『人民の星』 5865号1面 2014年2月22日付

安倍政府 暴走する売国戦争政治 人民の猛反発で孤立破たんへ

 第二次安倍政府が発足して一年余、安倍政府への批判は内外でふきだしている。戦争体験者をはじめ広範な人人のなかでは、沖縄・辺野古米軍新基地建設や特定秘密保護法など、安倍政府による戦争の動きにたいして、「アメリカ言いなり」「戦争を知らない政治家」という怒りの声がどこからもだされている。「アベノミクス」による「景気回復」をさわいでいるが、「いったいどこのことか」という怒りの声もいたるところで聞かれる。高齢者には年金の削減のうえ消費税率引上げをおしつけ、大企業には減税をおこなうという動きに怒りは倍加している。首相・安倍晋三が世論に耳をかたむけず、独善的にことをすすめることへの批判も強い。人民の世論とたたかいで、退陣・「過去の人」になっていた安倍をかつぎだし、貧困と戦争の親米売国政治にあたらせているのはアメリカ帝国主義であり、売国独占資本である。しかし、安倍政府の破たんは時間の問題となっている。

化けの皮はがれるアベノミクス
 一年たってあきらかなことは、安倍政府がうちあげた「アベノミクス」による「景気回復」は、大ペテンだったということである。
 鳴り物入りで黒田を日銀総裁にすえ、「異次元の金融緩和」をぶちあげた。しかし、日銀の市中国債買い取りを桁外れにすすめ、円紙幣を銀行に湯水のようにひきわたすという超金融緩和政策は、別に「景気回復」などもたらさなかった。銀行は投資するところがないため、手にした円紙幣の多くを日銀にまたあずけている。
 カネが市中にたりないため景気が停滞しているというのが安倍晋三や顧問のイエール大学名誉教授の浜田宏一らの言い分だったが、そんなことはウソで市中にカネをまわそうにも投資先がないことが問題であることが表面化してしまった。「異次元の金融緩和」というのは、世論操作だった。
 たしかに株価はあがったが、アメリカ資本が買入れておこっているもので、投機的要素のつよい一種の株バブルである。国内生産は停滞しているのに、アメリカ投機集団に投機の場と利益を提供していることがあきらかになっている。その株価も今年にはいって下落をつづけている。
 円安誘導も、輸出産業はもうけているが、石油、小麦などの輸入品価格はつりあがり、独占資本は真っ先にそれを価格に転嫁し、中小零細企業と労働者、勤労者にすべておしかぶせてもうけていることがあきらかになっている。
 しかも、東京証券取引所に上場している大企業は昨年三月から一二月までの収益で空前の利益をあげているというが、そのぼろ儲けは、労働者の首を切り、非正規化をすすめ、労働者の賃金を大幅にひきさげた結果であることがあきらかになっている。この一年間で労働者の平均賃金はまたさがっている。

