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(A社におけるシステムのパイロット導入について)

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(設問ア)
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1.パイロット導入の概要
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1.1.A社の概要
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 A社は素材産業に分類される製造業あり、国内に2ヶ
所の工場と、海外には3ヶ所の子会社と工場を有してい
る。海外拠点を含め全ての工場では、以下の理由により、
同一の生産管理システムを稼動させている。
 a.拠点ごとに個別システムを開発する事は、コスト的
  に無駄が多い。
 b.海外拠点においては、システム要員の交代が激しく
  個別開発を行った場合、システムの運用・維持管理
  を行う事が難しい。
 ここ最近、長年A社で使用してきた生産管理パッケー
ジソフトウェアが、使用開始後10年を経過しており、
老朽化が目立ってきた。そこで、今回業務プロセスの変
更と同時に、パッケージソフトウェアを刷新する事が計
画された。
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1.2.新たに導入された業務プロセス
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 従来A社製品の品質は、生産計上直前の抜き取り検査
により保証されていた。しかしながら、製品の○○○化
に伴い製造プロセスの難易度は上がり、途中工程での全
数検査が顧客より要請され、A社でもその必要性が認識
されるようになった。
 単純に検査の回数・対象を増やせば、製造工期が延び
る事になるため、最も効果の高い検査方法を検討しなけ
ればならない。また、途中工程でロットアウトした仕掛
品の救済・降格処置など、検討しなければならない業務
プロセスは多く存在する。
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1.3.私の立場
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 私の勤務するN社は、10年前よりA社情報システム
のアウトソーシングを請け負っていた。今回私は、シス
テムアナリストとしてパッケージソフトウェアの更新と、
業務プロセスの設計に参画する事となった。

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(設問イ)
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2.パイロット導入の必要性と計画概要
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2.1.想定された問題
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 新パッケージソフトウェアと、新業務プロセスを全5
ヶ所の拠点に一斉導入する事は、地理的・時間的にも困
難であるが、さらに私は次のようなリスクがあると考え
た。
a.機能面
 生産管理パッケージは、ERP・FAの中間に位置す
るものであり、ERP・FAとの連携に問題があった場
合にA社に与える影響は大きい。特に、今回選定してい
るパッケージは米国製であり、かつ国内での導入実績が
無いものであった。したがって、問題が発生した場合の
解決には長時間を要する事が想定された。

b.性能面
 今回の主たる導入目的は、途中工程での全数検査によ
る品質管理の強化にある。当然、現品の物流および検査
装置を制御するFAとの連携が必要であり、更にこのシ
ステム連携にはリアルタイム性が要求される。具体的に
は、レスポンスが3秒に満たない場合には、ラインが正
常に動作しないという問題がある。

c.運用面
 従来は、生産計上直前で発生していたロットアウトが
途中工程で少量づつ発生することとなる。これについて、
不合格となった品質測定データをもとに、よりグレード
の低い注文への降格処置か、再処理による品質向上の救
済措置を検討しなければならない。今回のプロジェクト
において、最も慎重に検討しなければならない部分の一
つである。一方の、全数検査工程の追加による製造工期
の延長は全ての品種平均で10%が上限と設定されてお
り、全数検査工程を既存の生産プロセスのどの部分に追
加する事が、最も効果的・効率的であるか検証する事も
重要であった。

 以上の理由から、私は特定拠点へのパイロット導入を
行い、充分な検証を行った上で、全拠点への展開を図る
必要性があると判断した。

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3.パイロット導入の工夫
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3.1.プロジェクトの体制について
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 前述の通り、A社の選定したパッケージは米国製であ
り、国内での導入実績は無い。私は導入を円滑に進める
ためには、パッケージベンダの協力は不可欠であると判
断し、プロジェクトの開始・本番化前後で3ヶ月間の現
地サポートを要請した。

 パイロット導入が完了した後は、全ての拠点に展開す
る事となるが、各拠点での展開を円滑に進めるため、ま
た各拠点の持つ特殊要件と、パイロット拠点およびパッ
ケージとの差異を見極めるため、全ての拠点より代表者
1名を参画させる事を要請した。

 最後に、ユザー部門の体制であるが、効果的に全数検
査工程を追加するため、ロットアウトした仕掛品の処置
方法を検討するためには、品質部門・製造部門・生産調
整部門の協力が必須であり、各部門より専任での参画を
要請した。

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3.2.パイロット導入拠点の選定
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 パイロット導入の対処となる拠点では、一時的に生産
を抑制しなければならないが、その影響は最小限に抑え
なければならない。私は、A社の営業部門に注文動向を
分析する事を要請し、生産調整部門には他拠点での代替
生産の可能性検討を要請した。その結果、注文量・生産
量が下降傾向にあり、時期新品種の量産化を待つ状態に
ある、国内の工場が選定された。

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(設問ウ)
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4.パイロット導入の評価と全面展開
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4.1.パイロット導入の評価
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 先に述べたリスクを潰すために様々なテストを繰返し
ながら、パイロット導入は進められたが、特にロットア
ウトした仕掛り品の処置については、試行錯誤が繰返さ
れた。具体的なポイントは、より低グレード製品へ振り
替える場合の業務手順である。同じ品質保証項目であっ
ても、測定機器が異なる場合の調整・換算や、再処理を
行う場合の生産計画への割り込み方法など、決定しなけ
ればならない項目は数百を超えていた。いずれも、必要
な部門から専任での参画を要請していた事により、スケ
ジュール通りに実行する事が出来た。これは、パイロッ
ト導入を推進するプロジェクト体制が適切であった事に
よると評価する。

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4.2.全面展開時の工夫
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 プロジェクト体制に各拠点の代表者を参画させた事は
既に述べた。更に今回、パイロット向上での導入時に、
パラメータの調整方法などパッケージソフトウェアの使
用方法や、ロットアウト時の処置方法等の業務手順など、
様々なドキュメントを整理しており、それをもとに各拠
点では展開を行っている。各拠点においては、製造品種
や製造設備の差異によるカスタマイズは必要であったが、
パイロット導入に参画した要員と、持ち帰ったドキュメ
ントにより、差異分析は容易に進み、展開についても問
題無く実施する事が可能であった。





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