全ての端末を占有することは不
 可能である。

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2−2.品質を確保するための工夫
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 2−1で明らかになったテスト実施にあたっての制約
を受け、私はそれぞれの問題点について、解決策を考え
ることにした。

 まずaの必要テストデータが用意できない件であるが、
調査の結果、不足しているテストケースは、全て利用可
能枠や利用可能残額といった金額項目を変更することで
得られることがわかった。そこで、初めは元ファイルの
金額部分を変更しようとしたが、他のプログラム資産で
どのように整合性を保っているかすぐにわからない上、
A社の開発ルールでも禁止されていた。そこで、私はA
社の担当者に相談した。その結果、A社の担当者よりコ
ールセンターのオペレータ長を紹介してもらうことがで
きた。オペレータ長は手動与信、与信取り消しといった
画面を利用した利用可能残額の変更に精通しており、こ
れらの機能を活用することで全てのテストケースを消化
できる見込みとなった。

 次にbのハードウェアの性能差異であるが、この件の
詳細を調べるため、私はメンバーと共にA社のシステム
運用管理エンジニアへのヒヤリングを行った。システム
運用管理エンジニアからは両機種のMIPS値、回線速
度、平均ジョブ待ち時間といった、様々な基礎数値に関
する情報を得ることが出来、それらの数値から総合的に
判断してテスト環境は本番環境に比べ、レスポンスタイ
ムが大きくなることが判明した。そのため、システムテ
ストでの性能目標を要件定義時に定めた3秒の1.5倍
である4.5秒とした。

 最後にcの端末台数の不足であるが、私は以前別の開
発において、画面からの通信制御部分の設計を担当した
アプリケーションエンジニアに相談をもちかけた。その
結果、通信制御部分の処理を一時的に変更し、1件のト
ランザクションを100件に増幅させるロジックを組み
込むことにした。なお、この方法でレスポンスタイムを
計測した場合、回線接続時と回線切断時のオーバーヘッ
ドタイムがかかるため、これを100倍する必要がある。
そのため、画面を見てレスポンスタイムを計るのではな
く、ログによりレスポンスタイムのうち、正味のオーバ
ーヘッドタイムを求めることで、性能要件を満足してい
るかどうか確認することにした。

 以上の検討結果は全てシステムテスト計画書の詳細手
順に反映させた。このことにより品質は確保できると考
えた。

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(設問ウ)
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3−1.今回のテスト方法についての私の評価
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 今回行ったシステムテスト計画では、2−2での検討
事項を加味した結果、ほぼ計画通りに進み、納期も遵守
することができた。このことは自身の業績として素直に
評価している。また、今回のテストでは、A社を始めと
する様々な専門家の力を借りることが多く、有識者を巻
き込むことの大切さを改めて認識した。

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3−2.今後改善したい点
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 A社ではテスト環境の管理が特に行われておらず、開
発の都度、関係者が思い思いに使用しているようである。
このため、テストデータの管理や端末の利用、さらには
本番環境との性能差異などについて、開発担当者が効率
良く使用できるよう、運営管理体制を作ることを、今回
のシステムテストの経験をもとに提案してゆきたい。そ
して、そのことにより、A社、B社双方の生産性向上、
品質向上の方法を模索してゆきたい。


                       以上





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