ブレーンに戦争狂 安倍も靖国参拝を強行
 安倍政府のでたらめさは政治でもあきらかになってきた。
 安倍晋三の信条は「憲法改悪」であり、「自衛隊の国防軍化」である。かつての日本帝国主義の戦争の礼賛である。しかし、露骨な憲法改悪の動きは猛烈な批判をうけているため、突如として靖国神社参拝をやったり、おなじ時期に、「アベノミクス」による「景気回復」を隠れ蓑にしながら、教育の反動化をすすめ、NHKの会長には籾井勝人をすえて、慰安婦問題はどこでもあったといわせ、経営委員に名をつらねている百田直樹は名うての右翼作家で、長谷川三千子も狂信的な天皇崇拝者という具合で、古色蒼然とした戦争狂をそろえた。
 しかしこれも内外から批判がまきおこり、日本中が「戦争を知らない安倍晋三はなにをしでかすかわからない」「アメリカ言いなりだ」「安倍をひきずりおろさなければ」と批判の渦となって、安倍政府は孤立している。
 経済政策も戦争政治もゆきづまっているのである。このため安倍政府の破綻は時間の問題になっている。
 第一次安倍政府は、二〇〇六年九月、親米売国で名高い小泉政府の政治をひきつぐために起用された。だが翌年七月の参議院選挙で自民党は惨敗し、参議院第一党の座からころげおちた。安倍晋三は二カ月後、首相辞任となった。
 一二年一二月の総選挙で自民党は第一党になったが、自民党が与党になったといっても、有権者の二割にもみたない圧倒的少数であった。そのなかで安倍がいろいろな事情で起用されたが、その理由は、アメリカに忠実であり、アメリカの戦争政策にうってつけであり、アメリカに日本市場を提供する点でも忠実だということにほかならなかった。
 ところが、安倍晋三は「戦後レジームからの脱却」というふれこみの、名うての右翼主義であり、かつての日本帝国主義の戦争の礼賛者である。それがアメリカ隷属を基本として起用された。こうした輩(やから)が長続きするはずはない。
 「アメリカにむかう弾道ミサイルを迎撃できないか」とか、憲法改悪をやる、かつての戦争を礼賛するというような輩は日本人民はゆるさないのである。中国、「韓国」との関係が悪化するのを承知で靖国神社参拝をごり押しするなど、外交もでたらめで緊張を激化させるばかりの輩は批判されないわけはない。

米国が安倍を起用 日本を食い物にし戦争へ
 安倍晋三を起用したのはアメリカである。
 安倍が首相就任直後の一三年二月に日米首脳会談のために訪米したさい、元国務副長官アーミテージや元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長マイケル・グリーンらがすくう米戦略国際問題研究所(CSIS)をおとずれて講演し、アーミテージやグリーンの名前をあげ、「ありがとうございます。日本はもどってきた。わたしはもどってきた」と媚びを売った。
 「日本はもどってきた」というのは、〇七年にグリーンが書いた対日政策についての論文「Japan is back(日本はもどってきた)」を借用したもので、安倍が総裁になってからおこなった一二年一二月の総選挙のスローガンは「日本をとりもどす」だった。
 特定秘密保護法制定は、戦争遂行機関の日本版NSC(国家安全保障会議)創設と一体だったが、それは、オバマ政府の国家安全保障会議の指揮のもとに動くものである。CSISのグリーンは、第二次安倍政府発足後、CIA(アメリカ中央情報局)の協力者である前朝日新聞主筆・船橋洋一が主宰するシンクタンク「日本再建イニシアチブ」に、前国務次官補(東アジア・太平洋担当)カート・キャンベルとともに参加し、日本版NSCをどう設計し機能させていくか検討している。
 「異次元の金融緩和」など安倍政府の経済政策「アベノミクス」もアメリカ直結で、「異次元の金融緩和」は内閣参与となった米イエール大・浜田宏一の提案だった。しかもそれは、米ブルジョア経済学者クルーグマンの受け売りだった。
 経済ブレーンは、小泉政府、第一次安倍政府の人脈をうけつぎ、小泉政府のもとで規制改革・構造改革の先頭にたった慶大教授・竹中平蔵も国家戦略特区諮問会議の議員である。
 国家戦略特区諮問会議をはじめ経済関連の諮問会議には財界の頭目どもが顔をならべているが、アメリカとつながっている。経済財政諮問会議には、財界から日本経団連副会長である東芝副会長・佐々木則夫がはいっている。佐々木は、アメリカの原発をはじめとする電機メーカー・ウエスティングハウスの買収=救済にたずさわった 経験をもっている。
 そして、それらすべては、経済的には外国人持株比率が二八%(二〇一二年)にまでなっているように、日本の独占大企業の株の取得を拡大しているアメリカ独占資本の意をうけているのである。
 安倍政府はますますアメリカと日本売国独占資本のための代理人であることをあきらかにしており、人民の猛反発をさけがたいものにしている。すでに安倍の貧困と戦争の政治にたいするたたかいがどこでもおこっており、安倍政府の終わりがはじまっている。