『人民の星』 5855号1面 2014年1月18日付

大竹市沖合 自衛艦と漁船が衝突 演習強化で自己ふえる

 広島県大竹市の阿多田島沖で一五日午前八時ころ、海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」(満水排水量一万四〇〇〇d、写真)が小型釣り船と衝突し、釣り船は転覆した。同船にのっていた四人が海になげだされ、間もなく救助されたものの船長と釣り客の二人が死亡した。
 事故のおきた現場海域は、快晴で、視界は良好で波も静かだった。漁業関係者からは「けさは霧がなく快晴で波もおだやか。この周辺は自衛艦がよく通るが、自衛艦は山のように大きく、近づけばすぐにわかる。なぜ衝突してしまったのか」との声があがっている。
 「おおすみ」は海上自衛隊呉基地の所属で、定期点検のために岡山県玉野市の三井造船玉野事業所にむかっていた。
 原因はまだあきらかになっていないが、最近、自衛艦と他船との衝突事故がめだつ。
 約四カ月前の昨年九月一日には、海自・呉基地所属の掃海母艦「ぶんご」(六九〇〇d)が、山口県上関町八島の沖合で愛媛県の下灘漁協に所属する漁船(四・四d)と接触事故をおこした。
 同六月一一日には海上自衛隊の練習艦「しまゆき」(四二〇〇d)が、関門海峡の六連島(むつれじま)沖合でパナマ船籍の自動車運搬船(二万六六五一d)と接近し、民間の貨物船と衝突しそうになった。関門航路は法律で原則「右側航行」がもとめられるが、「しまゆき」は航路の右側ではなく中央付近を航行していた。
 自衛艦と民間船舶の死者をともなう衝突事故では、一九八八年七月、神奈川県横須賀沖で、潜水艦「なだしお」が大型釣り船「第一富士丸」に衝突し、乗客ら三〇人が死亡した事故がある。二〇〇八年二月には、千葉県房総半島沖でイージス艦「あたご」が漁船「清徳丸」と衝突し、父子二人が死亡した。
 また、〇九年一〇月には関門海峡で、海自・護衛艦「くらま」(六八〇〇d)が「韓国」籍のコンテナ船「カリナスター」(七四〇〇d)と衝突し両船で火災が発生、「くらま」の艦首部分は火災によって大きく破損した。
 昨年五月には、沖縄県の先島諸島近海で操業中の宮崎、鹿児島のマグロ漁船のはえ縄を、演習中の米海軍と海上自衛隊の艦艇があいついで切断する事件をひきおこしている。
 衝突事件にしろ、はえ縄切断事件にしろ、最新のレーダーなどをそなえた自衛艦は、米軍との戦争演習をつよめており、「そこのけ、そこのけ軍艦が通る」と、わがもの顔に航行しているため、事故があとをたたない。
 岩国市の漁民 「おおすみ」は空母のような、そばにいくと見上げるような大きな軍艦で、水陸両用のホーバークラフト(エアクッション型上陸用舟艇)をつんでいる。以前は岩国基地沖合で訓練していた。「おおすみ」の後の扉がひらくとホーバークラフトがすべりだし、海上での訓練をすませるとすいこまれるように尻から「おおすみ」の艦内にはいっていた。尖閣諸島の問題などで水陸両用の作戦が強められているので訓練も強化されているのだろう。あぶないことだ。