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 (社外からのチームリーダの採用について)

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(設問ア)
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1.プロジェクト概要と社外リーダ採用事由
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1.1プロジェクト概要
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1.1.1情報システム概要
 私が参画したプロジェクトは証券業 A社の EAIシステ
ム構築プロジェクトである。本システムは海外証券市場
での注文・約定を行うために、 A社内の証券取引システ
ムを海外子会社の証券システムと連携する。

 両システムは業界標準の FIXプロトコルを用いた専用
回線で接続する。 FIXプロトコルではメッセージ形式が
定められているため、 EAIシステムで変換を行う。

1.1.2プロジェクト概要
 システムインテグレータである弊社は A社 EAIシステ
ム構築を受注し、私はマネージャとしてアサインされた。
私の下にそれぞれ 4人で構成される基盤チームと EAI
チームを編成した。

 EAIシステムには工数削減のためパッケージを利用し、
 FIX連携の実績がある B社製品が採用された。但し繁忙
期であり、 B社製品開発経験のあるリーダクラスの人材
が不足していた。

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1.2.社外リーダ採用事由
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1.2.1チームの役割及びメンバ構成
  EAIチームは B社製品を用いて、 FIXメッセージ形式
への変換部分の開発を担当する。メンバの半数は元々証
券取引システムの開発メンバで証券取引システムには精
通しているが、 B社製品については使用法のトレーニン
グを受けた程度である。残りの半数は B社製品の開発経
験はあるが、皆若手であった。

1.2.2社外からの採用の検討理由
  B社製品は操作性の高い開発環境を備えており、
トレーニング受講レベルの者が開発を担当することは問
題なかった。加えて B社製品は独特の開発環境を備えて
いるために、とりわけ他チームとの調整事項が少なくな
る開発工程においては、リーダに作業計画立案から管理
までを任せることにより、 B社製品の特徴を活かした生
産性の向上を期待できた。

 しかし EAIチームのメンバは開発者としては優秀な部
類に属するとしても、設計や管理については未経験で、
リーダを任せるには力不足であった。そのため、 B社製
品を使用した開発において設計能力及び開発スケジュー
ル管理能力のあるリーダを社外から求めることにした。


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(設問イ)
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2.リーダに求められる条件と確認方法
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2.1具体的条件
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 私はチームリーダ選定条件を文書でリストアップし、
上司の承認を得た。基準は下記の通りで、優先順位の高
いものから並べている。
(1) リーダーシップ・コミュニケーション能力
(2)  B社製品を利用した設計・開発経験、知識
(3) チームリーダ経験
(4) 弊社システム開発手法・標準への理解
(5) 証券取引業務知識

 選定条件の根拠は、(1) のリーダーシップ・コミュニ
ケーション能力については、一般にリーダに求められる
スキルとして思いつくものである。いかなるプロジェク
トであっても、メンバ間の公式・非公式なコミュニケー
ションなしに成功はありえない。ここにはメンバを指導・
育成する能力も含めている。但しこの基準は曖昧で評価
が困難なため、単なる好き嫌いになりかねない。そのた
め、この基準をメンバと目標・方針を共有し、仕事を進
められる能力というように具体的なイメージを持たせた。
現在の若手メンバも将来はリーダを務めることができる
ように経験を積ませたいと考えているため、リーダーシ
ップといっても自己の方針を強要したり、何でも自分で
やってしまったりするタイプは避けることにした。リー
ダーシップとコミュニケーション能力をまとめて 1つに
したのもこのためである。

 (2) の B社製品を利用した設計・開発経験、知識につ
いては B社製品での設計能力に欠けるチームにおいては
優先的に求められる条件である。単にツールを使って開
発できるというだけでなく、設計できる点が重要である。

 (3) のチームリーダ経験は、能力が経験に裏打ちされ
るとの考えから入れた。リーダに必要な管理能力はここ
で判断する。但し、欲しいのはあくまで能力であるので、
プライオリティを下げた。リーダという名前でなくても、
それに近い仕事をしたことがあれば可とする。

 (4) の弊社システム開発手法・標準への理解について
は引き継ぎや保守を考慮すると外せない基準である。製
品ベンダの推薦者の場合、製品知識は深くても、この点
を満たせないことが多い。

