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 (ビジネスの変革のためのITの活用について)

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(設問ア)
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1.現行ビジネスの状況
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 A社は航空会社であり、シェア率・売上高とも国内2
位を確保している。近年、一般家庭へのインターネット
の爆発的な普及びWeb関連技術の飛躍的向上から、業
界内においてインターネットを用いたチケット予約販売
による売上・シェアが飛躍的に上昇している。A社にお
いても同様で、Webによるチケット予約販売の総売上
高に占める割合は3年前より、約6%→約10%→約1
5%と推移しており、現在では1800億円の売上高と
なっている。A社では7年前よりインターネットを用い
たチケット予約販売システム(以下、Webシステムと
いう)を提供していた。しかし、以下の問題から既存シ
ステムの限界を露呈することになった。

a.Webシステムからの売上が伸びるにつれ、使用方
法がわかりにくい等、A社のコールセンターへのクレー
ムが増加している。

b.航空運賃の変更や新商品の追加などによる、システ
ムの機能追加や変更にかなりの工数がかかり、機敏な対
応ができなくなってきている。

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2.システムの全体構想の概要
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 以上の理由から、A社ではWebシステムの刷新が喫
緊の課題と捉え、システムの全面再構築検討を開始した。
新規Webシステムの主な概要は以下の通りである。

a.Webシステムにログイン状態の保持機能とパーソ
ナライズ機能を搭載し、顧客への利便性向上と個々の属
性に合わせたサービスの提供。

b.航空運賃の変更や新商品の追加など、システムの機
能追加や変更の拡張性の向上。

 私はB社のシステムコンサルタントとしてA社の情報
戦略策定プロジェクトに参画した。

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設問イ 2.ビジネスの変革とIT活用の貢献
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 従来、A社では顧客へのチケット予約販売は旅行代理
店経由・A社受付窓口の直接販売がメインであったが、
前述の通り、Webシステム販売の総売上高に占める割
合は年々増加してきている。また、プロジェクト発足時
に、業界内で売上高1位のC社が3位のD社を1年後に
吸収合併することが決まっており、A社ではC社との差
別化を図るためにも新Webシステムによるチケット販
売の強化は経営戦略上不可欠であった。

 今回のシステムの全体計画を立案する上で、既存のW
ebシステムの課題を整理し、新規Webシステムによ
る解決策・貢献度を明確にする事は重要である。私はま
ず、既存Webシステムの開発・運用担当者、クレーム
受け付け等の窓口であるコールセンターの担当者それぞ
れにヒヤリングを行った。以下は、そのヒヤリングの結
果得られた既存Webシステムの課題の詳細である。

a.既存Webシステムでは、会員がログインする際に、
10ケタの「お客様番号」と「パスワード」を入力する
必要があった。そのことから、顧客より何回も長い文字
を入力するのは面倒だというクレームが多数あった。

b.7年前に開始したWebシステムはD社が先駆けて
開始したものに対抗し、急いでサービスを始めたもので
あり、実験的な意味合いが強かった。また、このシステ
ムは元々旅行代理店向けに提供していたチケット予約販
売を流用したものであり、個々の顧客に対するサービス
としては不十分な部分が多数あった。開発環境は、C言
語で開発されており、3件程度のWebページの修正で
さえ、3ヶ月近くかかることもあった。

 上記の課題を改善するため、私はA社に以下の改善案
を提案し承認された。また、A社では新Webシステム
の導入によって5年後にWebシステムによる売上高を
4000億、総売上高に占める割合を35%に引き上げ
るという目標を立てた。

a.新Webシステムでは、初回ログイン時に「次回か
らはログイン状態を保持する」という選べば、以後は「
お客様番号」と「パスワード」を入力する必要ないログ
イン状態の保持機能の追加。また、Webページの内容
を、個々の会員の属性に合わせて変えるパーソナライズ
機能の追加。これは例えば、会員の名前やマイレージの
獲得ポイント、会員の属性に応じたサービスやキャンペ
ーンを表示させるなどである。これらの機能は既存のC
社、D社のシステムには実現されていないものである。

b.運賃の変更や新商品の追加にいち早く対応する為、
開発言語にJAVAを採用する。これはシステムの拡張
性を強化するには、アプリケーションをコンポーネント
(部品)化する必要があると考えた為である。

