『人民の星』 5864号4面 2014年2月19日付

元空幕長・田母神の売国言動 星条旗掲げ岩国で行進

 元航空幕僚長の田母神俊雄が都知事選に出馬し六〇万票あまりを得て第四位にくいこんだと、商業マスコミがもてはやしている。それはかれらの操作の結果でもあった。選挙がはじまる前から、田母神を「有力候補の一人」にまつりあげ、得票を誘導したのだ。商業マスコミがもちあげるのは、かれが安倍政府の戦争の道をはききよめ、アメリカの企む戦争に日本を動員する世論作りをはかっているからである。
 田母神のこれまでの言動からみてみよう。

原爆犠牲者いたむ人人攻撃
 田母神は好戦的な主張をふりまくだけでなく、アメリカの原爆投下を擁護し、被爆者を攻撃してきた。かれは〇九年に、わざわざ広島にのりこんで「日本は核武装すべきだ」と戦争熱をあおる講演をした。そればかりか大阪や宮崎で、西村真悟や中山成彬の選挙応援演説をするなかで、八月六日の平和記念式典は「被爆者も、被爆者の家族もほとんどいない」「左翼の大会なんです」と毒づいた。アメリカから原爆をなげつけられ、無残に犠牲となった人たちをいたむ行動を、鉄面皮に攻撃した。こうした言動・論調は、原爆投下を正当化してきたアメリカの支配層の考え方である。
 また、在日米軍の再編をいそぐアメリカの要求を、安倍政府はすべて受け入れているが、田母神はこの面でも懸命にささえている。二〇一二年九月には、岩国市役所前で「オスプレイ配備推進」の集会を幸福実現党といっしょになってやり、星条旗をかかげて行進し、アメリカのために犬馬の労をとる姿をしめした。
 おなじ年の一〇月には在日米軍兵士による集団強姦事件が発生したが、田母神は自身のツイッターで、おそった米兵を糾弾するのではなく、おそわれた婦人や少女を非難した。「この事件が起きたのは朝の四時だそうです。平成七年の女子高生暴行事件も朝の四時だったそうです。朝の四時ごろに街中をうろうろしている女性や女子高生は何をやっていたのでしょう」と書いている。沖縄米兵の少女暴行事件は朝四時ではなく夜八時であり、女子高生ではなく女子小学生であった。ここにも、米兵を擁護するためには事実もねじまげるという、卑屈な奴隷根性があらわれている。

尖閣問題で反中国をあおる
 「尖閣諸島」問題でも反中国緊張激化政策の先頭にたっている。二〇一二年には尖閣列島戦時遭難者の洋上慰霊祭を、田母神が会長である「頑張れ日本! 全国行動委員会」が他の右翼団体と合同でおこない、参加者の一部は尖閣諸島に上陸した。地元の尖閣列島遭難者遺族会は「遺族会の気持ちをふみにじり、慰霊祭を利用して上陸したとしか思えない」と表明している。
 原発問題では、一一年に都内でひらかれた『福島支援シンポジウム』で「危ない危ないと言われるが、実際そんなに福島の放射線は危なくない」といい、「私は原発推進派。一流の国を目指す上で原発は必要」と主張した。事故が起こったあともアメリカ・GE製の原発は、危なくないと擁護しているのである。
 田母神は多くの本を書いているが、その論調をみると、一つには「我が国が侵略国家だったというのはぬれぎぬだ」として、中国や朝鮮を植民地化したことや第二次世界大戦での日本支配階級の戦争行為を正当化し、二つには自衛隊が集団的自衛権を行使できるようにせよと主張している。かつての歴史の恥知らずな正当化は、「集団的自衛権の行使」ができるようにして、アメリカによるあらたな戦争の体制をつくることにある。
 〇九年に、山口県下関市でひらかれた「日本会議山口・下関支部」の設立記念集会で講演した田母神は、来賓として挨拶した元首相の安倍晋三と相呼応して、「安保」のもとでの軍事力増強をさけびたてた。
 田母神は、アメリカの占領で日本社会の破壊がはじまったとならべたてたが、アメリカの支配反対とはひとこともいわず、ぎゃくにアメリカの支配を受け入れてすすむ以外にないと展開した。かれは「国際社会では軍事力がなければだめだ。“ふざけたことをいったらぶんなぐるぞ”という構えが基本なのだ」とまくしたてた。アメリカに好き勝手にやられても、つき従っていく以外にないという論法であった。

「米国守る牙」を持てと主張
 その結論は、アメリカにまもられるだけの「安保」ではよくない、アメリカを守る牙をもて、ということだった。田母神の「国防論」とは、アメリカの戦争のために自衛隊員は死ねといえば、正体がばれるので、集団的自衛権を行使できるようにして「安保」を双務化し自衛隊の強化を、といいかえているのである。
 田母神は、戦後の日本はアメリカにまもってもらって繁栄したと恥ずかしげもなく書きつらね、「アメリカなしでは抑止力を保持できない日本は、いざというときにアメリカの言うことを聞かざるを得ない状態にある」と、売国屈従の奴隷根性をやっきとなってふりまいてきた。
 だが明治維新のとき、われわれの父祖たちは、アメリカが巨大な艦隊で徳川幕府を威圧して不平等条約をおしつけてきたことに真っ向から反対し、断固として植民地化をはねかえし、独立をまもって倒幕をなしとげた。このような誇りある歴史を日本人民はもっている。
 在日米軍の駐留に屈して、それを美化しさえする田母神や安倍政府の戦争政治の道を日本人民はけっしてゆるさず、平和をまもり基地を撤去し独立をかちとる方向をすすんでいる。