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(外部設計におけるデザインレビューについて)

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(設問ア)
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1.システムの概要、対象業務の特徴及びレビュー対象ドキュメント
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1.1 システムの概要、対象業務の特徴
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 A社は大手の乳業メーカーである。乳製品は文字通り
”鮮度が命”であり、長期保存がきかないという特性が
ある。そのため、A社では取引先である量販店や小売店
による受注から、工場等の生産拠点への発注までの処理
を効率化すべく電子受発注システム(以下EOSと略す)
を運用し、業務に役立てている。A社EOSは十数年前
に構築された汎用機ベースのシステムであり、長年の稼
動実績がある一方で、以下の問題点を抱えていた。

・画面がCUIであるため、生産拠点から発注情報照会
を行うと、画面に一度に表示できる発注明細の件数が最
大20件と少ない。そのため、目的のレコードを探すの
に何度も画面を切り替えなければならない。

・本部と生産拠点の間は汎用機向けの専用線で接続され
ており、運用コストが大きい。

 そこで、A社では解決策として、EOSをWebベー
スのシステムとして再構築することにした。そして、開
発をシステムベンダーであるB社に依頼した。

 私はB社の社員である。今回のA社EOS再構築にア
プリケーションエンジニアとして設計全般に携わった。

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1.2 レビュー対象ドキュメント
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 要件定義工程が終わり、外部設計工程で作成する成果
物の1つに画面の設計書がある。前述した通り、今回の
開発はプラットホーム変更を伴う既存システムの再構築
である。従って、特に影響の大きいと思われる既存画面
30点の設計について、いち早くA社と合意する必要が
あった。そのため、私は画面の設計書について、デザイ
ンレビューにより早期に品質を確保し、後工程での手戻
りや仕様変更を抑制することがプロジェクトの成否を左
右すると考えた。


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(設問イ)
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2.レビューに当たり重視・工夫した点、及びレビュー結果のフォローアップ
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2−1.レビューに当たり特に重視したチェック項目
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 前述した通り、今回のシステム開発はプラットホーム
変更を伴う既存システムの再構築である。特にエンドユ
ーザである各生産拠点の担当者からは、旧システムでの
画面操作性を継承しつつ、発注明細照会時に一度に表示
可能な件数は増加させて欲しいというニーズが挙げられ
ていた。なぜなら、従来の発注明細照会画面では、一度
に表示できる最大件数が20件と限られており、目的の
明細を探すために、何度も画面を切り替える必要があっ
たためである。

 以上の業務特性を踏まえ、デザインレビューを実施す
るに当たり、重視すべき項目を以下の2通りに定めた。

a.発注明細照会画面の最大表示可能件数が旧システム
に比べて5倍以上、すなわち100件以上となること。

b.上記以外の部分について、機能や操作性が既存シス
テムから引き継がれていること。

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2−2.効率的・効果的なレビューのために工夫した点
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 デザインレビューを効率的・効果的に行うためには、
目的を明確化し、目的が達成できるようレビューの実施
要領について参加者間で合意しておくことが不可欠であ
る。そこで、私はデザインレビューの目的を、前項a、
bに挙げた2項目に基づき、新システムの画面設計につ
いて、A社、B社間で早期に合意することと定めた。そ
して、レビューを効率的・効果的に運営すべく、実施要
領を以下の通りとした。

a.開催時期は毎週A社に赴き、半日かけて実施してい
る進捗報告会議の時間を利用する。進捗報告会議にはA
社の責任者やB社のプロジェクトリーダーといったキー
マンが一同に会するため、この機会を利用するのが妥当
である。

b.レビュー対象である画面設計書は、レビュー実施2
営業日前までにB社からA社に事前に送付する。このこ
とにより、A社のレビュー参加者が事前に指摘項目をリ
ストアップでき、レビューの際に指摘項目の伝達に専念
できる。

c.議論が発散しないよう、出席者は両社合わせて6名
程度に限定する。特にA社生産拠点のエンドユーザにつ
いては、参加人数が多いと要望が百出する可能性がある。
そのため、窓口役となる担当者1名に限定する。

d.間延びしないよう、1回当たりの実施時間は2時間
以内とする。

e.画面レイアウトについては、特に多くの指摘が挙が
る可能性がある。そのため、設計書と別に画面のHTM
Lファイルを保存したノート型PCを用意し、指摘項目
を反映したイメージをその場で確認する。

 さらに、レビューの形式については、インスペクショ
ンを採用することにした。なぜなら、インスペクション
では、モデレータを中心にレビューが運営されるため、
必要な視点を予め決めておくことで一定の品質を確保で
きるという利点があるためである。特に今回は前項a、
bに挙げた通り、重視すべき項目が明確化されており、
レビューの効果を高めるにはインスペクションが最適で
あると判断した。

 その場合、モデレータの人選が重要となってくるが、
私はプロジェクトメンバーの1人であるC氏に依頼する
ことにした。なぜなら、C氏はA社既存EOSシステム
の保守を長年担当してきた結果、A社の業務に精通して
いる。そのため、レビューの際に挙げられた指摘項目の
理解が早く、さらには指摘項目の背景に潜む本質的な問
題部分も推し測ることが期待できると考えた。

 これらのレビュー実施要領について、私はC氏、プロ
ジェクトマネージャーの了解を取り付けた上で、A社の
責任者にも提案し、了承を得た。

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2−3.レビュー結果に対するアクションプランとフォローアップ
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 前述した通り、今回のデザインレビューではインスペ
クションを採用するため、モデレータが指摘項目のフォ
ローアップにまで責任を持つのが一般的である。そこで、
私はレビューでの指摘項目については、モデレータのC
氏を中心にできるだけその場で項目毎の責任者、解決期
限、解決方法を決めることにした。さらに、レビューの
都度台帳を作成し、指摘項目及びそれに対するアクショ
ンプランを管理することで、確実にフォローアップを行
うようにした。このことについても、私は関係者の合意
を取り付け、実施要領に盛り込んだ。


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(設問ウ)
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3.レビューについての評価、及び今後改善したい点
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3−1.今回のレビューについての私の評価
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 今回、実施したレビューでは、実施要領を細かく決め
たことで非常に効果的な運営ができたと思っている。実
際、開始当初は何人かの参加者から、運営ルールが窮屈
過ぎるのではないかという意見も挙がった。しかしなが
ら、レビューが進むにつれ、一定の観点、目的に沿って
画面設計の品質が向上してゆく過程を参加者全員で共有
することができた。その結果、A社、B社双方のメンバ
ーにその効果を認識してもらうことができた。

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3−2.今後改善したい点
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 今回のレビューは毎週行っている進捗報告会議のうち、
最後の2時間を利用することが多かった。そのため、A
社の担当者がレビュー中に思い当たった仕様変更をB社
メンバーに伝えそびれ、後でメールで連絡するというこ
とが何度か発生した。幸い仕様変更の内容は全てB社に
きちんと伝わった為、事なきを得た。しかしながら、実
施時間帯の設定を見直す、レビュー実施後にフリートー
クの時間を設ける等、何らかの対策を打つ余地はあった
はずである。

 今後はレビューの実施そのものだけでなく、こういっ
た参加者同士のコミュニケーション円滑化にも配慮しつ
つ、効率的・効果的なレビューを実施してゆきたいと考
えている。
                       以上





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