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3.重要と考え工夫した点
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3.1.ITの最新動向と自社への適合性
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 今回の新システムで提供するサービスの最大の特徴は
自動ログインによるパーソナライズ機能の実現である。
しかし、この機能の実現には情報漏洩というリスクが伴
う。会員の端末・新Webシステムのサーバ間をSSL
で暗号化することによって通信間での漏洩は解決できる
と判断していた。しかし、私はそれ以外にも以下のよう
な問題があると考え対策を行った。

a.トップページをパーソナライズすると、パソコンを
共有しているユーザがいた場合、マイレージポイント等
の情報が他人に知られてしまう恐れがある。

これに関しては、メンバー内で議論が重ねられたが、自
動ログインのメリットとデメリットを明示した注意書き
を示し、実際に利用するかの判断はユーザに委ねた。私
は自動ログインのメリットばかりを優先するとA社全体
としてセキュリティに対する意識が問われることにつな
がりかねないと判断したからである。また、注意書きに
は画面写真を盛り込むなどわかりやすさを心がけた他、
どのページからも参照できようにした。

b.顧客情報保護対策に対するプロジェクトメンバの意
識・知識とも低く、A社全体においても体制は確立され
ていない。

私はこの問題は特に重要と考え、弁護士・セキュリティ
コンサルタントによる顧客情報保護対策に対するセミナ
ーを行った。このセミナーにはプロジェクトメンバのみ
ならず、今回のWebシステムの開発・運用・保守に係
る全ての人員に受講を要請した。また、A社のCSOに
早急に顧客情報保護対策に対する体制の確立を行うよう
要請した。近年、大手企業の顧客情報漏洩事件が多発し
ており、A社も例外ではないと判断した為である。

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3.2.関連システムとの連携
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 A社では会員向けWebサーバ(Webシステム用)
と非会員向けWebサーバが稼動している。非会員向け
Webサーバは主に一般向けの情報提供を行っている。
当初の仕様では会員は会員向け・非会員向けサーバの両
方を閲覧するようにしていたが、テストを行うにつれ不
具合が発生した。会員向けと非会員向けのWebページ
をいききすると、WebブラウザにSSL用の警告画面
が頻繁に表示されるものである。そこで私は、会員向け
Webサーバにも非会員向けWebサーバと同様の内容
を入れ込むことにより、会員をSSLに対応するWeb
サーバにだけアクセスさせるように仕様を変更した。セ
キュリティ上の不備はないが、警告画面が度々表示され
ると、ユーザが不安に感じると考えたからである。こう
することによって、警告画面は初めの1回のみ表示され
るようになった。

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3.3.現行業務からの移行
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 新Webシステムでは、チケットの予約や購入方法が
大きく変わる。その為、ユーザからの問合せが、各コー
ルセンターに殺到する可能性は十分あると私は考えた。
A社のWeb向けサービス専用のコールセンタは全国5
カ所ある。私は直接各担当者へ説明する事が重要だと判
断した為、新機能を解説した資料とデモ画面を携え、全
5カ所で説明会を開催した。また、営業支店やグループ
子会社への説明については、支店長が本社に集まる支店
長会議を利用し、システム刷新の狙いや機能概要を説明
した。各コールセンターを総括するCS推進室向けには
プロジェクトメンバ内で手分けして3人で2回ずつ、計
4回の説明を行った。CS推進室に重点をおいて説明を
行ったのは直接顧客と接する立場にあるCS推進室に新
Webシステムの内容を十分に理解してもらう必要があ
ると判断した為である。
 
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設問ウ
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4.ビジネスの変革とIT活用の評価
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4.1.目標の達成状況
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 現在、新Webシステム導入より、1年を経過してい
るが、Webシステムによる売上高は2700億円、総
売上高に占める割合は約22%になっており、A社の掲
げた4年後の売上高を4000億、総売上高に占める割
合を35%という目標を実現させるのに充分な実績とな
っている。統合化されたC社でのWebシステムによる
売上高は2000億円となっており、C社のWebシス
テムには未だ自動ログインによるパーソナライズ機能は
実現されておらず、競合他社との差別化が図れていると
判断する。また、コールセンターによせられるクレーム
件数も導入前より約80%減少しており、会員向のアン
ケートでは「個人情報を大事にしているのがわかる」と
いう声が多数よせられている。

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4.2.施策の貢献度
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 新Webシステム導入によってシステムの運用・保守
においても効果が表れており、新Webシステム稼動後
6ヶ月で約100件の機能追加と修正を施すことができ
ている。これらの変更内容はコールセンターに寄せられ
たユーザからの要望・提案と航空運賃の変更や新商品の
追加によるものである。このことは、新システムでJA
VAを採用し、システムをコンポーネント化したことが
奏効していると判断する。

 以上、目標の達成については、システム全体計画にお
いて考慮した様々な施策が奏効していると判断する。





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