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 (プロジェクト全体に波及する問題の早期発見について)

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(設問ア)
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1.プロジェクトの概要と立上げ時の問題点
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1.1プロジェクト概要
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 今回対象となるプロジェクトは,社内人材育成システ
ム構築であり,目標管理機能,教育履歴表示機能,スキ
ル検索機能,技術経歴管理機能等がある。また,今回の
システム構築を機に,分散しているデータの統合を行い,
全社で利用するデータベースを構築する必要があった。

 今回のシステムは,人材育成ワーキンググループ(以
下人材WG)にて持ち上がった案件であり,そのメンバ
である私がプロジェクトマネージャとして任命された。

 また,社内システムの構築には,その他システムとの
兼ね合いで,言語はJava,また,あるフレームワー
クを使用する必要があった。

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1.2問題点
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 今回のシステムでは,仕事の減少による,だぶついた
人員によってシステムを構築する必要があった。その技
術者は,比較的技術力が低く,今回のプロジェクトにお
いて,育成を期待されていた。

 また,予算が限られていたこともあり,テストケース
として,中国への発注を行うことが決定していた。当社
では,中国への発注は初めてのことであり,手探りで作
業を進めていく必要があった。そこで既に中国への発注
の実績のある親会社の担当者に話を聞いたところ,コミ
ュニケーションを必要以上に密にとる必要があり,やっ
てくれるだろう。という考えは通用しないとの助言を受
けた。

 要員のスキル不足,初めての中国発注等,問題点が山
積みであり,今回のプロジェクトは,同僚からうまく行
くはずが無いと言われていた。


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(設問イ)
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2.想定した問題発生
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2.1問題点発生
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 今回の社内要員は,技術力が低いため,作業の遅れが
起こることは容易に推測された。次に,中国発注に関し
て,仕様の勘違いによる修正作業が増えると考えた。

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2.2発生の兆候の早期発見
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 今回社内要員について,選抜されるメンバ全員を受け
入れる必要は無いことになった。受け入れるメンバを選
択できることになったので,対象者全員の勤務状況につ
いて調査を行った。技術力の低さに関しては何とか対応
が可能と考えたので,技術力よりも,勤務状況に少しで
も問題のある人を除外した。但し,やはり技術力の低さ
は否めないため,教育部門に無理矢理お願いをし,
Java関係の教育及びフレームワークの教育を1週間
缶詰状態で行って頂くことにした。

 開発が開始されてからは,進捗の確認はメールによる
週報にて行った。その際に,表計算ソフトを利用して,
それに本人がデータを入力することにより,進捗状況を
可視化できるシートを作成した。それにより,本人に状
況を認識させることが可能となり,管理者もそれのみを
見れば状況が分かるようにした。進捗に少しでも問題が
あると判断した際は,毎日口頭での報告を義務づけ,当
初の予定に追いつくまで,フォローを行った。

 更に,成果物を必ず添付するように義務づけた。サー
バ内でシステムを構築しているので,管理者はそこを見
に行けば成果物を見ることは可能だが添付するという行
為により,より本人の意識が向上すると考えた。

 次に,中国への発注に関しては,規模及び難易度を考
慮し,目標管理機能について発注を行うことにした。

 仕様の説明には,その機能に関するリーダが中国へ仕
様の説明に行った。帰国後,十分仕様を理解してもらえ
たか若干心配との報告を受けた。そこで,今後更に仕様
の確認を密に行う必要性を感じた。仕様の確認を行うた
めに,質問票を利用した。質問票は,中国サイドで質問
事項を記入し,それに対して回答をメールでやり取りす
るものである。細かいものを含めると,質問票は70件
を超す数になった。当社は残業が禁止されている曜日が
あるため,質問票の発信は,必ず日本時間で5時(中国
では4時)までに届くようにし,対応が遅延しないよう
に徹底した。

 その質問票の画面毎の数を集計し,質問の多い画面に
ついては,十分な理解ができていないと考え,人材WG
メンバで中国からの質問のレベルについて確認し,どの
程度まで仕様に記載すればよいか確認した上,質問の多
かった画面を中心に仕様について,ウォークスルーを行
った。その結果,国内では特に問題無いと考えるが,中
国に発注する上では曖昧と思われる25件を発見し,中
国へ修正した仕様を送付した。

 また,作業が進むと修正が困難になると考え,開発を
開始する前に全ての画面イメージを中国で作成してもら
い,これも人材WGにおいて確認を行った。画面につい
ては,全く日本語を理解していない人が作成しているら
しく,ひらがなの「り」がカタカナの「リ」になってい
たりと,信じられない間違いが多数発見された。それら
については,単に日本語の分かる人にチェックするよう
依頼するだけではなく,全ての誤りを明確にし,中国へ
修正の依頼を行った。

 製造が開始されてからは,完成されたものを毎日メー
ルにて送付してもらうことにした。そのテストに関して
は,当社品質部門の協力を得て,その日の内に実施し,
結果を中国へ連絡した。
 
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(設問ウ)
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3.評価・改善
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3.1評価
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 今回のプロジェクトは,当初うまく行くはずがないと
周囲から言われていたが,期日までに全ての機能が完成
し,最終的なテストもバグの数も標準値を下回る結果と
なった。

 社内人員については,今回のプロジェクトで,十分に
育成ができたと感じている。本人達の意見としても,達
成感を十分に感じてもらえたようである。週報提出の際
に,成果物を添付させたが,それがかなりプレッシャー
になっていたとのことで,それが有効に作用していたと
評価できる。

 中国に関しても受入れテストにおいて,当社の基準を
十分に満たしたものとなった。中国を利用することによ
り,費用を押さえることが可能となった。また,中国の
利用については,賛否両論あったが,今後もやり方次第
で十分に利用できると証明できた。

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3.2改善
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 中国への発注に関して,今回の経験を元に,注意事項
等を記載した冊子を作成中である。今回の仕様のやり取
りの反省を踏まえ,仕様の詳細度はどこまで記述しなけ
ればならないかを中心に記述している。

 これから,中国への発注が増加すると考えられるので,
これを参考にプロジェクトを進めていけば良いと考えて
いる。

                      以 上





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