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(データ移行について)

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(設問ア)
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1.新システムの概要と移行対象データの決定方法
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1.1 新システムの概要
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 A社は生命保険会社である。近年生命保険業界は規制
緩和の影響により、外資系企業が参入し、従来にも増し
て新規顧客獲得に向けた市場競争が激化している。
 最近では、これまで保険商品の主体であった死亡保障
性の終身保険に代わり低価格の医療保険が主流となって
きている。A社においても、新規顧客獲得へ向け、医療
保険の発売を決めた。

 A社はこれまで新商品開発の度に、契約マスターを拡
張し、システム開発を行ってきた。契約マスターには、
契約情報以外に取扱者・募集者などの情報も多数含まれ
ており、レコード長の観点からこれ以上の拡張は不可能
な状態になっていた。
 そこで、今後の拡張性を視野に入れた契約マスターの
再編成の目的で新システムを開発することになった。

 新システムは、旧システム同様、汎用機ホストコンピ
ュータで収納保全業務処理(保険料の請求、入金、保険
金の支払、解約等)を司るシステムである。契約マスタ
ーについては、今後の拡張性を考慮し、8つに分割して
保持することにした。
 私はアプリケーションエンジニアとして、当該システ
ム開発の設計全般を担当した。

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1.2 移行対象データの決定方法
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 移行対象データについては、旧・新システムのデータ
フロー、ファイル仕様を参考に移行対象データを決め、
データ交換の必要性を検討した。
 上記手順にに基づき分析を行った結果、新システム開
発にあたり大幅なシステム更改はなく、ファイル仕様の
変更は契約マスター以外には発生しないことが判明した。
 これを受けて、データ交換の必要性を伴うデータは、
契約マスターのみとの結論に達した。


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(設問イ)
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2.移行方法と移行作業時の工夫点及び検証方法
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2.1 データの移行方法
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 データの移行方法については、一般的には順次移行方
式と一括移行方式が存在する。今回、移行対象となる契
約マスターについては、一括移行方式を採用することに
した。というのもデータの性質上、日次サイクルで契約
マスターの更新が発生するため、順次移行方式を採用す
ると契約マスターの整合性に問題が生じる可能性が懸念
されたためである。
 手順としては、契約マスター移行プログラムを作成し、
旧契約マスターを移行プログラムによって、新契約マス
ターに変換する。続いて、新契約マスターに問題がない
ことを確認して契約マスターの一括移行を行うこととし
た。

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2.2 移行作業時の工夫点
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 新システムの本番稼動は、お盆休み明け最初の営業日
であった。契約マスターはオンライン業務が開局中は、
常に更新される可能性がある為、移行作業と移行データ
の正当性の確認に許された期間はお盆休み中の4日間で
あった。しかしながら、今回移行対象となる契約マスタ
ーの件数は、A社の保有する個人保険の契約数にあたる
400万件にものぼる為、上記期間での新契約マスター
の正当性を検証するのは、非常に困難であった。

 新システムをトラブルなく本稼動させるためには、限
られた時間の中で、データ移行作業が正しく行われてい
ることを確認することが肝要である。併せて、新システ
ム稼動後に移行対象データの更新矛盾が発生しないこと
も事前に検証する必要である。その為、以下の手順で契
約マスターの移行作業を行うこととした。

 a.新システム本番稼動3ヶ月前〜2ヶ月前まで
 移行プログラムにより旧契約マスターから新契約マス
ターを作成し、データ変換が正しく行われていることを
確認する。

 b.本番稼動2ヶ月前〜1週間前まで
 新システムリハーサル環境と旧システム本番環境にて
同様のサイクルテストを行う。後に、契約マスター、そ
の他出力帳票のデータ・帳票コンペアをA社の汎用ツー
ルにて行い、相違が無いことを確認する。
上記サイクルテストにおいては、入金・保険金支払・解
約・失効等の業務を、テスト上1年サイクルで実施する。
 サイクルテストの結果を目検証するには、多くの時間
がかかる為、A社の汎用ツールを用い機械的にデータコ
ンペアを行うこととした。汎用ツールについては、配下
メンバーのソフトウエア開発技術者が他のシステム開発
時に常用していた。今回のシステム開発において同ツー
ルを使用し、検証を行うことにも問題がないことを確認
した上で使用することとした。

 c.本番稼動2ヶ月前〜1週間前まで(b.と並行作業)
 旧システム本番環境において、日次単位で契約マスタ
ーの更新が行われたデータに対して、移行プログラムに
よってデータ変換を行う。本番環境同様のトランザクシ
ョンを用い、新システムリハーサル環境において契約マ
スターの更新を行い、更新結果を、日次単位で検証する。

 d.本番稼動1週間前〜本番稼動直前
 営業日間の契約マスターの更新整合性の検証について
は、本番稼動直前4日間のオンライン閉局期間中にc.の
手順で行う。

 a.〜d.の作業終了後、テスト結果に問題がなければ、
移行プログラムを使用し、本番稼動直前営業日のオンラ
イン閉局後の契約マスターを変換し、一括移行を行う。
 なお、a.〜d.の作業で、問題が発生し、新システムの
稼動が困難であると判断された場合に備え、契約マスタ
ーのバックアップを保持することとした。

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2.3 移行データの正当性の検証方法
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 移行データの正当性の検証方法については、2.2の
a.〜d.の方法に基づき行うこととした。

 a.400万件の契約マスターのデータ変換作業におい
て、変換矛盾の有無を確認する。

 b.新システムリハーサル環境及び、旧システム本番環
境にて行うサイクルテストで、主要業務における契約マ
スターの更新矛盾の有無を検証する。

 c.旧システム本番環境と同様のトランザクションを用
い、移行リハーサル環境において契約マスターの更新を
行い、更新矛盾の有無を検証する。

 d.本稼動1週間前〜本稼動直前において、契約マスタ
ーの更新矛盾の有無を検証する。

 a.〜d.の作業において、変換後の契約マスターの整合
性及び、更新矛盾の発生有無を検証し、本番稼動判断基
準とした。

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(設問ウ)
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3.評価と今後の改善点
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3.1 評価
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 今回開発を行った新システムは、無事本番稼動を迎え
ることができた。なお、同システムは、現在も問題なく
稼動している。この結果は、限られた時間の中で、移行
データの検証を事前に行えるようにスケジュールを立て、
A社の汎用ツール等を用い、円滑に作業を進めることが
できたからであると素直に評価している。併せて、同ス
ケジュールをユーザーにも事前に承認を頂き、スケジュ
ール、作業内容等に問題がないことを確認できていた点
も大きいと考える。
 
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3.2 今後の改善点
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 私自身がデータ移行を担当したのが、初めてであった
ということもあり、慎重になりすぎたために移行データ
の正当性の検証に多くの工数を費やしてしまった。シス
テム開発を行う上で、品質を保証することは非常に大切
ではあるが、費用対効果という観点で定量的に判断し、
効率よく品質保証を行うべきであったと反省している。
私自身の意識改善と共に、今回作成した新システムの仕
様及び、ファイル仕様を配下メンバーに周知徹底するこ
とで、今後のシステム開発に備え、これまで以上に品質
保証の効率化を図っていく所存である。
                     (以上)





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