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 (プロジェクト全体に波及する問題の早期発見について)

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(設問ア)
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1.プロジェクトの概要と、プロジェクトの立上げ時に
抱えていた問題
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1.1.プロジェクトの概要
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 我が社は通信関係の会社で、私は社内の開発部門で通
信設備系管理システムのプロジェクトグループに所属し
ているプロジェクトマネージャである。今回私が担当し
たプロジェクトは、新たに提供予定の新サービスへ対応
するための設備工事計画業務サブシステムの開発である。

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1.2.プロジェクト立ち上げ時に抱えていた問題
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 今回の開発では、設備情報を一元的に管理する親シス
テムにも本サブシステムへの情報流通のための機能を追
加するため、親システムを開発してきた実績のあるA社
と、今回サブシステムに採用したクライアント側プラッ
トフォームで開発実績のあるB社の2社による開発体制
をとった。

 しかし、この2社の体質は全く異なり、A社は大手の
総合IT企業で製造部分を子会社へ委託していることか
ら、仕様変更等については煩雑な承認手続きを経なけれ
ばならならず、また、開発期間も長く費用も高かった。
逆にB社は設計・製造部分も自社で行っている小規模の
ソフト会社ため、厳格な承認手続きが無くてもかなり融
通がきき、開発期間も短く費用も安かった。しかし、
A社の成果物の品質は高いのにくらべ、B者の品質には
多少問題があるものも過去にはあった。

 このようなことから、A社、B社の弱点をうまくコン
トロールできれば、良い点が相乗効果として、プロジェ
クト成功へ貢献できる半面、コントロールできない場合
は両社の弱点が逆の相乗効果として大きな問題になると
考えていた。

 また、これら全く体質の異なる2社に加え、当社利用
部門、本プロジェクトメンバーおよび関係者のそれぞれ
でそれぞれの都合や思惑があり、これらをうまく調整し
なければならないため、プロジェクト運営はかなり厳し
くなるものと予想された。


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(設問イ)
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2.想定した問題点と兆候の発見
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2.1.プロジェクト全体に波及する恐れのある問題点
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 まず最初に私は、これらの問題に対応しなければなら
ない状況になった時点で、関係者との調整がスムーズに
進められるようにするため、これらの問題の存在とそれ
に対するプロジェクトの基本的な方針や目標を関係者全
体で共有する必要があると考えた。また、プロジェクト
遂行時にリスクが現実になったときに場当たり的な対応
をするのではなく、想定できるものについては事前に対
応等を準備しておくことも重要と考えた。

 そこで、これらの問題点を考慮したプロジェクト計画
書を策定し、その中で、これらの問題点からプロジェク
ト全体へ波及する事項について洗い出し、リスク管理計
画としてまとめた。さらに完成した計画書は、各関係部
門へ提示し、了承を得た。

 なお、A、B両社とは設計以降の製造請負契約とは別
に仕様検討からの上流工程についても、技術支援契約を
締結し、作業に参加してもらうこととなった。

 荒い出した問題点は、リスク管理計画として以下の4
項目へ展開しまとめた。
(1)管理項目:洗い出した問題点の一覧
(2)管理指標:管理項目の兆候監視のための数値指標
(3)管理目標:管理指標値の目標値(しきい値)
(4)対応策:目標値を超えた場合の対応策

 このうち、荒い出した問題点に該当する(1)の管理
項目の内容を以下に示す。
(1)管理項目
 (A)仕様の確定遅延
 (B)仕様変更処理の遅延
 (C)設計品質の劣化

 ここで、(A)、(B)については特にA社対応とし
て、(C)についてはB社対応項目として考慮し定めた。

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2.2.問題発生の兆候発見
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 兆候発見のための監視項目としては、リスク管理計画
の管理指標の中で、上記で定めたそれぞれのリスク管理
項目ごとにその発生時期や内容を考慮した管理目標とと
もに次のように定めた。

