『人民の星』 5851号1面 2014年1月1日付

新年社説 戦後史を画する情勢のもと独立・平和をめざす斗いを

 二〇一四年の幕があけた。
 情勢は戦後史を画する激動状況である。米日反動派と安倍政府は、戦争と貧困の売国政治をなりふりかまわずすすめているが、日本人民は、団結してたちあがれば社会を変革できるという意欲にみち、独立・民主・平和・繁栄の日本をめざし行動にたちあがっている。反修斗争を深め、労働者階級の団結、労働者を先頭にした統一戦線の力を圧倒的に強めよう。米日反動派を打倒し社会主義日本を実現する力を、飛躍的に発展させよう。


 戦後最大の帝国主義として指揮棒をふるってきたアメリカは、戦後六九年たち、衰退がとまらない。
 昨年、アメリカは「市民を弾圧している」「化学兵器をつかった」などのデマをながし、「人道」をかかげてシリア軍事侵略をやろうとしたが、世界人民の猛烈な反撃によって頓挫した。「イラクの二の舞いをするな」「イラクに大量破壊兵器はなかった」「イラク攻撃は石油資源を略奪するためだった」と、戦争阻止の行動が世界中で展開され、イギリスをはじめアメリカの同盟国やその他の国の政府がオバマ政府に加担できなくなり、オバマ政府が孤立したのである。アメリカ本国では「広島、長崎に投下した原爆は大量破壊兵器ではないのか」という糾弾の世論がまきおこった。
 アメリカは第二次世界大戦に「平和と民主主義の旗手」の看板で参戦し、対日戦争では、日本を単独占領し、日本をつぎなる侵略の基地にするために、沖縄での無差別攻撃、本土空襲、広島・長崎への原爆投下などをおこない、いく百万の人民を殺戮(さつりく)した。
 戦後も「人道」「平和」「民主主義」の看板で、朝鮮戦争、ベトナム戦争をやり、九一年を前後する時期以降は、「自由・民主・人権」の大キャンペーンで、ソ連・東欧崩壊、中国の「天安門事件」など、社会主義転覆と人民斗争弾圧にのりだした。また、湾岸戦争、ユーゴ戦争など、戦争で世界人民を抑圧・支配してきた。しかしいま、アメリカ帝国主義の「平和と民主主義」「自由・民主・人権」の仮面はひきはがされ、アメリカ帝国主義の凶悪な正体が暴露されているのである。
 米日欧は、一九七〇年代初頭から経済戦略の転換をすすめ、アメリカのレーガン、イギリスのサッチャー、日本の中曽根らは、市場原理主義・新自由主義政策を八〇年代に本格化させた。しかし、市場原理主義・新自由主義は、〇八年のリーマン・ショックで破たんし、それに反対する人民のたたかいがまきおこっている。
 市場原理主義・新自由主義は、アメリカなどの巨大独占資本が世界規模で「自由競争」し、幾億人民に失業と貧困をおしつけ、弱小資本をなぎたおし、かれらがもっと巨大化するというものであった。しかもそれは、鉄道、通信、社会福祉、医療などの国の事業も、巨大独占資本の私的利潤の市場にした。株主利益第一主義がとなえられ、金融資本への配当のため、あらゆる産業・分野で人員削減・首切り、不採算部門の切り捨て、生産移転などがすすめられ、米日欧の生産力が衰退した。
 金融・不動産バブルのあげくおこった〇八年のリーマン・ショックで、市場原理主義・新自由主義とアメリカの詐欺的な経済への怒りが爆発した。アメリカでは「富裕な一%のための政策をやめよ。九九%を貧困にするな」というスローガンで「ウォール街占拠斗争」がおこった。欧州では、緊縮財政政策に反対する、国境をこえた、労働者の団結した斗争がまきおこっている。人民の怒りは一握りの金融・独占資本にむけられている。また、経済対策・金融緩和で巨額の資金を独占救済につぎこんだため、アメリカは財政面からも弱体化した。そのツケを人民におしつけようとしたため、これに反対する斗争が強まっている。
 一方、被抑圧民族・人民のたたかいは、中近東、中南米、アジアをはじめ、アメリカを頭とする帝国主義が、第二次大戦と戦後につくった歴史的な支配・抑圧の枠組みとイデオロギーをうちやぶり、凶悪な侵略米軍を追いはらい、世界中からアメリカをたたきだすものとして発展している。


