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 アウトドア用品製造販売業における中期経営計画の
  変更 に対応した情報システム計画の見直しについて

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(設問ア)
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1.情報システムの見直しにおける、背景となった中期
経営計画の変更内容と情報システムへの影響
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1.1 中期経営計画の変更内容
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 S社はアウトドア用品の製造と販売を行っている。現
在、売上高5%・営業利益8%の向上を経営目標として
おり、これを受け、中期経営計画として、「優良顧客の
囲い込みを目指す、顧客情報基盤整備とその活用による
顧客への最適対応」および「新規顧客の獲得を目指す、
eコマースBtoCによる販売チャネルの拡大」を推進
していた。

 この中期経営計画に基づく、情報システム計画の実施
開始から半年が経った時、大きな経営環境の変化が起こ
った。スポーツ用品販売A社が、海外の大手アウトドア
製造会社と業務提携し、アウトドア用品の販売に参入し
てくることが判明したことである。

 このため、S社からの顧客流出を防ぐために、顧客の
購買金額に応じて特典を与え、さらなる顧客ロイヤリテ
ィの向上を目指す、FSP(フリークエント・ショッ
パーズ・プログラム)の導入が決定された。加えて、A
社に先んじるために、中期経営計画の3ヶ年計画が2ヵ
年計画に短縮されることとなった。

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1.2 情報システム計画への変更
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 私は、システムアナリストとして、情報システム計画
の策定を任されていた。この計画内容は、CRMパッ
ケージソフトのコンポーネントを段階的に導入し、
a.データウェアハウス構築とその分析ツールの導入。
b.インターネットBtoCによる通信販売システム構築
であった。

 この情報システム計画への変更は、残り1.5ヶ年で
情報システム計画を完了させること、また、合わせてF
SPの導入を完了させることである。


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(設問イ)
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2.中期経営計画の変更に対する情報システム計画の見
直し案と特に重要と考え工夫した点
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2.1 情報システム計画の見直し案
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 現行の情報システム計画の期間短縮を図るためには、
関係部署との調整、既存の開発中システムを含めた優先
順位の見直し、情報システム投資予算の再検討を行う必
要があった。

 私は、最初にFSP導入に伴うシステム影響範囲の調
査をシステム部に依頼し、直ちにスケジュールの見直し
に着手した。ここで、最もネックとなるのが、インター
ネットBtoCのインフラ整備にかかる工数と期間であ
った。

 そこで、私はIDC(インターネット・データ・セン
ター)を活用し、このインフラ整備に掛かる期間と初期
費用の削減を提案した。この結果、スケジュールの短縮
については、見通しが立った。

 しかしながら、システム開発投資費用については、F
SPの導入に伴う改修費用も含め、まだまだ、予算オー
バーであり、これ以上の投資は利益を圧迫することから、
他の情報システム案件の費用を削減する必要性があった。

 私は、現在再構築中である物流システムの段階的開発
により、投資費用の削減を提案した。


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2.2 私が特に重要と考え工夫した点
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(1) 情報システム計画の期間短縮
 私は、インターネットBtoCにおけインフラ整備の
期間と費用の削減のため、IDCの活用を提案したが、
これを担当していたシステム開発部からの強い抵抗があ
った。それは、スキルアップのために、ネットワーク構
築、サーバの性能・可用性の検討、情報セキュリティへ
の対策などのインフラ整備を部員に経験させたいという
ものであった。

 そこで、私は、中期経営計画の達成のためには、短期
間での整備が絶対条件になる事、また、SLAの作成や
情報セキュリティポリシーの作成などを担当することに
より、部員のスキルアップが図れることを説明し、最終
的には、取締役も含めての会議の場にて、IDCの活用
の承認を得た。

(2) 開発中情報システムに対する対応
 現在、開発中の情報システムに物流システムの再構築
があった。ホストコンピュータからサーバシステムへの
移行、および、バックログの対応がメインである。
 私は、優先順位の見直しを実施するために、費用対効
果について、データウェアハウス構築、インターネット
BtoCとこの物流システムについて再整理し、物流シ
ステムの利用者側の管理者との意見交換の場を持った。
 そこで、私は、物流システムのサブシステムに優先順
位をつけ、段階的本番移行することを提案し、承認を得
た。

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(設問ウ)
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3.情報システム計画の見直しの評価と今後の課題
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3.1 情報システム計画の見直しに対する評価
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 現在、FSPの導入が完了し、1年以上が経過したと
ころである。この結果、売上高・営業利益共に5%の向
上が図られた。                

 これは、インターネットによる売上高の向上、および、
顧客ロイヤリティの向上によるものである。懸念された
A社への顧客流出も現在のところ、数値上は現れていな
い。また、導入されたFSPについては、20−80の
法則に従い、2割の優良顧客が8割近い売上をもたらす
ことが調査結果においても立証され、当初の目的が達成
されつつある。

 そして、情報システム計画の期間短縮は大きな命題で
あり、当初は厳しいと私も感じていたが、IDCの活用
により、スムーズにインターネットの通信販売がスター
トできた。あわせて、初期費用の削減となり、取締り役
からも大きな評価を頂いた。
 来年度においては、営業利益の向上が7%近くにのぼ
るとの見込みもあり、私が策定した情報システム計画の
変更は、成功したと言える。

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3.2 今後の課題
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 顧客データハウスの分析スキルがまだまだ課題となっ
ており、業務のあらゆる場面でデータマイニング分析が
行なえるよう、この情報リテラシーの推進を続けていき
たい。

 また、情報システムの投資効果というものは、なかな
か定量評価が難しく、この評価方法をどのようにすれば
良いかが、課題となっている。

 そこで、ITガバナンスやBSCの導入、また、業績
評価としてKPIの採用、これらの手法を取り入れて、
客観的に情報投資効果を測定し、より多くの関係者の合
意形成を得られるような仕組みの提案を、私はS社にし
ていきたいと考えている。





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