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(問題発生プロジェクトへの新たな参画について)

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(設問ア)
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1.プロジェクトの概要と成果物の機能不備や品質不良
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1.1.プロジェクトの概要
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 今回、私が途中から急遽参画したプロジェクトは、当
社の海外工場でのシステム再構築プロジェクトである。
当社は自動車部品製造業で、インドネシアに製造会社と
販売会社を保有している。今般この2社が合併すること
になり、両者の情報システムも統合されることになった。
集約拠点である製造会社のシステム課長をプロジェクト
マネージャとして、システム統合プロジェクトが開始さ
れた。プロジェクトの期間は1年間を予定しており、社
内要員だけでは不足するので、プログラム作業を外部業
者を利用する計画であった。

 今回のシステム統合では、2社のシステムを統合する
だけではなく、生産、販売、会計を連携するシステム再
構築として、現地法人の日本人のK社長のもとで実施さ
れることになった。

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1.2.参画した時点での成果物の機能不備と品質不良
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 プロジェクト開始後、6ヶ月経過した時点で、K社長
より進捗に問題があるようなので、現地調査の要請があ
り、現地に出張した。現地での5日間の調査の結果、進
捗の遅れは、外部業者が開発したプログラム自体の品質
に問題が多く結合テストの遅延が原因であった。また、
機能面の不備については、要件定義が不十分で、結合テ
ストにて現実の業務との不整合が大き過ぎると指摘され
ていた。特に生産管理、製造支持」、実績収集に関して、
要件定義が不十分で、現状の設計では、本稼動が困難で
あると判断した。

 私は、帰国後、現地の状況を海外事業統括役員に報告
した。数日後、上司を通じて、インドネシアのシステム
統合プロジェクトの巻き直しのため、プロジェクトマネ
ージャとして3ヶ月間の現地出張を指示された。

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(設問イ)
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2.プロジェクト管理上の問題点調査と対策の実施
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2.1.問題点の調査と分析
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 プロジェクトマネージャである私は、中国拠点に駐在
しているP氏をアナリストとして、今回の支援メンバに
加えることを上司に要請し、3ヶ月の期間限定で承認を
得た。私とP氏はインドネシアに3ヶ月出張しプロジェ
クトの巻き直しに着手した。

 現地に赴任すると、プロジェクトオーナである現地法
人のK社長から、外部業者も含めて関係者に、プロジェ
クトの新体制と私がプロジェクトマネージャを担当する
することが説明された。

 その後、現地のプロジェクトマネージャからの引継ぎ
としてヒアリングを実施しプロジェクトの現状を確認し
た。その結果、進捗管理、品質管理に問題が多いと判断
してこの領域については、担当者への詳細ヒアリングや
成果物であるドキュメントや各種会議の議事録について
も確認した。

 進捗管理については、外部業者のSEとPGの作業時
間しか管理しておらず、全く要をなさないものであった。
外部業者のSEに、実装機能をWBSに展開し、ガント
チャートを作成するように指示した。

 品質管理については、テストケースが事前に作成され
ておらず、統合テストにて、ユーザの不具合打ち上げに
依存するものであった。また、管理資料も、問題発見件
数と問題解決件数のみで、解決数の比率で完成度を評価
していた。私はこの管理方法の問題点を指摘し、テスト
ケースの作成を緊急課題として、業者SEに要請した。

 私とP氏で、生産、販売、会計の各領域の要件調査を
精査した結果、生産領域の完成度が低いことが判明した。
担当者に確認すると。工場での増産対応で時間が取れず
業務要件の作成に、業務に精通している実務担当者が参
加できず、現行通りの一言で、業務要件の取りまとめを
外部業者のSEに一任している状況であった。

 また、その業務要件定義書も、生産部門の責任者のレ
ビューを受けていなかった。私はこのような業務要件定
義書にて開発を進めたことが、今回の進捗不良と品質不
良につながったと判断した。

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2.2.実施した対策
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 私はプロジェクトマネージャとして、以下の2項目に
対して、具体的な対策を実施した。

(1)要件定義の不十分性
 日本本社で実績のあるRADアプローチで利用するJ
RP技法により、少数精鋭メンバで短期間で業務要件の
定義を計画した。現地法人のK社長に依頼し、生産部門
より、生産管理、製造現場の業務に精通している実務担
当者を業務要件定義メンバに各1名任命してもらった。

 今回任命された実務担当者2名とP氏と外部業者SE
及び私の5名で、3日間で生産管理の業務要件の取りま
とめを集中的に実施した。取りまとめた要件定義書は、
生産部門の責任者である生産部長と工場長に説明し、内
容を理解しただいた上、署名をいただいた。

 要件確定後も、RADアプローチの次ぎのステップで
あるJAD技法にて、外部設計を再設計して、現在開発
を進めているシステムとの差異を明確にした。

 現在開発中のシステムに改訂が必要なもの及び新規に
機能追加が必要なものをWBSに展開して、外部業者の
開発メンバに引継いだ。

(2)品質管理の不十分性
 品質の確保については、この領域の専門家であるP氏
と共同で、外部業者の開発リーダにテストシナリオとテ
ストケースの作成方法を指導した。

 テストの進捗管理指標として、未消化テスト項目数、
抽出不具合累積数、未解決不具合数を集計するように指
示した。また、私は、品質の推移をプロジェクト関係者
で見える化(共有化)ができるように、この3つの数値
をグラフ化して、毎週末に実施する進捗及び品質確認会
議にて報告するように指示した。

 テスト方法の指導の甲斐もあり、単体テストと結合テ
ストの差も明確になり、単体テストで検出されるべき不
具合が、結合テストで検出されることは少なくなった。
その結果、結合テストでは、本来の目的であるモジュー
ル間のデータ連携を中心にテストの実施が可能になった。


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(設問ウ)
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3.活動の評価と今後の課題
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3.1.活動の評価
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 今回の緊急巻き直しにて、進捗遅れを取り戻し、当初
の予定通りシステム統合を1年間で完了し、本稼動でき
た。この件に関して、現地法人のK社長及び日本本社の
海外事業統括役員から評価されている。

 今回の成功要因は、RAD技法による短期集中型の開
発による部分が大きいと考えている。

 また、品質向上においても、P氏の精力的なテスト方
法の指導にて、単体テスト、結合テストの品質が向上し
3ヶ月で本稼動が可能なレベルまで向上した。

 毎週末の定期進捗及び品質確認会議にて、各領域別に、
品質状況を数値化、グラフ化することで、各領域別に競
争心が生じ、開発担当者にモチベーションが向上したこ
とも一因と考えている。

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3.2.今後の課題
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 今回は、特命プロジェクトであり、コンテンジェンシ
ープランの発動であり、コストはある程度、度外視して
日本、中国からメンバを3ヶ月間投入した。また、現地
法人においても、現地メンバにも残業及び、一部休日出
勤を指示し、当初の費用計画を大幅に超過した。

 予算の超過を防止するために、RADアプローチでの
少数精鋭メンバで短期間で業務要件決定と外部設計を実
施するノウハウを、今後プロジェクトに活かせる文書化
を進めていきたい。

 また、今後、インドネシア以外の東南アジアの海外拠
点で順次、システム再構築が必要になってくる。海外事
業を統括する部門と共同で、東南アジアの海外拠点のシ
ステム再構築ロードマップの作成を進めたい。このロー
ドマップに従い、内部監査室が実施している海外拠点の
システム監査と連携して、計画的に、システム再構築プ
ロジェクトの監査を実施したい。プロジェクトの各
フェースで監査することにより、進捗品質、費用、リス
クをより有効的に管理できると考えている。





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