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(A社製造・販売情報の共有について)

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(設問ア)
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1.A社における製造販売情報の共有化
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1.1.A社の概要
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 A社は電気用部品を製造するメーカであり、国内に
10ヶ所の営業所と3ヶ所の工場を有している。A社で
は見込み生産方式を採用しており、生産見込み量につい
ては営業部門と製造部門にて月に一度の会議で決定して
いる。長引く不況の中、A社の経営状況は年々悪化して
おり、これを打破すべく、A社では次の経営戦略が掲げ
られた。

 「見込み生産の精度を上げる事により、在庫を圧縮し、
  経営状況の改善を図る。」

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1.2.システム化計画の概要
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 A社生産管理システムは、品質保証を主体とするもの
であり、いわゆる生産計画機能は有していなかった。こ
のため、前述の会議で決定される生産見込み量や着工タ
イミングは全てシステム外での管理となっていた。また、
システムの取り扱う注文は確定注文のみであり、その利
用は出荷伝票・納品書の作成等、出荷事務のみに限定さ
れていた。

 A社情報システム部門では、先の経営戦略を実現する
ためには、製造部門と営業部門において、製造・販売に
関わる情報共有が必須であると考え、システム化が計画
された。

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1.3.私の立場
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 システムインテグレータであるN社は、A社の製造販
売情報共有の基本計画を受注し、私は、システムアナリ
ストとして基本計画に参画することとなった。システム
アナリストである私の責務は、A社経営戦略の実現にあ
たり、効果的・効率的な情報共有のあり方を検討し、か
つ情報共有を日常業務の中に定着させる事にあった。

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(設問イ)
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2.情報共有システム導入の目的
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 前述の通り、A社経営戦略は「在庫圧縮」にあるが、
一般的に「在庫圧縮」に取り組むと、受注時の引き当て
が、製品では無く製造途中の仕掛品となる可能性が高く
なり、結果的に受注から出荷に必要な工期が長くなる傾
向にある。私はこれらのバランスを保ちつつ、経営戦略
を実現するための、業務プロセス・情報政略を定める事
が重要であると考えた。A社と協議して定めた、新業務
プロセス・情報戦略は以下の通りである。

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2.1.見込み注文情報のインプット
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 従来の営業部門・製造部門による見込み生産の情報を
見込み注文情報として、システムにインプットし両部門
間で共有を図る。これにり、現在の在庫が、見込み注文
に基づくものであるか、顧客都合によるキャンセルであ
るか、また注文ロットと製造ロットの差異であるか、等
の分析・評価が可能となり、次のアクションに繋げる事
が可能となる。

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2.2.生産進捗・在庫情報の共有
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 従来営業部門では引き合い時の納期回答を行うために、
製造部門に連絡を取り、在庫・仕掛品の状態を確認して
いた。これらの情報を、営業部門で参照可能とする事に
より、納期回答の事務工期を短縮し、受注の機会を拡大
する。

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3.情報共有を定着させる為の工夫
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 システムに最低限必要な機能としては、情報共有のデ
ータベースと入力機能・参照用のアクセスツールを用意
するだけであり、比較的単純なものである。しかし、情
報共有は日常業務の中に定着してこそ意味を持ち効果を
発揮するものであり、前述の機能を提供するだけでは定
着には至らないと私は考え、次の点を定着の工夫として
提案した。

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3.1.確実に情報を参照するための工夫
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 先の「見込み注文情報」「生産進捗情・在庫情報」に
著しい変化があった場合に、メールで知らせる機能を提
案した。例えば、見込み注文量が1割増減した場合や、
納期が1週間前後した場合に自動的にアラームを発する
機能である。これにより、営業部門・製造部門で、必要
な情報を漏れなく参照する事が可能になると考えた。

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3.2.情報の精度を上げる工夫
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 従来のように、会議を主体とし、システム外で見込み
生産量を管理する場合に比べ、「見込み注文情報」をシ
ステムで管理する事により、様々な角度での分析・評価
が可能となる。具体的には、納期・数量・着工タイミン
グ等について、見込み注文と確定注文時の差異分析を行
う機能である。これにより、見込み注文情報の精度を上
げる事が可能になると考えた。

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3.3.基幹システムとの連携
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 従来は納期に関する情報をシステムがサポートしてい
なかったため、製造部門では注文に沿った製品を作ると
いう意識に欠け、定められた仕様に沿った製品をいかに
高い歩留り・生産性で作るかという事が、管理の主体で
あった。私は、経営戦略を実現するためには、製造部門
においても、この意識を変える必要があると考えた。具
体的には、見込み注文情報を基幹システムに接続し、基
幹システムの主要な作業命令書に、注文情報・納期情報
を表示する事を提案した。これにより、製造部門のスタ
ッフだけでなく、現場の作業員レベルにも、注文・納期
を意識させる事が可能になると考えた。


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(設問ウ)
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4.情報共有を定着させるための施策の評価
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 前述の施策をふまえシステムを構築した結果、A社で
の情報共有は活発に推進され、かつ日常業務に定着させ
ることができた。特に、月に一度の、製造部門・営業部
門による会議は、データに基づくものとなりより、効果
的・効率的な会議が運営されている。

 尚、具体的な数値として、経営戦略に対する達成状況
は以下の通りである。

a.在庫は、従来の会議を主体とした見込み方式に比べ、
 システムの導入後半年時点で15%削減されている。

b.在庫を削減したにも関わらず、確定注文入力時の製品
 在庫からの引き当て率は、75%から、80%に改善
 されている。また、リードタイムも平均で2日短縮す
 る事ができている。

 以上の結果は、単なる情報共有の機能を提供するだけ
でなく、情報共有を日常業務の中に定着させる工夫を同
時に検討・構築した内容が奏効していると判断する。





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