 アメリカは「アジア・太平洋重視」の戦略で覇権を再興しようと夢見ている。中国にたいして原水爆戦争を準備すること、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)で経済ブロックをつくり、中国に経済戦争をしかけることがその柱であり、「日米安保条約」のもとでこの戦略に日本をしばりつけようとしている。
 アメリカから一昨年暮れに起用された安倍・自公政府は、昨年秋の臨時国会で日本版NSC(国家安全保障会議)法とだきあわせで、「特定秘密保護法」をごり押し成立させた。同法は、なにが秘密か、だれが秘密に指定するかも秘密にし、知らないうちに拘束・投獄したり、厳罰に処することができるとするもので、思想・信条・言論・出版・結社の自由を抑圧するものである。秘密指定をアメリカがやることはあきらかである。
 アメリカは安倍政府に一貫して「集団的自衛権を行使できるようにせよ」とせまり、日本に米軍や米国の防衛を要求してきた。いまでは、米軍、米国防衛のために、中国との戦争を日本にさせようとしている。安倍晋三は「憲法改定」「自衛隊の国軍化」をとなえ、防衛大綱見直しでも政府が「陸上自衛隊の海兵隊化」「南西諸島防衛」「統合運用態勢の構築」の方針をだし、米日政府は対中戦争の軍事分担をきめる「日米防衛協力指針」の改定作業をすすめている。安倍政府、自民・公明は、日本版NSCなる戦争決定機構の設置をきめたが、アメリカは自分のもつ秘密の軍事情報で日本政府や自衛隊をいいようにあやつり、日本を戦争にひきこもうとしている。
 米日政府の戦争策動は、アメリカ巨大独占資本の、中国・アジア・太平洋市場の独占的支配の野望と、日本売国独占資本の同市場への権益拡大の野望からきている。
 しかし、「特定秘密保護法」にたいして全国で、学者の会、日本弁護士連合会、刑法学会、歴史学会、労働団体その他多くの団体や人人が、戦争につながると暴露し、たたかいをすすめている。第二次大戦を経験した世代は、戦前・戦中の軍機法や治安維持法による人民弾圧と戦争の経験を思いおこし、同法が戦争につながると語り、戦争阻止の大きな力になっている。知識人など多くの人が、「特定秘密保護法」は、アメリカの戦争のためだと暴露している。各地での「原爆と戦争展」運動、はぐるま座の『動けば雷電の如く』『峠三吉・原爆展物語』公演、原爆の体験をひきつぐことを基礎にした人民教育運動も、二度と戦争をおこさせず、平和で豊かな社会をつくろうという熱烈な人民の盛り上がりのなかでくりひろげられ、人民運動を激励している。
 名護市辺野古での新米軍基地建設の計画や、極東最大の基地にしようという岩国基地の増強も、日本全土を基地にして中国と原水爆戦争をやるというアメリカの野望によるもので、「特定秘密保護法」は、大増強される在日米軍の防衛、米軍と自衛隊との共同作戦、行政や学校、交通・通信、家庭などの戦時動員のためである。安倍政府はアメリカの言いなりになり、ファッショ的なやり方で「特定秘密保護法」を成立させたが、人民の民族的怒りと戦争阻止、社会変革の力はいちだんと強まっている。
 安倍政府による物価吊り上げ、重税、社会保障の切り捨て、TPPをテコにした規制緩和・産業再編にたいする斗争も強まっている。
 安倍政府は円安政策で、石油、小麦などの輸入品価格をつりあげ、石油製品、燃料、電気・ガス、小麦粉など、独占価格の吊り上げに道をひらいた。今年四月からは消費税率を八%に、一五年一〇月からは一〇%にあげ、増税を糸口に電気・ガス、バス・鉄道、食料品などの一斉値上げ・大衆収奪をやろうとしている。そのうえ、財政出動で独占資本に市場をつくり、人民には年金支給額の引下げ、支給年齢の繰り延べ、七〇歳〜七四歳の医療費窓口負担の二割への引上げ、軽自動車税の引上げなどの収奪策をだしている。労働者、勤労人民の生活はひっ迫し、「アベノミクスは金持ちをもっと金持ちにし、貧乏人をもっと貧乏人にするものだ」と怒りがひろがっている。
 安倍政府はまた、TPPで関税ゼロ、非関税障壁の廃止など、市場原理主義・新自由主義を使ってアメリカへの市場開放をすすめようとしている。日本独立の経済基盤を破壊し、アメリカによる日本の植民地的支配に犬馬の労をとるものである。
 安倍政府はTPPの先どり実施として、エネルギー分野で原発再稼働をすすめ、労働分野では、解雇自由化や非正規労働の拡大、低賃金化、過密労働、失業拡大をもっとすすめようとしている。農業分野では減反廃止・自由生産・自由売買と補助金減額で、零細農家をなぎたおし、アメリカ農産物の大量輸入と大資本の農地支配に道をひらこうとしている。医療分野では、混合診療を拡大して国民皆保険制度をくずし、アメリカ民間保険等に市場を提供しようとしている。教育分野ではアメリカ型教育の導入をたくらんでいる。安倍晋三が「日本を世界で一番投資しやすい国にする」というように、アメリカは安倍政府をつかい、スクラップ・アンド・ビルドの産業再編をすすめさせ、日本属国化政策を段階を画してやろうとしているのである。
 だが、TPPや原発再稼働に反対する世論はつよい。福島、宮城、岩手など政府の復興サボと、東電・国・アメリカGEの責任を追及する声がひろがっている。漁民を中心に、生産手段を共有し、共同労働で大震災からの復興をかちとる努力がかさねられている。労働法制の改悪に反対する声がひろがっている。減反・補助金廃止に、「日本農業をつぶすな」と政府への憤激がひろがり、集団の力で農業振興・後継者育成・食料自給態勢を確立しようという意識がつよまっている。混合診療の拡大や国民皆保険制度をくずすことに反対する医師、看護師、薬剤師の斗争がひろがっている。
 そのなかで、私第一でなくみんなのためにという思想、生産振興の要求、生産手段を共有し、共同の力で生産を、などの社会主義的イデオロギーがひろがっている。そして、明治維新革命の壮挙にふれて人民がふるいたち、各地で、六〇年「安保」斗争や沖縄での復帰斗争の経験がよびおこされ、「団結してたちあがれば、社会と政治をかえられる」という機運が高まっている。


