『人民の星』 5872号1面 2014年3月22日付
戦争政治打ち破ろう 行詰る安倍政府 河野談話見直し修正
安倍政府は、昨年暮れに靖国神社参拝を強引におこない、あわせて、NHKの会長に自分の息のかかった籾井勝人をすえ、経営委員に百田尚樹や長谷川三千子など右翼勢力を起用し、「従軍慰安婦はどこの国でもやっていたことで日本だけが非難されるのはおかしい」「特定秘密保護法など政府がきめたことはしたがう」「極東軍事裁判は勝者の裁判だ」など、かつて日本帝国主義がおこなった侵略戦争の美化につとめてきたが、一四日の参議院予算委員会で安倍は、従軍慰安婦問題について「おわびと反省のきもち」を表明した九三年の「河野洋平(当時の官房長官)談話について、「見直すことは考えていない」と答弁し、これまでの政治姿勢の軌道修正をはかった。
もちろん、安倍政府の方向は、内外の矛盾を調整し、アメリカの指揮で戦争の道をすすむというものである。しかし、安倍政府の政治の破たんが随所にあらわれはじめている。大衆運動をひろげ、安倍政府をひきずりおろすことが必要である。
人民の怒り拡大
安倍政府がここにきて軌道修正をすすめはじめているのは、人民の怒りがひろがっているからである。安倍晋三は「憲法改定」「自衛隊の国防軍化」を露骨にかかげて登場してきたが、「特定秘密保護法」は、なにが秘密にされているかもわからないのに拘束されるという戦前の治安維持法や軍機法とおなじだという批判の声が戦争体験者のなかからあげられ、「戦争を知らない者がなにをいうのか」「安倍をひきずりおろすべきだ」という憤りがあらゆるところにひろがっている。
ことに「集団的自衛権の行使容認」をしゃにむにすすめようとする安倍は、憲法の解釈をかえることで「集団的自衛権の行使容認ができる」といい、「最終的な判断は首相であるわたしがやる」と、安倍の一存で、憲法が勝手にかえられると吹聴したため、「安倍は戦争をやろうとしている」「安倍はアメリカいいなりだ」という憤りがふきだしている。
安倍は国会も無視し、自分で勝手に憲法解釈をかえられるといっているが、議会制民主主義も否定する安倍独裁政治そのものである。日本人民はそうした独裁政治と戦争の道をゆるさない。原爆や戦争を体験した人人はその体験を語りつぎ、アメリカの指示で戦争の道をひたはしる安倍政府をうちたおそうという意志をつよめている。
同盟関係もヒビ
安倍らが軌道修正をはかるもう一つの理由は、「韓国」との関係が緊張し、アメリカがのぞむ米日「韓」軍事同盟ががたついているためである。「韓国」の朴政府は安倍らの強引な戦争美化・かつての朝鮮半島植民地支配の美化に反発している。このためアメリカは必死に安倍晋三に軌道修正を要求している。
昨年暮れには安倍の靖国神社参拝にたいして、アメリカ大使館が「失望した」と声明までだしたが、それにたいして安倍の側近が「アメリカが失望したといったことに失望した」と反論する事態になり、元国務副長官アーミテージが「靖国参拝は中国を利する」とクギをさすまでになった。
一四日には安倍が参議院予算委員会で「韓国」との修復をはかる発言をおこなったが、「朝日」は一六日には、対日政策者の中心である元国防次官補ジョセフ・ナイを登場させ、ナイは発言のなかで、集団的自衛権にむけて憲法解釈の変更について、「(その)政策には反対しないが、ナショナリズムのパッケージで包装することに反対している」と明言し、安倍に変更を指示した。
こうして安倍らは軌道修正をはじめているが、それは安倍政治の破たんがはじまっているということである。安倍は調子にのって暴走してきたが、行き詰まりが顕著になっている。
だがそれは戦争準備をやめるということではない。ナイは露骨に「集団的自衛権の行使は支持する」といっている。しかも、安倍政府は憲法改悪をまだぞろもちだしている。それは米軍とともに世界中で戦争をするというものである。アメリカと日本の支配階級が第二次大戦でなにをしたか、その犯罪を日本人民の経験のなかからもっとあきらかにし、戦争阻止の力をつよめ、安倍政府の戦争政治を断固うちやぶろう。