(1)管理指標
 (A)仕様確定予定日との相違日数
 (B)仕様変更処理に要した日数
 (C)設計書と仕様書との間の相違割合と確認網羅率

 このうち、(A)については、特にA社、B社の体質
相違による調整作業のリスクを管理することを目的とし
た。監視項目としては、それぞれの仕様項目ごとの確定
時期マイルストーンを定め、これからの遅延日数を監視
する。管理目標は現時点から全項目最終確定予定日まで
の余裕日数に応じた係数をかけ影響度を加味して目標値
を定め、これからのしきい値を超えた場合に対応計画と
して準備した対応策を講じるよう考慮した。

 (B)の管理指標は、主に設計段階からの監視項目で、
特にA社の仕様変更手続きによるリスク管理を目的とし、
仕様変更が発生してから設計書に反映されるまでの日数
を監視する。管理目標は前項と同じ設計完了予定日まで
の余裕日数に応じた係数に加え、変更による波及程度の
影響も加味した値を定め、これからのしきい値を超えた
場合に準備した対応策を講じるよう考慮した。

 (C)の設計品質の劣化については、特にB社対応を
目的としている。一般的にB社はコーディングを含む製
造のほうに力点を置きがちで、設計部分をおろそかにす
る傾向がある。そのため、設計段階で仕様との乖離につ
いての確認がおろそかになりがちで、最悪の場合、出来
上がってから異なることに気づくこともあった。今回は
この部分を監視するため、仕様と設計書との項目ごとの
確認回数と相違個数を監視項目として定めた。管理目標
としては各仕様項目ごとに確認の網羅具合や相違数のし
きい値として定めた。

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2.3.プロジェクト遂行時の兆候発見
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 プロジェクト計画書により、問題発生の兆候発見のた
めの準備は整えられたが、プロジェクト遂行時において
は、計画書のようなマクロ的な管理だけでなく、よりき
め細かなミクロ的な管理も必要と考えた。また、プロ
ジェクト計画書は対外的な調整用の意味合いもあるが、
それとは別に、計画書に記述されたリスク内容が実際に
表面化する前に、根本的な原因レベルで管理する必要も
あると考えた。

 具体的には、仕様確定作業において、仕様確定時点で
初めてマイルストーンからの相違を見るだけではなく、
それまでの進捗から予測される確定予定時期との相違に
ついても適時監視し、その傾向を分析することで遅延が
表面化する前に兆候の早期発見と対応をすることに成功
した。また、仕様打合せや、レビュー時の記録は主催側
が作成するだけでなく、それぞれの関係者がそれぞれで
作成し私のほうへ提出するようにした。これらの記録で
各関係者間での相違を分析し、それぞれの考え方、捕ら
え方の相違によるリスクを早期発見し、管理項目(A)
の仕様の確定遅延防止について効果をあげることができ
た。

 設計段階では、B社の設計品質劣化から仕様変更への
波及を抑えるため、仕様と設計書との項目ごとの確認回
数と相違個数を分析、監視するとともに、その相違内容
についても関係者間で分析することで、管理項目(C)
の設計品質の劣化防止について効果をあげることができ
た。

 管理項目(B)の仕様変更処理の遅延については、変
更内容により必要とする処理日数が異なるため、基準と
する日数を事前に決めるのは困難であった。また、実際
の承認処理等はA社内の管理事項であり、他社であるこ
ちらからコントロールできるものではないし、さらに遅
延の内容までも分析することはできなかった。したがっ
て、この項目については、きめ細かな分析や対応はでき
なかったが、計画書として提示することで、ある程度の
抑止効果はあったものと考えている。

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(設問ウ)
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3.活動の評価と改善
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3.1.評価
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 今回のプロジェクトでの一番の問題は、関係者間での
立場や体質の相違による共通認識すべき項目の独自解釈
や思いこみで、これらの解消には十分なコミュニケーシ
ョンと、管理・調整するものの偏らない公平さが重要で
あると認識することができ、そのように心がけてプロジ
ェクトを遂行してきたことが成功の要因のひとつと評価
している。

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3.2.改善
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 また、本プロジェクトは計画書という道具により関係
者間での認識の調整にも利用でき、リスク発生の抑制に
も効果があることがわかったので、今後計画書の充実や
改善について取り組んで行きたいと考える。





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