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(A社コアコンピタンス経営とパッケージの活用)

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(設問ア)
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1.コアコンピタンス経営推進の概要とIT活用の概要
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1.1.A社のビジネス状況
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 A社は電子部品を製造するメーカであり、国内と海外
に3ヶ所の工場を有している。A社の製造する部品は特
殊加工が必要であり、参入する企業は多くない。その中
でA社は、25%で4位のシェアを確保している。

 A社の顧客となる電気メーカからの品質・価格要求は
以下のように分類される。

a.全数検査を実施する事。ここで「全数検査」とは、
 100個の製品を納入した場合、100個全てについ
 て検査を行う事を意味する。これに分類される顧客は
 圧倒的に高価での取引が可能である。

b.検査は、ロットからの抜取りで可能とする。こちらに
 分類される顧客は、品質要求レベルが低いかわりに、
 製品の価格も低い。

 A社では、現在はb.に分類される顧客においても、い
ずれa.の様に品質要求レベルは高度化すると考え、全て
の生産管理業務プロセスを、a.の単品管理に統一する事
を決定した。また同時に高品質の製品を出荷する事で
3年後に、40%で2位のシェアを勝ち取る事を目標と
して掲げた。

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1.2.IT活用の概要
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 A社の基幹システムは、抜取り検査を前提にしたロッ
ト管理をベースに構築されており、一部の全数検査の顧
客要求に対してはハンド管理を実施していた。しかし、
今後、全数検査を行い単品レベルの品質保証を行うため
には、単品管理が可能なシステムが必要となる。以上の
様な状況からA社のシステムは抜本的な再構築が必要と
なった。その情報戦略は以下の通りである。

「パッケージの適用による短工期開発を目指すが、A社
 の強みであり、他社と差別化すべき業務プロセスにつ
 いては、スクラッチ開発も否定しない。」

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(設問イ)
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2.コアコンピタンス経営の推進における留意事項
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 前述の通りA社は業界4位のシェアを確保していたが
完全な単品管理を実現していた部品メーカは、1位の
X社のみであった。いずれ多くの顧客が単品管理へと移
行していく事は明らかであり、A社が業界2位に躍進す
る為には、2位・3位のメーカに先駆け、短期間で単品
管理を実現する事にある。

 この為には、A社のコアコンピタンスは単品管理にあ
る事を全社員に周知徹底させ、全社員が一丸となってコ
アコンピタンスへの集中を行う事が重要である。具体的
にA社では社長自ら以下の施策により周知徹底を図った。

a.3ヶ所の工場を訪問し説明会の実施
b.協力会社を含む全社員に文書の配布
c.管理職向けには、コアコンピタンスへの集中に向け解
 決すべき課題等、討論会の開催

 この社長の意思決定を受け、A社では「業務改革委員
会」が結成された。また、私の勤務するN社は長年A社
情報システムのアウトソーシングを請け負っており、私
はシステムアナリストとして委員会に参画する事となっ
た。

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3.ITを有効に活用するために工夫した点
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3.1.パッケージに活用とベストプラクティスの適用方針
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 単品管理を実現する新しい業務プロセスおよびシステ
ム機能が、全てパッケージの持つベストプラクティスで
実現される事が理想である。しかし、ベストプラクティ
スを適用する為に、本来A社の強みであり、他社と差別
化すべき業務に制約を加えては本末転倒である。

 私は、業務改革委員会にて、強化・差別化を行うべき
業務プロセスを検討し、パッケージ適用分野の見極めを
行った。業務改革委員会は、営業・購買・製造・品質保
証・物流等、全ての業務部門より構成されており、数回
に渡る検討会の結果、殆どの業務はパッケージの基本機
能と若干のカスタマイズで適用可能であるが、品質保証
だけは、スクラッチによる作り込みが必要であるとの結
論を得た。その理由は以下の通りであり、いずれもA社
のノウハウが凝縮されている業務である。

a.全数検査は最終的に出荷の直前に実施されなければな
 らないが、途中工程での検査では不良品を後工程に流
 さない様に効果的・効率的に抜取りを行えば充分であ
 る。その母集団となる条件は多岐に渡り、また操業途
 中で変動するため、パッケージの機能では対応できな
 い。

b.途中工程・最終検査で発生した不良品は、再処理によ
 る救済や、低グレード注文への振替を実施するが、こ
 れをサポートする機能が充分で無い。

 委員会では、以上の結論を社長に報告し、本来の目的
である単品管理の強化には、品質保証機能のスクラッチ
開発が不可欠である事を理解・承認していただいた。

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3.2.ITの活用によるコアコンピタンスの伸長
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 前述の通り、単品管理と全数検査へのシフトは、市場
動向の先取りである。私は、これに加え営業・品質品質
保証部門に対し、「全単品の品質データをXMLで提供
する。」事を提案した。これは、システムの根本を
ロット管理から単品管理に変更する事により、比較的容
易に実現できる機能である。

 単品レベルの品質データや、電子データでの提供は、
顧客要求では無く、また業界1位のX社でもロット単位
のデータを紙ベースで提供しているという状況であった。
しかし私は、そういう状況下であるからこそ強力に推進
すべきであると考えた。

a.業界に先駆けて実施する事によるシェア拡大。
b.標準フォーマットとして採用される可能性。

 営業部門経由で全ての顧客に確認を取って頂いたが、
殆どの企業では関心が無く、興味を示したのは大手の
3社で売上の数%という状況であった。それでも、私と
A社は上記の目的・戦略にのっとり、「読み捨てて頂い
て構わない」前提で、全顧客に品質データの提供を開始
した。

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(設問ウ)
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4.コアコンピタンス経営とIT活用の評価
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4.1.シェア獲得の状況
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 全数検査の要求は、2年後に爆発するであろうと予測
し、A社では単品管理へのシフトを図った。しかし実際
にその時期は、単品管理へのシフトを決定してから1年
後におとずれた。

 幸い、殆どの業務はパッケージのベストプラクティス
が適用可能であり、スクラッチ開発を品質保証に絞り込
む事で、は自社の強みを活かしつつ市場の要請にタイム
リーに応える事が出来た。その結果現在では、37%で
業界2位のシェアを確保する事に成功している。

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4.2.IT活用の評価
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 パッケージの適用方針が市場要請に対しタイムリーに
応える成功要因となった事は既に述べた。一方の、
XMLによる品質データの提供についても、その後顧客
要求が爆発的に増え、現在ではA社売上の30%を占め
ている。勿論同様の要請は競合他社にも向けられている
が、私の提案した施策により最も早く対応が完了してお
り、シェア獲得に奏効しているものと判断する。





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