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 A社基幹システムのアウトソーシング

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(設問ア)
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1.アウトソーシングの概要
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1.1.A社情報システムの概要
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 A社は電子部品を製造するメーカであり、工場は24
時間の操業を行っている。信頼性の観点より、A社では
長年汎用機を使用しており、本番機・開発機の2台構成
となっている。特に、開発機は、本番機の障害時にバッ
クアップとしても活用できるようになっている。

 従来はいずれの計算機もA社内に設置されていたが、
システム監査の結果、同一敷地内に本番機とバックアッ
プが設置されている環境は、火災・地震等に対する安全
性が充分では無いとの指摘から、本番環境とその運用業
務をN社にアウトソーシングすることを決定した。

 私は、A社のシステム管理責任者であり、N社と協議
の上、アウトソーシングを推進していくこととなった。

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1.2.アウトソーシングの目的と業務の概要
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 前述の通り、アウトソーシングの契機となった背景は、
システムの安全対策にある。具体的には、本番機被災時
にはA社に残された開発機を用い、短時間でシステムを
復旧し、サービスを再開できる環境を構築するものであ
る。

 アウトソーシングの形態には様々あるが、対象が汎用
機であることに加え、A社ではメーカよりカスタマイズ
されたオンラインコントロールプログラムを提供されて
おり、アウトソーシングの形態は、ハウジングとした。

 また、N社に依頼する主なアウトソーシングの対象業
務は以下の通りである。

 ・自動実行されるバッチジョブや、オンラインプログ
  ラムの稼動監視。
 ・A社で採取する開発機バックアップの保管と、N社
  で採取する本番機バックアップの送付。

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(設問イ)
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2.移行計画の中で重視した事項・理由
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2.1.バックアップに関する責任範囲の明確化
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 私は、アウトソーシングの目的より、移行計画を立案
する上で最も重要な点は、バックアップに関する責任を
明確にすることにあると考えた。例えば、A社にて本番
環境を復元する際に、バックアップの不足等により復元
ができなかった場合、予め責任範囲を明確にしておかな
ければ裁判にも発展する可能性がある。

 以下は、N社と協議の上定めた、責任分担である。

・必要にして十分なバックアップ機能の用意はA社が行
 う。何故ならば、A社では継続的にシステムの開発・
 改造を行っており、関連システムとの整合を確保し、
 一貫性のあるバックアップ採取計画を立案できるのは
 A社に他ならないと考えた。

・バックアップはN社が実行し、正常終了・異常終了の
 監視を行う。万が一、異常終了している場合にはA社
 に即時連絡を取り、連絡を行った時点でN社は免責と
 する。

・N社が採取したバックアップはA社に送付し、保管は
 A社が行う。これにより、N社の本番計算機とバック
 アップが同時に被災を防ぎ、またA社で速やかかに復
 元が可能となると考えた。

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2.2.ユーザへの対応窓口・障害発生時の対応
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 今回のアウトソーシングは、アプリケーションの保守
を含まない。従って、ユーザへの対応窓口は従来通りA
社が担当する。

 一方の障害発生時の対応については、事前の取決めが
重要である。何故ならば、障害発生時には、リカバリ作
業を行いつつ、可能な範囲で通常処理を行う場合がある。
これは、手順が非常に煩雑であり、誤った場合には二次
障害の原因になり得る。これについては、障害時のイレ
ギュラーとなる運用はA社が指示し、N社では、単純に
実行するだけでなく、二次障害が発生した場合の責任を
明確にするため、指示・実績の記録を全てが残すことを
定めた。

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2.3.移行手順・移行時のサービスレベル
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 移行時のサービスレベルとして考慮しなければならな
い事項は、以下の通りである。
 ・A社本番環境の停止時間の短縮
 ・移行時不具合の発生防止

 私はこれらを同時に満足する移行手順として、以下を
立案した。

a.A社開発環境をN社に移設・アップグレードし、本番
 稼動の確認を行う。
b.確認後は、アプリケーション・データの最新化を行っ
 た後、そのまま本番サービスを開始する。
c.A社に設置された旧本番環境は、開発環境に使用する。

 一時的に、システム改善業務が滞るが、確実に移行を
行うためには不可欠であることを、A社のトップマネジ
メントに説明し、了解を得た。

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(設問ウ)
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3.移行計画の評価
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 A社では、N社より提供されるバックアップを用いて、
半年に1度、本番環境回復訓練を行うことにしている。
この訓練の2回目において、一部データベースの不足が
発覚した。原因は、A社が行った小規模開発において追
加されたデータベースが、N社で実行するバックアップ
ジョブに組み込まれていなかったことが原因であった。
これについては、予め責任範囲を明確にしておいたこと
から、明かにA社の責であり、契約上の問題に発展する
ことは無かった。

 アプリケーションの障害発生時の対応については、
A社指示のもとN社が実行することを定めている。しか
し、夜間の場合にはN社が障害を検知してからA社がア
クションを開始するまでには、平均して1時間のタイム
ラグがある。この間、N社では成す術が無く、A社の
ユーザからはサービスレベルの低下が問題にされている。
これについては、N社と協議の上、障害の複雑さの見極
め・単純障害の場合の復旧をN社に移管することを検討
している。

 移行手順については、A社開発環境を事前にN社に移
設する方法により、サービスを停止しなければならない
移行期間を短縮し、かつ移行時のトラブルをゼロに防ぐ
ことができた。

 以上より、総合的に判断して今回のアウトソーシング
は成功であったと判断する。





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