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 (原材料や部品の調達業務の改革について)

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(設問ア)
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1 調達業務改革の概要と取組のねらい
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 A社は北関東を中心に30店舗のレストラン・居酒屋
を経営する年商50億円の外食企業である。

 不況の影響による平均客単価の下落や来店客の減少な
ど売上の伸長が望めない事業環境では食材調達コストの
削減による利益の確保が喫緊の経営課題となっていた。

 従来の食材調達方法は、各店舗が独自に仕入先の選定
および価格交渉並びに発注、検品を行い、本部は各店舗
から毎月末送られてくる納品書と取引先から送られてく
る請求書の照合および仕入先業者への支払い作業を行っ
ていた。このため、

・調達価格にボリュームディスカウントが適用されない
・本部で実施している納品書・請求書の照合作業、支払
 い業務が本部業務を圧迫している

という問題があった。

 A社は調達業務の改革を行い、

・売上高の40%を占めている食材費の10%削減
・食材調達に係る人件費、一般経費の削減

を達成することをミッションとした管理部門長を主査と
する「食材調達コスト削減プロジェクト」を編成した。
私は企画部のリーダーとしてプロジェクトの推進に携わ
った。

 私は調達業務の改革に当たっては、ITを活用した
WEB−EDI食材発注システム(以下、システム)を
活用することにした。これによって、

・本部は各店舗から集約した全社的な発注データに基づ
 いた価格交渉によって仕入価格を削減する。
・食材調達に係る伝票類の電子化による事務処理の合理
 化と人件費及び通信費を削減する。

を実現するねらいである。


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(設問イ)
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2.設定したビジネス上のルールと構築過程で生じた問題と解決方法
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2−1設定したビジネス上のルール
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 私は、調達業務の改革を円滑に推進するために、関係
者間の意思疎通を十分に図り、目的やねらいを明確にす
ることが重要と考えビジネス上のルールを策定し社内外
の関係者の承認を得た上で運用を開始した。

(1)受注可否の回答
 従来の電話やFAXによる発注では発注時に取引先の
注文請けの意思確認が取れていたが、WEB取引におい
ては発注データを取引先側が取り出さず契約不成立が発
生する可能性が考えられた。そのため主に以下の三点の
ルールを策定し、関係者への周知徹底を行った。

a.取引先は毎営業日の15:00にサーバーに接続しデ
 ータを受領する。
b.データ受領日の当日に受注データを入力する。
c.店舗は翌朝取引先からの受注データを確認し、受信し
 ていない場合には何らかの障害の発生による受注デー
 タの未達も考えられるため電話による確認を実施する。

(2)代金決済
 食材調達コスト削減のためには、より多くの取引先に
システムへ参加してもらう必要がある。従来、食材の売
買代金の決済は、月末締めの翌々月末の支払いスケジュ
ールであったが、システムを利用することにより納品デ
ータと取引先からの請求書との突合処理が軽減され、月
末締めの翌月末支払いのスケジュールが可能になると想
定された。
 私は、参加取引先拡大のために、システム参加のメリ
ットとして代金支払いの前倒しという条件提示を行った。

(3)機密保持対策
 システムは当社と取引先間のデータをインターネット
経由で送受信する。インターネットの代表的な脅威とし
て「盗聴」「不正アクセス」「なりすまし」「改ざん」
「事後否認」がある。取引データが盗聴され第三者へ漏
洩する、改ざんされた発注データが取引先へ送信される、
悪意を持った者が当社の偽WEBサイトを立上げ当社に
なりすまし取引先をだますなどである。私はデータの重
要度・費用対効果を考慮しリスクを軽減するために主に
以下のルールを策定した。

a.当社サイトと取引先との通信にSSLを採用する。
b.パスワードは英数字混在8文字とし生年月日など類推
 可能なものは使用しない。
c.パスワード有効期限は1ヶ月とし強制変換機能を備え
 る。

 また、当社の食材調達先、調達価格などの情報は当社
の競争優位性を確保するために必要な営業秘密であり、
従来から取引先リストのファイルにはマル秘の表示を行
い店舗および本部で施錠されたキャビネットに保管して
いる。私は情報が競合企業へ漏洩した場合の影響は非常
に大きいと考え、当社とシステムに参加する取引先企業
との間で、契約条項にシステム運用によって知り得た情
報の守秘義務と目的外不使用義務を明記した機密保持契
約を締結した。

(4)障害発生時の代替処理手続
 私はWEB食材発注システムに障害が発生し機能停止
となった場合には、当社の食材調達業務は混乱し店舗運
営に重大な影響を与えると考えた。私は障害発生時の代
替処理手続をあらかじめ定めることにより店舗運営に与
える影響を最小限に抑えようと考えた。
 システムによる調達業務が遂行できない場合は本部で
標準化した各種様式を用いてFAX・電話による代替運
用を行い、情報を一元化するために店舗⇔本部⇔取引先
のルートで調達業務を行うことにした。

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2−2構築過程で生じた問題と解決方法
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 導入にあたっては、全店長を本部に集め、目的・概要
の説明を実施し、現行の店舗での発注業務実態をヒヤリ
ングしたところ問題が発生した。30店舗中5店舗の店
長からの本部で選定した取引先以外の取引先との取引継
続要求である。 

 私は改革のキーパーソンは「反対者」ではあるが、ベ
テランで社内発言力があり業務をよく知っている、この
五人の店長であると判断した。この五人の店長の意識が
変われば社内意識改革が進み、より一層のシステム導入
効果が得られると考えた。

 私は解決策として、調達業務改革の方針とねらい、本
部における取引先選定基準を明らかにした上で取引の継
続を求める真意を探った。取引継続の主たる理由は「無
理な発注を聞いてくれる取引先である」であった。私が
無理な発注の発生原因を調査したところ、発注業務が標
準化されていないため店舗スタッフの発注ミスが多発し
それをカバーするための「緊急発注」であることが判明
した。私はシステムを導入することで発注業務が標準化
され、従来のような「無理な発注」が発生する可能性は
減少し、店長は、より店舗マネジメントに専念できるメ
リットがあることを説明することにより理解を得て解決
した。


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(設問ウ)
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3.調達業務の改革の成果を高めるための施策と今後の課題
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 本システムを導入したことにより、売上高に対する食
材費の比率は30%±5%で推移している。これは本社
にて全店舗の仕入データを分析することにより価格交渉
力を強化させたことによる仕入単価の削減の効果であり
当初の目的である仕入コスト削減を達成することが出来
た。

 ただし、今後の課題としては発注量の削減が上げられ
る。本システム導入により本部では精度の高い仕入コス
トデータを把握できるようになった。今後はこのデータ
を活用しメニューごとの食材量の理論値から各店舗の適
正発注量を算出し、発注量のチェックと改善を行うこと
で発注量の削減を行い更なるコスト削減を行っていきた
いと考える。

以  上





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