 アメリカ帝国主義が日本売国独占資本をしたがえて日本を植民地的に支配し、米日独占資本が日本人民を搾取・収奪・抑圧・支配していることが日本人民の苦難の根源である。
 戦後日本を占領したアメリカ帝国主義は、日本の国家機構をかれらのつごうのよいものにかえ、日本独占資本を従属させ、日本人民を支配しはじめた。在日米軍を支配の根幹におき、自衛隊を指揮下におき、日本の警察も裁判所も議会制度もアメリカの支配の機関にしている。
 アメリカは自民、公明、民主、社民、修正主義などのブルジョア政党をかれらの代理人、手先として育成し、「民主主義」の欺瞞をふりまいてきた。だが、どのブルジョア政党も選挙での人民への公約はすぐやぶり、アメリカや日本売国独占資本の要求を実行している。アメリカが戦後つくった議会制民主主義は人民をだます道具であり、日本は米日独占資本が独裁する国家であることが暴露されている。
 この間、「原爆と戦争展」運動・原水禁運動を中心に、第二次大戦と戦後の社会の真実をあきらかにした人民運動が大きく発展し、人民に奉仕する思想で諸戦線の運動が発展してきた。米日独占資本の凶悪な独裁と搾取・戦争のたくらみをうちやぶる力は、労働者階級を中心にした農漁民、中小零細商工業者、青年、婦人、教師、知識人・文化人をはじめ広範な勤労人民の統一戦線である。「共通の敵にたいする共同の斗争」の路線こそ人民団結の勝利の路線である。アメリカと日本売国独占資本がふりまいてきた敗北主義、奴隷主義、個人主義、ブルジョア民主主義をうちやぶり、労働者階級の思想である「みんなのために」「みんなとともに」「国の将来、民族の未来のために」の思想をさらにひろげよう。
 日本人民の当面するもっとも重要な任務は、アメリカ帝国主義を日本から駆逐し、日本売国独占資本をうちたおし、独立・民主・平和・繁栄の社会主義日本を樹立することである。
 日本の革命を発展させるためには現代修正主義を一掃し、マルクス主義・福田路線の骨格をうちたてなければならない。現代修正主義は、民族利己主義から、アメリカ帝国主義のブルジョア民主主義に屈服してうまれたものである。福田路線の骨格再建のたたかいは、内部に浸透してきた修正主義と斗争することによって発展してきた。傲慢な支配階級の思想、戦略観点もなければ実際から出発もしない活動、社民追随や号令主義、空中遊泳などを解決し、党の骨格を再建することは重要課題である。日本共産党(左派)は、第四回大会いらい二〇年間の総括運動をとおして、反修斗争をさらに発展させ、革命の戦略路線を実際とかたくむすびつけること、大衆こそ主人公という世界観、人民に奉仕する思想、大衆路線の実行を中心に福田路線の骨格を再建し、人民斗争の発展に献身することを誓い年頭の挨拶としたい。