Click here to visit our sponsor


----------------------------------------------------------------------

(部門間にまたがる業務プロセスの"あるべき姿"に基づいた改革の立案について)

----------------------------------------------------------------------

----------------------------------------------------------------------
(設問ア)
----------------------------------------------------------------------
1 改革に至った背景と概要
----------------------------------------------------------------------
1−1 改革に至った背景
----
 私は業界では中規模のソフトウエア開発会社 A社に勤
務している。 A社は企業向けの各種業務用ソフトウエア
の開発/販売を主要業務としており、10年位前からは
企業のIT化推進の流れにより順調に売り上げを伸ばし
てきていた。

 しかし、ここ2、3年は不景気による企業のIT投資
の縮小や、安価なソフトウエア開発を行うアジア系企業
の進出に伴い、売り上げは低下してきており、現状のま
までは近い将来、A社の存続に関わる事態となる可能性
があった。

 そこでA社では、早急に業務プロセスを抜本的に見直
し、合理化により経費削減を実現することを考えた。そ
れが実現すれば、アジア系企業に対する価格競争力を確
保することも可能となり、また余裕資金を研究開発に回
すことで商品競争力も向上することが見込めた。

 私は、A社の経営企画部に所属しており、上記の業務
プロセスの改革に向けた検討の責任者を任命された。

----
1−2 改革の概要
----
 A社では以前から開発における原価率が比較的高めで
あるという自覚があったが、具体的に同業他社と比較し
たデータは存在していなかった。そこで、私はコンサル
ティング会社に協力してもらい、国内ソフトウエア開発
業界の原価率の平均とA社の原価率との比較を行なった。
その結果、A社の原価率85%に対し、国内平均は
75%であり、10%も高くなっていることが判明した。
A社の原価率が国内平均並みになれば、相当の経費削減
が期待できることから、原価率を10%削減することを
数値的目標とし、業務プロセスの改革を進めることと
なった。

----------------------------------------------------------------------
(設問イ)
----------------------------------------------------------------------
2 業務プロセス改革にあたっての問題点と工夫
----------------------------------------------------------------------
 原価率を10%削減に向けた業務プロセス改革を検討
するにあたり、私は、社内各部門からメンバを選出して
もらい、検討チームを編成して検討を行なうこととした。

----
2―1 あるべき姿の策定
----
 検討チームでの議論の中で、「A社の開発プロジェク
トでは、要件定義終了後の顧客からの仕様変更要求が多
く、その結果、開発が手戻りとなるケースが多い」とい
う意見が挙げられた。私は、この部分にプロセス見直し
の鍵があるのではないかと考え、過去何度かA社と共同
開発を行なったことのあるB社の担当者にアクセスし、
B社のプロジェクトの運営方法について情報を入手した。
それによると、B社のプロジェクト運営においては、要
件定義に相当の期間/稼働をかけているとのことであっ
た。これに対し、A社では要件定義の段階ではあまり稼
働をかけず実際の開発工程の中で要件定義を行なうケー
スが多いことが判明した。

 この結果として、A社では手戻りが発生することが多
くなり、逆にB社は最初の要件定義の段階では工数が多
く必要となるが、開発に入ってからの手戻りが生じるこ
とは殆どないため、結果としてB社の方が原価を抑える
ことができていることが想定された。

 以上のことから、「要件定義に重点を置いたプロジェ
クト運営を行うようにプロセスを見直すこと」が、原価
率低減に向けたあるべき姿として定義された。

----
2―2 現状のプロセスとのギャップと問題点
----
 私は、営業部門および開発部門から派遣されていた検
討メンバに対し、新たな業務プロセスについて自部門に
持ち帰り、意見照会/集約を行なってくるよう依頼した。
その結果、新たなプロセスの有効性については異論はな
かったが、その実現性については多数の問題点が指摘さ
れた。指摘された内容は殆ど同一であり、それは「重点
的に初期要件定義を行なうことができるメンバがいない」
ということであった。

 A社の主要顧客には自己本位なお客が多く、初期段階
では要件定義の相談に真剣に対応されないケースが多く、
初期要件定義においては、技術的スキルに加えて、高い
折衝能力が求められた。しかし、 A社の場合、営業部門
メンバは全員技術的スキルが不足していた。一方、開発
部門メンバについては顧客との折衝能力が高いメンバは、
開発のコアメンバでもあり、初期の要件定義で稼働を取
られることは開発工程にも影響が生じると考えられた。

----
2−3 問題点への対策
----
 長期的視点で見た場合、初期の要件定義に対応するメ
ンバを育成するという手段も必要であるが、業務プロセ
ス見直しは急務であることから、何とか現状の営業部門
および開発部門メンバでの対応を行なう必要があった。
そのため、私は、以下の対策案を立案し関連部門へ提示
を行なった。

a.初期要件定義を行なうメンバ間の情報共有DBおよび
 定期会合の設置
b.開発メンバに対するリモートアクセス環境の提供

 a.は要件定義作業においてノウハウを共有し、「開発
部門メンバに対しては顧客折衝能力の向上」「営業部門
メンバに対しては技術的スキルの向上」を目的としてい
る。

 b.は顧客先等においても必要に応じて開発工程への参
加を可能とすることを目的にしている。

 この対策案の実施を前提に、営業部門および開発部門
から初期要件定義に参加するメンバを選出してもらうこ
とが可能となり、情報システム部門にも協力してもらい、
a. b. の対策案を実現することとなった。

----------------------------------------------------------------------
(設問ウ)
----------------------------------------------------------------------
3 私の実施した対策に対する評価
----------------------------------------------------------------------
 私の立案した対策が実現されたことで、初期要件定義
を重点的に実施するプロジェクト運営を行うことが可能
となった。その結果、運営方法見直し後の開発プロジェ
クトに対する原価率は平均で約77%となり、従来より
約8%低減することとなった。目標の75%までには届
いていないが、まだ運営方法の見直しが実施されてから
半年程度しか経過していないことから、今後新たなプロ
セスが定着していくことにより近々に目標は達成できる
と想定できる。

 以上のことから業務プロセスの見直しは成功したと言
えるものと考えている。

 また要件定義を担当する新たなメンバ育成において、
私の実施した対策の中の「ノウハウ共有DBの構築」にで
蓄積されたノウハウが非常に有用となっており、これも
付帯効果と言えるものと考えている。


− 以 上 −





[ 戻る ]