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集合住宅向けインターホンシステムの開発

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(設問ア)
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第1章	プロジェクトの概要と発注工程の範囲
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1.1	プロジェクトの概要
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 私はSIベンダーの開発部門に所属している。今回、
M社の集合住宅の新築に際し、そのインターホンシステ
ム構築のうちソフトウエア部分を当社が受注し、私がプ
ロジェクトマネージャに任命された。ソフトウエア開発
工数は100人月で外部設計からシステムテストまで
10ヶ月である。今回のプロジェクトでは集合住宅の竣
工に向けての開発であることから納期遅延は許されない。
しかし、全ての要員を当社で用意するのは費用面と同時
期の当社の要員アサイン状況から困難であった。した
がって私は対象業務の一部を外部委託することとした。

 当社には開発業務を主体とする子会社S社がある。S
社は開発費用や開発要員の確保、当社にない開発技術の
提供を目的として設立し、当社が実施した外部設計で内
部設計以降、結合テストまでを委託する形でシステム構
築を行う協業形態をとっている。

 S社はこれまでの経験で当社の作業の進め方を熟知し
ている。したがって依託先としてS社を採用することが
最善であると考えた。

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1.2	開発工程の範囲
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 従来S社へは内部設計から結合テストまでを委託発注
しており、特に問題も発生していない。したがって、今
回のプロジェクトでも当社の実施する外部設計後、この
工程範囲をS社に委託することとした。
 今回のシステムでは音声通話機能が重要であるが、当
社の要員体制の中にはこの技術を使った開発の経験者が
いなかった。私は、この音声通話については依託期間中
も管理上注意が必要であると考えた。

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(設問イ)
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第2章	請負契約作業中の品質のための確認事項
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 請負契約では、作業の管理を発注先が行うので、発注
元が発注先の作業情況を直接管理することはできない。
これまで外部への委託では、当社の基準書や進め方に準
じた方法をとることとしていたが、相手がS社であり、
進め方について特別指示を行わなくても、これまでも特
に問題は発生していない。そこで今回も基本的にこれま
でと同様に進めることにした。

 ただ当プロジェクトでは、今回の委託する音声通話機
能に関して、当社メンバーの中に経験者が居らず、設計
や開発時点でS社に対し適切な品質を守ることに対し不
安とリスクがあるためこの部分に対して、特別の配慮が
必要と考えた。

 当社関係者でのリスク分析の結果識別されたリスクは、
次の2点である。

・プログラムの品質に加え音声特有の音量、音質、ノイ
 ズならびにエコーなど音声特有の品質の要求に対する
 リスク

・音声特有の品質にはステークフォルダーを含め多数の
 人に試用してもらい評価してもらう必要がある。評価
 に対しては多数の意見がでて収束せず、そのために納
 期遅れとなるリスク

 私は、このリスクの軽減もしくは回避策として請負作
業の期間中に品質を確認する機会を設け途中段階からチ
ェックすることが、期待通りの品質で成果物を予定通り
の時期に得るために重要と考え、次のように対策を実施
することとした。

・工程終了時の設計書等の納品物に対しM社、当社を含
 めた共同レビューを実施する。共同レビューで目標と
 する音声特有の品質に対し、評価方法を統一する。

・音声通話の品質が評価できるプログラムの作成が完了
 した段階での中間成果物を提出し、M社ならびに当社
 で音声特有の品質について評価する。評価結果はS社
 へコメントとして返し、それを織り込んで結合テスト
 仕様を作成する。

・結合テストを実施する前に、M社ならびに当社が参加
 する共同レビューでテスト項目のほかに音声通話に対
 する評価項目を作成すし、過不足がないかチェックす
 る。

・検収はM社ならびに当社で音声特有の品質に対して評
 価しそこで出たコメントは、S社を含めた検討会で3
 社が共に納得した内容についてのみS社は対応するも
 のとする。

 これらの施策により途中段階で、特有の品質評価であ
る「もう少し音量を大きく」などの調整が可能となり、
確認作業の平準化と手戻りの防止が期待できる。

 この提案をS社に示したところ次の問題点が提示された。
 S社はこの施策を実施すると、途中段階で調整作業が
発生することになり、開発進捗を阻害する。過去の経験
より調整作業が発生することは織り込んでいるが、結合
テストの終盤で実施することで作業の集中化を行い、作
業量を抑えたいという反論が出た。しかしこの音声通話
機能はシステムの最重要機能であることから、結合テス
ト後にその品質に万一のことがあれば手直しをする時間
的余裕がない。協議の結果、S社へは設計時点より音声
に対する調整機能を組み込み、途中評価は当社主体で行
う。途中で発見した調整事項に対し、関係者で重要度、
緊急度を勘案し対処の実施や実施時期について協議する
こととした。

 S社も当社のプロジェクト全体に対して責任を持って
進めているという姿勢に対し、プロジェクト進捗の範囲
内で途中段階での評価に協力することで合意することが
できた。

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(設問ウ)
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第3章	活動への評価と今後の改善策
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3.1	活動への評価
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 途中段階での品質評価作業では、計画工数に対し実施
工数が増加した。しかし、プロジェクト当初に識別して
いたリスクは顕在化せず、S社納品後のテスト工程は順
調に進んだことから品質・費用の目標を達成することが
できた。品質に対するリスク軽減への対応策が有効に機
能した結果と評価している。

 今回の請負期間中の途中段階での評価は、過去のS社
の開発経験で見落としていた、インターホン特有の音声
に関する品質特性も途中段階でつぶしていくことができ、
S社としても有意義であったとの報告である。

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3.2	今後の改善策
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 請負契約というフレームの中で、今回の依託先S社か
らはかなりの貢献と努力をいただいたといえる。このこ
とは、音声を取り扱うシステムの開発についての当社体
制の知識や経験の不足がS社の作業負荷を大きくしたと
反省している。

 今後は、新しい情報技術に関する知識は研修などを通
じて習得し、リスクとなりそうな箇所に対しては予め契
約に際して途中段階で行う進捗管理や品質管理の内容を
明示できるよう努力をしたいと考えている。





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