『人民の星』 5866号1面 2014年2月25日付

集団的自衛権は戦争の道 アメリカが要求 中国敵視策と一体

 首相・安倍晋三は、アメリカと一体となって戦争をすすめるために、憲法の解釈を勝手にかえ、「集団的自衛権の行使」ができるようにしようと必死になっている。だが、多くの人は「集団的自衛権というが、アメリカが日本を盾にして戦争しようとするものだ」「安倍首相は憲法改定とか国防軍創設とかいって危険な方向にすすんでいる」と、戦争阻止の意志を強めている。安倍政府はいまや戦争狂となっているが、こうした動きは、絶対に成功することはできない。

戦争体験者は絶対反対
 安倍政府が「集団的自衛権」の行使を急ぐのは、アメリカが尻をたたいているからである。
 アメリカ戦略国際問題研究所幹部で、元国務副長官アーミテージ、マイケル・グリーンなど、アメリカの対日政策者は、何年も前から「集団的自衛権を行使できるようにせよ」と日本政府の尻をたたいてきた。アーミテージはそのために「憲法をかえよ」ともちだしたこともある。
 アメリカと日本政府はこれまで、日本をまもるために「安保条約」で日本に米軍を置いているといってきた。しかしいまでは、「アメリカと米軍をまもるために日本は軍事的な分担をすべき」といいだしている。
 安倍の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」の座長代理である北岡伸一(国際大学学長)が、二一日に、四月提出予定の報告書の骨子をあきらかにしたが、そこでは「集団的自衛権の行使」について、つぎのようにあげている。
 @日本と密接な関係にある国が不当な攻撃をうけた場合。
 A放置すれば日本の安全に大きな影響がおよぶ場合。
 B攻撃をうけた国から明示的に要請があった場合。
 C第三国の領海・領土を通過するには許可が必要。
 D首相が総合的に判断して国会の承認をうける場合。
 具体的に同懇談会やっている事例検討はつぎのようなものである。
 @周辺戦時における「攻撃国」(中国や北朝鮮を想定)への船舶検査(臨検)、参戦した米軍が攻撃をうけた場合の支援(アメリカの支援国をふくめ)、また国連の武力行使の決定があった場合の関連活動への参加。
 A日本が原油を輸入に依存しているため、重要な海峡などで戦争がおこり機雷封鎖された場合の自衛隊による掃海活動。つまり、ペルシャ湾での機雷掃海など。
 「集団的自衛権」という名で、地球上どこでもアメリカ、米軍と一体になって戦争をするのである。特定秘密保護法の制定も日本版NSC(国家安全保障会議)の設置も、第二次大戦の肯定や安倍の靖国神社参拝、自衛隊の海兵隊化もそのためにおこなわれている。自民党などは水面下で「敵基地攻撃能力の整備」まで検討している。

隣国関係悪化も米国の意向
 「集団的自衛権」を行使できるようにする目的の一つは、日中戦争をひきおこすことである。アメリカが日中戦争をあおり、安倍政府がその線で動いている。
 安倍政府が尖閣諸島を紛争化するのも、アメリカ政府がずっと「“安保条約”の適用対象である」とあおってきた経緯がある。
 安倍晋三が第二次大戦の犠牲者を心から悼むために靖国神社にいったというのはウソである。中国や「韓国」が怒ることを承知で、また、三二〇万人を殺した戦争指導部の一部である東条英機ら戦犯がまつられていることも承知で、安倍晋三は首相として靖国神社に参拝した。
 安倍晋三の取り巻き連中が、南京大虐殺がなかったとか、従軍慰安婦はどこでもあったのだと居直って、中国や「韓国」との関係険悪化に拍車をかけているのも、安倍政府が、アメリカの意向を見ながらやっていることである。そうでなければ隣国との関係をこれほど悪化させることはありえない。戦争がかれらの目的である。

戦争になれば人民が犠牲に
 しかし、 かつての戦争で三二〇万人もの命をうばわれた日本人民は、 安倍政府の戦争政治を許すものではない。 その力はますます大きくなっている。
 ある戦争体験者は「 安倍首相は、 尖閣諸島や竹島の領有権でことさら騒いだり、 靖国神社への参拝を強行したりして、 中国や 韓国 が反発するようなことをやっている。 人人が反対したのに秘密保護法も強行成立させた。 集団的自衛権の行使に力をいれるのは、 アメリカとの同盟関係をつよめてかつてのように日本を戦争できる国にしようとするつもりではないか。 隣国とはもっと穏やかに問題を解決しないといけない。 二度と戦争する国にしてはいけない」 と語っている。
 山口県の年配婦人はつぎのように語っている。
  「子どものころ明石に疎開していて空襲を体験している。 近所の人が防空壕でやられ、 黒こげになったのを見ている。 そのことが目に焼きついており、 いまでも戦争の写真を見るのもおそろしいし、 基地など近づきたくもない。 戦争中は、 みな 万歳、 万歳 でおくりだしたが、 肉親をだれが戦争によろこんでおくりだすものか。 いとこが戦争中、 輸送船で南方におくられる途中に撃沈され死んでいる。 白木の箱で帰ってきたが、 遺骨などはいっていなかった。
 安倍さんは靖国神社に参拝して問題になったが、 ほんとうに戦争で犠牲になった人のことを思ってではないだろう。 戦争で犠牲になった人たちの思いは、 もう二度と戦争をおこしてならない、 自分たちのようなことになる若者をつくってはならないということではないか。 安倍さんは戦争のことがまったくわかっていない。 安倍さんがやっていることを見ていると、 戦争で死んでいった人たちから殺されるのではないか。
 沖縄の名護市長選挙で、 政府は知事を力でおさえつけたり、 カネでつろうとしたが、 そんなことをやったら市民がおこるのはあたりまえだ 」
 日本人民はかつての戦争の経験をわすれないし、 その経験をひきつぎ、 全国的な団結をかちとって戦争を阻止するものである。