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専門スキルが必要な「Web教材」の制作プロジェクトについて

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(設問ア)
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1.(ア)私が携わったプロジェクトの概要
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1.1.プロジェクト概要
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 私の勤務する会社は、大手メーカ系のソフトウェア開
発企業で、全国の比較的規模の大きい企業に対し、SI
支援や、システム構築の支援をしている。私は今年で勤
続10年になるが、約5年前からプロジェクト管理を主
要業務にしている。
 今回私が担当したのは、大手監査法人A社向けのWe
bベース教材の制作プロジェクトである。専門スキルの
維持・強化により、社会から期待の高まる監査精度の強
化を目的とした「年次研修用」の教材である。
 通常は、顧客の指定するシナリオをWeb化する部分
以降が弊社のビジネス範囲である。しかし、今回は、顧
客が提示するテーマとコンセプトに基づく教材自体のシ
ナリオ作成も請け負うことが受託の必要条件となってい
た。総開発工数は6ヶ月である。

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1.2.新たな協力会社に依頼した内容とその理由
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 上述の通り今回のプロジェクトでは、シナリオ制作工
程も受託することが必要条件であった。通常の「Web
コンテンツ化」及び「インフラ(サーバ・ネットワーク
・クライアント)の設計・構築」など以外の部分をどう
いう体制で進めるかの検討が必要である。
 教材のシナリオ作成には、会計士としての専門知識と
実務経験を必要とする。このため、自社の要員だけで体
制を組むことは難しい状況であった。
 このため、今回求められているシナリオについて、通
常のSE工程で言う要件定義から外部設計に相当するシ
ナリオの「概要設計」と「シナリオ設計」の制作工程に
つき、外部協力会社に請負契約で依頼する必要があった。


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(設問イ)
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2.(イ)新たな協力会社の選定について
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2.1.新たな協力会社選定の評価基準
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(1)新たな協力会社の選定
 今回の外部調達したい作業内容・工程に必要となるス
キルなどを持つ協力会社は、当然ながら存在していなか
った。ただ、今後こうした顧客の要求にも対応できるよ
うにするためにも、今回のプロジェクトを機に新たな協
力会社を探すことになった。

 新たな協力会社と取引を開始するには、客観的かつ妥
当な評価基準を設定し、その基準をクリアしていること
を確認しなければならない。単純に協力会社のセールス
トークを鵜呑みにして安易に決めてしまうと、プロジェ
クトの途中で取り返しのつかないことになりかねない。
そのため、協力会社を選定するにあたって、最初に、協
力会社として必要な要件と、今回依頼する内容上必要と
なる要件を明確にすることにした。そうして、この必要
要件を基にRFPにまとめるとともに、各項目の評価基
準を設定し、最適な取引先を選定することにした。

(2)選定時に定めた評価基準
 今回の選定にあたって、最も重要な要素は会計士とし
ての業務知識とそれをベースとした教材の作成能力であ
る。モノ作りにとって最も重要な上流工程の品質如何で
最終成果物の品質や手戻りによるロスと大きな影響があ
るため、この部分が最優先事項である。また、要員の病
気や退職等を考慮して、会計士資格保有者が10名以上
いて、今回2、3名程で、組織的に取り組んでもらうこ
とが第一条件である。さらに、なんらかの教材作成経験
があることも強力な加点要素となる。

 次の条件は健全性である。基本的に会計監査は大手の
監査法人4社がほぼ独占的に実施しいる。一部、会計士
数名〜数十名で新たなビジネスモデルの下、ベンチャー
型事業を起こしているのが実情である。それはすなわち、
発注側から見るとリスクになる。プロジェクトの途中で
会社が倒産するとプロジェクトにも影響するし、プロジ
ェクト完了後でも、後々の保守サポートにも影響が及ぶ。
そのため、設立後8年以上、過去3年間利益を確保して
いること、従業員として会計士が10名以上いることを
最低の基準とする評価基準を設定した。

 最後の条件は、見積り業務量と価格の妥当性である。
いくら条件を満たしていてもコストがかかりすぎるとそ
れは問題である。当然、顧客と契約している費用内でな
ければならない。今回、シナリオ作成工程(シナリオの
「概要設計」と「シナリオ設計」の工程)では180万
円/人月の費用を顧客からもらっている。そのため、弊
社の粗利25%ルールに基づき、135万円/人月を上
限とする、見積り金額を評価基準に設定した。

 その他細かい基準はいろいろあったが、主要な項目は
こういったものである。

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2.2.評価内容及び協力会社の選定理由
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 今回要求する条件を満たしていると思われる企業3社
に対して、RFPを発行した。
 半月後、RFPを発行した各社のプレゼンテーション
を順次行い、そのときの提出資料の内容を基に比較検討
した。
 健全性は抜群の企業、価格が安い企業、会計士の実務
経験に加えて、教材作成ノウハウも保持している企業と
3社3様の特徴で、単純には比較できなかった。そこで、
それぞれの項目に重み付けを行い合計点で比較すること
にした。例えば、会計実務の経験年数、教材作成実績が
50%で、価格などの妥当性が30%というように。
 その結果、この段階では、会計実務の経験に加えて、
いろいろな教材作成実績を持つS社を第一候補として選
定した。

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2.3.評価結果の検証
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 新たな取引を開始するにあたっては、その企業を、必
ず実際に自分の目で確認しなければならない。請負契約
の場合、作業を依頼した後は納品されるまでのコントロ
ールは原則依頼先任せとなるためである。また、提案書
の内容が必ずしも事実ばかりとは限らない。
 そこで今回は、会計実務の経験や教材作成の実績に対
しての項目に主観的な評価基準が多かった点もあり、実
際に問題ないかを中心に、以下の2点で検証した。

(1)会社訪問
 実際の業務状況を確認することが一番である。このと
きに社員に活気があり、効率よく作業をしているかどう
かを見学する。社員が実際に働いている姿を見ると、そ
の企業の本来の力がよくわかる。

(2)取引先からの評判を確認
 また、業界のコネクションを通じて、S社と取引実績
のある企業に、S社とのパートナーシップがうまくいっ
ているかどうか、作業を依頼したときに問題がなかった
かどうかを確認した。

 上記の結果、特に問題となるようなこともなかったの
で、そのまま今回はS社と契約することになった。


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(設問ウ)
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3.今後のプロジェクト運営のために
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3.1.私の評価
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 今回私が行った新たな取引先の選定については、一定
の評価をしている。本プロジェクトも問題なく完了し、
顧客からも高い評価を得ている。一部作業を依頼した協
力会社のシナリオ設計及び作成に関しても、特に大きな
トラブルもなく、次回からも機会があれば積極的に依頼
していこうと考えている。

 また、その後いろいろなところで話になるのだが、最
近は不況の影響もあり、提案書に書く内容を誇大表現し
たり、中には明らかに事実でないことを記載したりする
という話をよく耳にする。そういった点でも、提案内容
を鵜呑みにせず、実際に自分の目で見て評価内容を検証
したことが、今回の成功につながったと考えている。

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3.2.今後の改善点
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 今後は、今回連携した協力会社との関係強化を図りた
いと考えいてる。弊社同様S社も、そもそもほとんどこ
うした異業種連携によるビジネス・スタイルははじめて
であった。このため、両者間での役割分担の明確化や制
作に必要となる標準ルールの整備を進めていきたい。

 さらに、今回のプロジェクト実施に伴い明確となった
課題や強化すべきスキルを補いつつ、より品質の高い「
Web教材」を効率的に制作しうる方法論についても標
準化していきたいと考えている。
(以上)





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