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 (業績評価指標を総合的に取り扱うシステムの立案について)

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(設問ア)
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第1章 システムの概要と業績評価指標
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1.1 システムの概要
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 私は資産運用会社A社のシステム企画部長である。当
社は、投資信託の預かり資産で日本一であるが、最近は
他社と比較して残高の伸び率が低迷している。そこで、
商品企画やマーケティングでの活用を目的として管理会
計システムの構築を立案した。

 当システムは、投資信託(以下、ファンドとする)ご
と・販売チャネルごとの残高や収支情報をタイムリーか
つ迅速に提供するため、社内イントラネットホームペー
ジ(以下、イントラHPとする)を活用した情報発信型
のシステムである。

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1.2 業績評価指標
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 当システムの主な業績評価指標は、以下のとおりであ
る。
a.ファンドごとの残高・資金異動・収支
b.販売チャネルごとの残高・資金異動・収支
c.中期経営計画と予算/実績比較

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1.3 データ収集・加工・提供の仕組み
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 私は、経営情報のタイムリーかつ迅速な把握という要
件を満たすため、以下の仕組みを考えた。

1.3.1 収集
 預かり資産の状況(残高・資金異動等)、収入、費用
の状況は、基幹システム(投資信託システム、財務会計
システム)と社内Webサーバとのデータベース連携で
実現する。

1.3.2 加工
 費用項目のうち、直接費はファンドや販売チャネルへ
直課し、間接費は配賦ロジックを構築する。また費用の
期間按分を実施する。

1.3.3 提供
 イントラHPにおけるWebベースでの提供とする。

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(設問イ)
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第2章 管理会計システム立案時の考慮点と工夫
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2.1 システム立案時に考慮したこと
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2.1.1 業績評価指標の使用目的と用途の理解
 前述したとおり、当社は、残高伸び率で他社との比較
で低迷している。また、投資信託の郵政公社での窓口販
売を控えて、さらに業界内競争が激化することも予想さ
れた。この経営環境を背景に、現在のファンド・販売チ
ャネルごとの経営情報について、タイムリーかつ迅速に
把握する必要があった。また、こうした経営情報を活用
して、新商品の販売や販売会社へのマーケティングにい
かしたいという経営サイドの意図があった。

2.1.2 必要となるデータとその特性への配慮
(1) 必要となるデータ
 当社の経営情報を把握するためには、以下のデータが
必要であった。

a.預かり資産の状況
 当社の商品であるファンドについては、以下の情報を
バックシステムである投資信託システムから収集した。
・ファンドごとのNet Asset Value(以下、NAVとす
 る。)
・ファンドごとの資金異動情報
b.収入・費用項目
 収入・費用については、財務会計システムから以下の
情報を収集した。
・運用収入
・広告宣伝費や法定印刷費といった直接費、およびシス
 テム費や通信費という間接費

(2) データ特性への配慮
 預かり資産の状況については、資産価値を正確かつタ
イムリーに把握する必要があったため、日々時価評価を
行った。また、収入・費用項目については、キャッシュ
ベースで把握した場合、入金月や支払月で極端に計上額
が大きくなるという特性があった。

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2.2 工夫したこと
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2.2.1 業務処理の変更
 費用項目については、従来請求・支払ベースの実績把
握にとどまっていた。管理会計上、正確かつタイムリー
な把握のためには発注ベースでの数字が必要であると考
え、取引先業者に対して紙による見積書に加えて、デー
タでの見積提示を依頼した。その際、フォーマットの標
準化や業務ルールの策定を実施した。また、例えば半年
ごとに請求されるシステム利用料のケースでは、支払時
に計上するとコストの期間的なぶれが発生するため、期
間按分を実施して月次単位での把握を可能とした。

2.2.2 データ加工を円滑に行うための工夫とタイ
ミング良く提供する仕組み

(1) 二次データベースの利用
 投資信託システムからファンドの状況を把握し、一方
で財務会計システムから提供される収入・費用項目を集
計して、以下のデータベースを構築した。

a.日次データベースのNAV
 前営業日ベースのNAVや一日単位での資金異動をデ
ータベースに収録し、ファンドごとの数字はもちろんの
こと、販売チャネルごとの数字への加工も容易とした。

b.管理会計収支状況
 前述した発注ベースでのデータ収録や、費用の期間按
分の実施により、月次単位での発注ベースの収入・費用
項目のデータベース化が可能となった。

 これらにより、月次での管理会計収支状況を経営サイ
ドへ提示することができた。

(2) 経営サイドが利用しやすいインターフェイス
 当社の経営者には、ITに関しての詳細な知識がない
ものもいるため、情報提供時には以下の点について工夫
した。

a.経営者メニューの創設
 イントラHP内に経営者メニューを作り、数回クリッ
クするだけで、データが表示できるようなインターフェ
イスを提供した。

b.ドリルダウンが可能な仕組みの提供
 ファンド状況の明細や、収入・費用項目の勘定科目単
位の情報は、当該項目をクリックするだけでドリルダウ
ンが可能な仕組みとした。

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(設問ウ)
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第3章 評価と改善
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3.1 評価
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3.1.1 リアルタイムな意思決定への貢献
 従来、ファンドごとの情報は営業部門のみで把握され
各月末時点の状況が翌月第2週に実施される経営会議で
報告されていた。その場では、数字の理解にとどまって
いた。管理会計システム導入後は翌月第3営業日には、
イントラHPに情報提供されるため、経営会議ではその
情報を踏まえた上での議論ができるようになり、新商品
発売の迅速な意思決定がなされた。

3.1.2 新商品発売への貢献
 管理会計上のファンド情報をもとに売れ筋を把握する
ことで、新ファンドである「好配当株投信」を他社に先
駆けて発売することができ、発売から約2週間で500
億円の資金流入となる大ヒットを生んだ。

3.2 改善
 昨今、経営環境は動的に変化しており、管理会計シス
テムもその変化に応じて見直しが必要となる。それ故、
システムの有効性を監査して、適宜マネジメントレビュ
ーを行ってシステム改善を図っていく。現時点での経営
サイドからの要請は以下のとおりである。

 利益率の向上と販売会社への指導へ活用するため、以
下の業績評価指標を設定。
・ファンド単位での製造原価の算出
・製造原価算出によるファンドごと・販売チャネルごと
の損益分岐点分析の実施

以上





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