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 「分散サーバ配置の最適化」
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設問ア アウトソーシングの対象となったシステムの概
   要と運用体制及びわたしの立場
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1.システムの概要
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 当社は、国内外に生産販売拠点を持つ社員数2000名の
事務機械製造販売会社である。
 コミュニケーションツールとしてグループウェアシス
テムが全社導入されたのは、平成8年のことである。本
社地域、3工場、全国60支店にPCベースのグループウェ
アサーバが計90台設置された。
ネットワークのWAN部分については,フレームリレー
網を利用し,本社支店間は母店(中継支店)を経由して子
店(末端支店)への2段階接続であった。なお,全国に
母店は8店存在し,1母店は平均7子店を持っていた。
 導入当初は,電子メール,電子掲示板,電子会議室な
どの一般的なコミュニケーションツールとしての使い方
をされていたグループウェアツールも,ユーザ部門の自
主開発により,ワークフローシステムとしての利用をさ
れるようになった。ここに至り,当初,情報系として導
入されたグループウェアシステムも,基幹システムと同
等の信頼性が要求されるに至った。
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2.運用体制
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 各ユーザ部門内で選定されたサーバ管理者が,バック
アップなどのサーバ管理業務全般を担当していた。
 システムの全体統括は,情報システム部システム管理
グループが担当していた。なお,当システムは,EUC開
発主体ということもあり,情報システム部門内に当シス
テムの企画・開発を担当する組織が存在せず,システム
管理グループがその役割も果たす必要があった。
3.わたしの立場
 わたしは,長らく,ある事業部の部門情報システムの
統括管理者をつとめていたが,平成10年4月,情報シス
テム部門に異動となり,システム管理グループ5名のリ
ーダーに任命された。

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【設問イ】
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1.委託した業務内容と範囲
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(1)業務内容

 全国支店に設置されている分散サーバの運用管理を委
託した。

(2)範囲

 障害回復を中心とするサーバ運用管理業務全般。ただ
し,定常的バックアップ作業のみ,当社要員が実行する。

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2.アウトソーシングの目的
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(1)熟練技術者による迅速確実な障害回復

 1台1台では大きな故障率ではないが,90台もまとまる
と,毎週2〜3台のサーバがダウンしていた。その中で
も,支店でのダウンがめだっていた。
 ダウン時には,サーバ管理者がリカバリすることにな
っていたが,リカバリ作業に慣れていない管理者では処
理できず,本社からシステム部員が現地に出張すること
も,たびたびであった。
 サーバのダウン中は発注などの業務処理が不能となり,
支店事務がマヒするため,リカバリ時間の短縮が急務で
あった。そのためには,熟練技術者による迅速確実なリ
カバリが必要であった。

(2)当社サーバ管理者の負荷軽減

 ひんぱんな人事異動により,サーバ管理者のスキル喪
失が発生していた。
 サーバ管理には技術的経験を必要とする業務があるに
もかかわらず,それとは無関係に人事異動が発令され,
サーバ管理者が転出する。しかも,発令と赴任のあいだ
の期間が短く,後任者の育成に必要な時間がとれない。
中には,新しく管理者に任命されたものの,半年後に転
出というケースもあった。
 このような場合,とかく,管理者教育強化という方向
になりがちであるが,ユーザ部門にとっては,サーバ管
理は本業ではない。ユーザ部門への負担は,極力小さく
すべきである。
 管理者教育に力を入れるよりも,そもそも管理業務自
体をやめられないかとわたしは考え,アウトソーシング
を検討した。また,これは副次的な効果であるが,アウ
トソーシングにより管理者教育をする側のシステム部門
の負荷の軽減も期待できた。

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3.その目的を達成するための施策と工夫した点
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3.1施策
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(1)費用低減のため支店サーバを母店に集中配置

 アウトソーシングにより,サーバ管理者の負荷が減り,
本業に専念できることは確実であった。しかし,管理作
業のための人件費は,全体に埋没してみえにくくなって
いる反面,この不況下,社外に流出する費用については,
ことさら,審査がきびしくなっていた。
 このような状況に於いてアウトソーシングの承認を得
るためには,その費用を極力おさえる必要があった。そ
こでわたしは,各支店毎に設置されていたサーバを母店
に集中配置し,サーバ設置拠点数を減らすことで,アウ
トソーシング費用を低減することを考えた。

(2)迅速なリカバリのため母店の割り当てを変更

 アウトソーシングにより,専門技術者による迅速確実
なリカバリは期待できるものの,技術者に常駐してもら
うほどの規模ではない。必要の都度,業者のサービス拠
点から母店にきてもらうことになるが,障害発生時には,
コールしてから到着までの待ち時間が無視できない。
 そこで,わたしは,現在の母店割り当てを見直し,ア
ウトソーシング業者のサービス拠点の最寄りの支店に,
母店割り当てを変更することにした。
 必要要件としては,コールから1時間以内で到着可能
な場所としたが,それ以外に,ハードウェア保守業者か
らの時間距離,本社からの時間距離も考慮して,総合決
定した。
 最終的に8母店中5母店の変更をすることにし,残り
3母店は,従来の母店をそのまま新母店とすることにし
た。

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3.2工夫点
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(1)応答速度影響調査

 サーバを母店に集中配置することは運用管理面では好
都合であるが,LAN接続がWAN接続に変わることにより,
クライアントPCの応答速度が遅くなるのはまちがいない。
そこでわたしは,通信会社の協力を得て,応答速度に与
える影響を事前にシミュレーションした。その結果,実
用上,問題ないという結果を得た。

(2) 企画の全社オーソライズ

 わたしの案は,支店の人事にも関係することゆえ,シ
ステム部門の一存では実施できない。そこでわたしは,
前述の案を企画書にまとめ,システム部門長に提出した。
案は,最終的に経営会議の承認を受けた。

(3) 段階的に移行

 シミュレーションは,あくまでも机上の計算であり,
必ずしも計算どおりいくとはかぎらない。そこで,全国
一斉移行することはやめ,応答速度への影響を実測しな
がら,地域ブロック単位で段階的に移行することにした。

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【設問ウ】
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1. 評価
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1.1 リカバリ時間短縮
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 従来の平均2.5時間が,1.5時間に短縮できた。
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1.2 分散サーバ管理者負荷削減
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 アウトソーシング前の分散サーバ管理者は他部門の人
員のため,定量的効果は測定できない。しかし,本来の
営業業務に専念できてありがたいという発言が,グルー
プウェアの電子掲示板に寄せられたりしており,定性的
効果は充分上がっていると評価している。

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2.今後の改善点
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2.1 支店単位サーバを大規模高信頼性サーバに集約
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 今回は,設置場所の変更にとどまったが,今後,サー
バのリース期間切れの時期に合わせて,支店単位サーバ
を大規模高信頼性サーバに集約していきたい。サーバ台
数を減らすことにより,アウトソーシング費用はもとよ
り,ハードウェア費用,基本ソフト・パッケージソフト
の使用料の削減が可能となる。
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2.2 サーバを本社に集中設置
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 より高速低価格の通信手段の出現を待ち,最終的にす
べての支店サーバを本社に集中設置したい。
 これにより,システム全体の運用コスト削減を追求し
ていきたい。さらには,削減できた費用の一部を投資し
て,運用サービスの品質向上をめざしたい。
 なお,この段階ではサーバの運用管理業務のアウトソ
ーシングをとりやめる可能性もある。ある目的を達成す
るための最適手段は,時代とともに変わるものであるか
ら,その時点における最適手段を選択していきたい。


     ---以上---





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