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(ビジネススピードの向上を目指す IT 戦略の立案について)

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(設問ア)
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1.ビジネス環境
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  A社は、年商 200億円、従業員数 300名のアクセサ
リー・雑貨メーカである。 A社の強みは製品の企画開発
力であり、その独自性を活かして業界で一定のポジショ
ンを獲得している。しかし、近年の消費低迷の影響で、
製品のライフサイクルの短期化が進み、市場へのより迅
速な対応を迫られている。

 このような状況の中 A社では、ITの活用により、自社
の強みである製品企画のサイクルを短期化し、市場への
適応力を高めるという経営戦略が掲げられた。以前より、
製品企画の担当部署から、稟議書の回付・決裁が遅い、
あるいは文書検索に非常に時間がかかる等のクレームが
報告されており、早急な改善が必要とされていた。私は
ITコンサルタントとして、このIT化を支援することと
なった。

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2.情報システムの置かれた状況
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 現在、 A社の稟議書は紙面で各部署に回付されており、
当該業務についてITによる支援はほとんどない。稟議書
は、定型フォームにワープロ入力された議案本文に大量
の資料類が添付された状態であり、部署によっては不必
要な内容が多く含まれることもある。紙面で回付するた
め時間がかかる上、量的にも問題があり、承認・決裁担
当者の手を煩わせる大きな要因となっている。

 一方、稟議書を作成する側についても、ITによる支援
はほとんどない。稟議書に添付される企画書はデータ化
され、ファイルサーバに個人別に作成されたフォルダに
保存されているが、類似資料の重複や最新版の管理が難
しいなどの問題を抱えており、これらの問題が起案者の
手を煩わせている。

 また、経理部では予算を表計算ソフトで管理している
が、予算情報の更新は稟議書が経理部を通過したときに
行われているため、各部署は、起案前に最新の予算の消
化状況を知ることができない。このため、予算不足で稟
議書が返却され、やむなく次月に起案を繰り越すという
ような行き違いも少なからず発生している。



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(設問イ)
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3.IT戦略の内容
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3−1.稟議書の電子化
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 ワークフローシステムを構築し、電子化した稟議書を
関係者に公開する。ワークフローシステムには、厳密な
ユーザ権限の管理、回付ルートの管理、電子承認、暗号
化通信などの機能を設ける。これらにより、起案と同時
に、閲覧権限を有するユーザ全員に議案が開示され、早
い段階で議案の吟味を開始することができる。また、一
定の範囲内で回付ルートをアレンジすることで、関係部
署への周知レベルの向上が期待できる。電子承認、暗号
化通信等のセキュリティには細心の注意を払い、議案の
改竄や機密事項の漏洩を防ぐ。

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3−2.文書検索機能の強化
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 文書データベースシステムを導入し、議案本文や付属
資料を体系的に管理する。システムが全文書をID管理す
る一方で、ユーザが任意に文書同士の関連付けやグルー
プ化ができるようにする。加えて、ファイル名だけでな
く文書の内容に対してもキーワード検索を可能にする。
文書の更新権限についても厳密な権限管理を行い、更新
者と版情報が一覧できるようにする。

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3−3.予算情報のリアルタイム更新
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 予算データベースシステムを構築し、予算情報と稟議
書とを関連付け、稟議書の回付状況に応じてワークフ
ローシステムから予算情報をリアルタイムに更新する。
起案段階で予約を入れ、予算の消化状況を関係者に開示
することにより、各部署に起案の優先順位の再考など事
前の調整を促す効果が期待できる。


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4.工夫した点
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4−1.アーキテクチャの選択
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  A社は、製品企画だけでなく、受発注や入出荷などの
業務についてもスピードアップを考えている。今回の
ワークフローシステムは Webベースでの構築が予定され
ているが、基幹業務系のバックエンドシステムに対する
更新はなく、既存システムの大掛かりな変更は予定され
ていない。しかしながら、 A社の将来像や、市場の状況
を考えたときに、変化に柔軟に対応できるアーキテク
チャを選択しておくことは不可欠であると考え、
 SOA(サービス指向アーキテクチャ)の考え方を採用す
ることとした。

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4−2.文書データベースシステムの選択
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 文書検索の技術の進歩は著しく、非常に多くのファイ
ル形式に対応した高機能なパッケージソフトが安価に入
手できるようになった。いくつかの候補の中から、 Web
への親和性が高く、検索技術に実績のある B社の製品を
導入することとした。

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4−3.稟議書作成の支援機能
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 稟議書は、内容が冗長になったり、項目ごとの記述内
容に一貫性を持たせにくい傾向がある。これらを解消す
るため、私は、数種のパッケージシステムを調査し、
 A社の実態を加味して、議案本文の量的制限や記載項目
の明確化等を提案した。その結果、議案本文はA4サイズ
 1枚に集約され、詳細事項は添付ファイルへと展開する
形式が具体化した。


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(設問ウ)
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5.評価
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5−1.アーキテクチャの選択
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 WSDL等のモデリング記述言語を使用したワークフロー
システムの構築は、今後業務系システムをサービス化す
る際の基礎を築くことにもなり、非常に有意義であると
考えている。

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5−2.文書データベースシステムの選択
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 期待どおりの効果を上げており選択は正しかったと考
えている。ただ、非常に多種のファイル形式を許容する
ため、ソフトウェア管理の観点から注意が必要である。
この点に関しては、今後ITガバナンスの確立を促し、シ
ステムリソースのスリム化を意識する必要があると考え
ている。

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5−3.稟議書作成の支援機能
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 今回最も効果が高かった部分であると考えている。承
認・決裁者の負担を減らすには、読みやすい量・内容の
稟議書を作成することが肝要である。現在の様式に、あ
えて改変を加え標準化したことで、作成者、承認・決裁
者双方の負担を大幅に軽減できたことは非常に大きな成
果であったと考えている。

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5−4.セキュリティ
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 稟議書を Webで公開することで、出張先からでも承認・
決裁を行うことが可能となった。しかしながら、イン
ターネット回線を使用した情報公開には、改竄・漏洩の
リスクが常につきまとう。特に、社内情報の公開は今回
が初の試みであるため、技術的なセキュリティはもとよ
り、人的なセキュリティにも十分な注意を払う必要があ
る。社外から社内情報にアクセスする可能性のある者を
中心に、セキュリティ教育を定期的に実施することを促
していきたいと考えている。





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