『人民の星』 5262号4面

テレビ評 『3月10日東京大空襲 語られなかった33枚の真実』
浮かび出る米国の大虐殺

 一九四五年三月一〇日の東京大空襲では、アメリカによって一夜に一〇万人が焼き殺された。いまアメリカ支配下の日本があらたな戦争への道をおしつけられていることもあって、反米の世論の高まりのなかで、東京大空襲にたいする関心もこれまでにないという。それを反映してTBSと日本テレビという二つの民放が、あいついで長時間のドラマを製作し三月中旬に放映した。TBS系では、「シリーズ激動の昭和 三月一〇日東京大空襲 語られなかった三三枚の真実」が放送された。

空襲直後の惨状写した写真
 東京大空襲直後の惨状を、地上からうつした写真が三三枚だけ存在している。撮影したのは、警視庁写真係だった石川光陽である。アメリカ占領軍は戦後、東京大空襲という残虐行為をかくすために、被災状況の記録などを没収することに力をいれた。石川が撮影したことも察知し、ネガを没収しようとするが、石川がかくしとおしたことで三三枚の記録写真は日本にのこり、いきのこった人人とともに、東京大空襲の惨状を伝えるものとなっている。
 その写真を石川が撮影する状況を軸にドラマはくみたてられている。ドラマのなかにドキュメンタリーの手法をおりこんで、大空襲による惨状を伝えることを重視している。とくに、当時の作戦準備についてアメリカへの取材による映像記録などをつかい、生きのこった人たちの証言などをくみあわせて、東京大空襲の実際がどんなものであったかが、リアルに伝わってくる効果がうまれている。
 東京大空襲へむけてアメリカがどのような準備をしたのかという事実がしめされ、その空襲を体験した人たちの証言がおこなわれることで、この空襲が、長期にわたる準備をかさねた意図的な爆撃であり、一般市民の大量虐殺を目的としていたことがうかびあがってくる。

燃え易い地域を選んだ米国
 番組のなかでは、勤労人民の居住地域である下町こそ、もっとも燃えやすく延焼しやすい地域として、入念な検討のうえに爆撃対象として設定されていったことが、アメリカでの取材をもとにえがかれている。
 関東大震災の被害状況が、焼夷弾爆撃のために研究されていた。アメリカ国内の実験場にわざわざ日本家屋の町並みを実際に建て、畳や家具までもちこみ、焼夷弾による燃焼実験をくりかえしていた。かつての実験場を案内したアメリカ軍の広報官は、「大量破壊兵器」と焼夷弾を表現した。焼夷弾の開発や製造はアメリカ最大の石油会社が主導し、巨大な利益をあげていた。
 また大空襲を体験し、からくもいきのびた年老いた人たちが、当時の面影がわずかに残る現場にたち、「語らずには死にきれない」とインタビューにこたえて語る状況は、のこされた三三枚の写真とともに、すさまじい殺戮がおこなわれたことを思いおこさせる。アメリカによる東京をはじめとする空襲への怒りの高まりを、このドラマは反映しているのである。

アメリカ美化に導く演出も
 むろん製作の側は、糾弾のほこ先がアメリカにむかないように、事態の性質をあいまいにしたり、アメリカを美化する場面をくみこんでいる。なかでも石川がGHQによびだされ、ネガフィルムをもとめられる場面で、ケーキをだされて、「こんな豊かな国とたたかってかてるわけがなかった」という場面は、そうした意図をもっともよくあらわしている。
 石川が、写真は殺されてもアメリカにわたさない、と決意をかためて出頭したのは、残虐に非戦斗の婦人や子どもを焼きころした爆撃をゆるすことができないからである。それをケーキひとつでアメリカは豊かな国で民主的な国だ、こんなアメリカとたたかった方がわるかったのだ、とひっくりかえそうとするのだ。それは、アメリカとたたかった日本が悪い、その結果、東京大空襲もひきおこされたのだともっていく仕組みである。
 実際、番組のなかでは、無差別爆撃の元祖は日本の南京爆撃であるとえがき、もともとは日本がわるいといって、アメリカの東京大空襲の、一般の非戦斗の老若男女を焼き殺した残虐さ、非人道性、意図的に下層の勤労人民の居住地をねらいうちにし、皇居を対象から除外した緻密な計画性などを、あいまいにしていくのである。
 また東京大空襲が無差別爆撃となったのは、司令官の交替にともなうものというようにえがきたがっている。それまでは工場など軍事的施設が目標物だったとし、ルメイの個人的なゆきすぎであったかのように印象づけようとしているのである。だが、すでに敗戦必至の無防備にちかい東京など四〇あまりの都市の住民を狙い撃ちにして焼き殺す焼夷弾爆撃は、アメリカの支配層による国家戦略として計画され実行されたのである。ルメイはそれを実行した一人の司令官であった。

無差別ではなく意図的虐殺
 日本人民を焼き殺したルメイが、元首にしかおくられない勲一等旭日大綬章を日本政府から一九六四年にもらった事実は、見た人の怒りをもえあがらせ、東京をはじめとする都市への殺戮爆撃をやったアメリカはなんと残虐だったのか、ぜったいにゆるせぬとの思いをいよいよかきたてさせる。
 番組を見た人人の多くが、「これは無差別爆撃というより、計画的な大虐殺だ」「大殺戮だ」といっている。製作の側の意図をこえて、アメリカの犯罪をうきぼりにする効果となっている。番組がえがいている事実は、一〇万人を焼き殺した東京大空襲には、アメリカの支配集団の国家戦略がはっきりとつらぬいていたことを示唆(しさ)している。