『人民の星』 5877号1面 2014年4月5日付

消費税一銭も払わぬ大企業 輸出企業に戻し金 総額2兆5千億円

 一日から消費税が八%にひきあげられた。買い物にいって多くの人人がその重さを実感し、生活の先行きへの不安をつのらせている一方で、引上げをよろこんでいるものがごく一部にいる。トヨタやパナソニックなど輸出独占資本である。消費税には「輸出戻し制度」というものがあって、かれらは消費税を一円も国におさめてないどころか、逆に二兆五〇〇〇億円も国からもらっている。消費税をあげればその額もふえ、ますます儲かる仕組みである。消費税が人民から収奪して独占資本につぎこむ悪税の典型であることを象徴するものである。消費税は廃止させる以外にない。

税率が上がるほど還付増
 消費税にかんしてみれば、トヨタは税務署にまったくおさめていないどころか、一二年時点で逆に一八〇一億円ものカネを税務署からうけとっていた。消費税が八%にあがれば、うけとる額は二八八二億円にふえる。来年一〇%にあがれば、さらにふくれあがる。
 日産の場合には九〇六億円うけとっているが、税率八%では一四五〇億円にふえる。パナソニックは三三六億円が五三七億円にふえる。輸出上位一〇社で合計すると、六三六八億円うけとっていたが、八%になれば一兆一八八億円にふえる。税率があがればあがるほど、輸出独占資本がボロ儲けする。だから、独占資本家は消費税率の引上げを要求するのである。
 どうしてこんなことになるのか。消費税に「輸出戻し税」という仕組みがあるからだ。
 トヨタの下請け企業が八〇万円の部品をトヨタにおさめたとする。トヨタは消費税五%分をふくめた八四万円を下請け企業にはらわなければならない。
 トヨタはその部品で自動車をつくって、かりに一〇〇万円で売ったとする。客からは消費税分をくわえた一〇五万円をうけとる。トヨタは消費税分五万円のうち、下請け企業に消費税分としてはらった四万円をさしひいた一万円を税務署におさめる。
消費税五万円をすべて負担するのは客だが、客からうけとった消費税をおさめる当事者は一万円分がトヨタ、四万円分が下請け企業とそれに連なる企業ということになる。これが消費税の基本的な仕組みである。
 問題は、この車を輸出し海外で売る場合には日本の消費税を課すことができないということで、非課税で販売するということにしたことである。トヨタは一〇〇万円でしか売れず、下請けにはらった四万円分の消費税を回収することができない。だからこの四万円は還付するというのが「輸出戻し制度」なのである。この四万円の原資は、人民が支払った消費税である。

実態にあわない非課税扱い
 だが、自動車をはじめ海外への輸出品が国内製品とおなじということはほぼなく、かならず海外仕様となっている。実態は、輸出先の国の税制や習慣や需要などもすべておりこんで、利益がでるように価格を設定して輸出しているのである。たとえばトヨタ自動車のプリウスもアメリカ向け、フィリピン向けで車の中身がことなり、価格もアメリカ向けはダンピングして日本より安く、フィリピン向けは逆に高いのである。それでももうかるように、部品を安くしたり、へらしたりして仕様を変更することで対処しているのである。
 こうして消費税がなくとももうかるようにしておけば、還付金はまるもうけになるのである。そのうえ、円安になれば為替差益がはいり、笑いがとまらないということになる。
 さらに、トヨタは下請け企業に過酷な単価切り下げをしいており、消費税の転嫁などみとめない。先の例でいえば八〇万円の部品を消費税込み八四万円で購入するどころか、逆に七五万円、七〇万円で納品させているのが実態だ。こうしてトヨタなどの輸出大企業は、「輸出戻し税」制度で人民や下請け企業がはらった消費税をかすめとるのである。もちろんトヨタは国内販売分は消費税をはらわなければならないが、「輸出戻し税」はそれよりはるかに大きく、差し引きで税務署に消費税は一円もはらわず、逆に多額のカネをもらえるのである。
 消費税の取り立ては年年きびしくなっている。法人税や所得税は業績に左右され、赤字になればはらわなくてもよかったりするし、すぐに差し押さえになったりせず分割など多少は話し合いの余地はある。ところが消費税は「客からあずかった税金」という理由で赤字だろうがなんだろうが問答無用にとりたてられる。
 下関市内の鉄工関係の小さな会社の事務員は「確定申告をしたらすぐに税務署から消費税の請求がくる。けっこう大きな額がまとめてくる。その資金をどうひねりだすか、毎年頭を痛める。はらえないと問答無用で差し押さえをやられる。消費税の滞納が税金で一番多いとか、消費税倒産がふえているとか聞くが、実感がある。税金のなかで一番怖いのが消費税だ」といっていた。
 実際に売掛金を差し押さえられて労働者への給料がはらえなくなり、不動産を差し押さえられ銀行から取引停止されて倒産という例がものすごくふえている。消費税が五%にひきあげられた九七年まで二万人台だった自殺者が、引上げ以降は三万人台に激増したのである。

赤字の税務署が全国10カ所
 他方、トヨタの口座には管轄内に本社のある豊田税務署から毎月約一五〇億円が「輸出戻し税」としてふりこまれている。おくれると延滞利子までつくという。そのため豊田税務署は、はいってくる税収よりトヨタなどへの「輸出戻し税」の支払いの方が多く、年間で差し引き一〇〇〇億円以上の赤字になっている。全国に五二四ある税務署のうち、輸出独占資本の本社があることから赤字になっているのは富士通本社のある神奈川税務署、パナソニック本社のある大阪・門真税務署など一〇署もある。人民には冷酷非情、独占資本には天国が消費税の正体である。
 中小企業や労働者から過酷に収奪し、トヨタなど独占資本につぎこむ消費税はきわめて犯罪的な税制度であり、廃止させなければならない。