 (5) システムの性格から導かれるが、 B社製品かつ証
券業務に通じているとなると範囲が非常に狭まるので、
あったらいいという程度に位置付けた。証券業務につい
てはメンバが精通しているので、それで補えると判断し
た。

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2.2確認方法
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2.2.1選考手続
 選考手続は書類選考、面接の順に実施した。先ず弊社
と取引実績のある協力会社から B社製品での開発実績の
ある企業を選定し、リーダ候補の提案を依頼した。取引
実績のある会社から選定したのは、弊社では協力会社
データベースを構築しており、それによりこれまでの協
力会社利用結果を確認できるためである。データベース
からは、当時の担当部署・担当者を辿ることもできるの
で、ヒアリングを行うことも可能である。

 書類選考では B社製品の設計経験やリーダ経験の有無
を確認した。加えて弊社での実績がある場合は、弊社開
発標準を理解していると一応評価した。書類選考では
 3人に絞り、私、私の上司、候補者、候補者の上司の
 4人で面接を実施した。面接で選定条件の一つの
リーダーシップ・コミュニケーション能力という主観的
な評価を行うため、弊社からも複数人で対応することに
した。

 面接ではリーダーシップ・コミュニケーション能力に
ついて、面識のないメンバもいる中でのリーダーシップ
の発揮方法について尋ねた。メンバとコミュニケーショ
ンをとり、目標・方針を共有することでチームをまとめ
るという回答を期待しており、精神論や豪腕を排除する
ものである。

 それ以外に B社製品の設計能力に関して、 B社製品で
の開発経験の詳細をヒアリングすることで設計経験まで
あるか、リーダ経験に関してリーダとしての職務内容を
聞くことで箔を付けるための名目上のリーダ経験ではな
かったか、弊社開発標準への理解に関して弊社での実績
がある場合の成果物など、書類のみでは判断できない点
を確認した。

 一方で過去の担当者ともヒアリングし、候補者の話と
整合性が取れていることを念のために確認した。

2.2.2 選考結果
 選考の結果、 C氏を適任と判断した。 C氏はリーダー
シップ・コミュニケーション能力についての質問で期待
に沿った回答をしたのみならず、ドキュメント表現力が、
以前の担当者から高く評価されており、チームメンバに
開発方針の明示と周知徹底をもたらすことが期待できた
点があげられる。

 また、チーム内の特殊事情として、親しい人には饒舌
であるが、そうでない人の前では借りてきた猫のように
大人しくなってしまうメンバがいるが、 C氏は弊社での
実績が長く、弊社に溶け込んでおり、一緒に仕事したメ
ンバもいる点で問題ないと判断した。

 加えて C氏は弊社が受託した小売業 D社の EAIシステ
ム開発案件にサブリーダとして参画した経験がある。
チームリーダ経験はないものの、上記 D社案件では他
チームとの兼任リーダの下、事実上リーダの職務の少な
からぬ部分を担当しており、リーダを任せられると判断
した。

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(設問ウ)
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3.評価と改善
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3.1評価
 本プロジェクトは納期内に所定工数で完了した。 C氏
が D社案件での経験をもとに、弊社開発手法・標準に基
づいた B社製品の開発テンプレートを早期に作成し、メ
ンバに説明したため、メンバもそれを利用して容易に開
発を進めることができた。

 手続的にも今回の採用は、複数人で評価している上、
候補者の過去の担当者とヒアリングするなど、社内の情
報共有システムを十分に活用できた点で、模範的事例と
言っても良いと自負している。

 今回のリーダ採用は成功を収めたと評価している。

3.2改善
 今回の採用ではリーダ経験・ B社製品の設計経験につ
いては、なるべく書類選考で判断するつもりであった。
しかし協力会社への提案依頼時に書式を指定しなかった
ため、一般的な職歴を記述しただけのものが多かった。
そのため、書類選考において十分な判断ができず、面接
において改めて確認することもあった。

 書類選考と比べると、面接はスケジュール調整もあり、
時間もとられるため、書類選考で確認できるものはそう
することが効率的である。今後は書類を求める際に記述
してほしいポイントを明確化して伝えることで、書類選
考を充実したものにしていきたい。

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以上、宜しくお願いします。





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