『人民の星』 5911号2面 2014年8月2日付

イスラエルささえる安倍政府 “準同盟国”の関係

 イスラエル軍のガザ地区への空爆、地上侵攻によるパレスチナ住民の殺りくは、国際的な抗議をよびおこしている。だがイスラエル首相ネタニヤフは、「ガザ地区の非武装化が必要だ」「われわれは長期の作戦に備える必要がある」と攻撃をやめない。イスラエル軍のガザ侵攻は、中東・北アフリカでの人民斗争の発展による米戦略の破たんへのアメリカの危機感があり、米欧政府が支援している。安倍政府も、米オバマ政府の意向をうけ今年五月、イスラエルとの「包括的パートナーシップ構築」をうたい“準同盟国”とする外交政策の歴史的な転換をやり、公然と支持する側にまわっている。

集団的自衛権の対象にも
 イスラエル軍の攻撃によるガザ地区住民の死者は七月二九日の時点で一二一〇人にものぼっている。
 イスラエル当局は、ガザ地区からのロケット弾攻撃からの「自衛」と称してガザ地区への空爆、地上侵攻を強行したが、おもな標的にしているのは民家であり、非戦斗の一般住民である。犠牲者の二割が少年少女、子どもらである。
 イスラエル軍はパレスチナ解放組織が住民を「盾」につかっているなどといい、民間人の犠牲の責任をパレスチナ側におしつけようとしているが、厚顔無恥とはこのことである。
 イスラエル軍は七月二四日には、避難民をうけいれている国連運営の学校を砲撃し、一五人が死亡し、二〇〇人以上が負傷している。

米欧の弱体化が凶暴性促す
 アメリカのオバマ政府はイスラエルのガザ攻撃を支持し、「イスラエルにもみずからを防衛する権利がある」とくりかえしている。米政府は長年にわたってイスラエルへの軍事・経済援助を実施し、その戦争策動をささえつづけている。米欧政府はウクライナ問題で、ロシアが親露派を援助していると、対露制裁強化でさいきん合意しているが、子どもや婦人もふくめたパレスチナ人民の殺害をつづけるイスラエルは放置している。
 イスラエルのガザ攻撃の凶暴性は、アメリカをはじめとする帝国主義の中東・北アフリカへの歴史的な支配が人民斗争によってくずされていることへのつよい危機感に根ざしている。
 これをささえるために動員されているのが安倍政府である。安倍はイスラエル軍のガザ攻撃後にイスラエル首相ネタニヤフと電話会談し「自制」をもとめているがかたちだけでしかない。

「親アラブ」の装いを捨てる
 首相・安倍は米オバマ政府の対外戦略の下働きとして、外交に力をいれている。このなかで安倍は昨年、三回も中東・北アフリカ諸国を歴訪し、今年一月にもペルシャ湾岸のオマーンを訪問した。今年五月にはイスラエル首相ネタニヤフを公賓として日本にむかえいれ、イスラエルとのあいだで政治、経済、軍事の全面にわたる「包括的パートナーシップ構築」を共同声明でうちだした。安倍は「積極的平和主義」の立場から、「自由と民主主義といった価値を共有するイスラエルと協力していく」ことを明言している。アメリカを頭にいただきながら日本とイスラエルとの関係を“準同盟国”にするということである。
 日本の中東政策は、中東・ペルシャ湾からの石油輸入の確保を一方の柱としながら、産油国との関係強化、経済援助によってアメリカの中東支配を下支えするもので、“親アラブ”のよそおいをとってきた。
 ところが安倍政府は、中東・北アフリカ諸国の怒りの的となっているイスラエルの首相を一七年ぶりにまねき、天皇が会見するなど異例の歓待をし、“準同盟国”にした。

イスラエルと軍事協力推進
 「包括的パートナーシップ構築」の最大の特徴は日本とイスラエルの軍事協力をうちだしたことにある。戦争指揮の中枢機関である日本の国家安全保障局とイスラエルの国家安全保障会議の意見交換の開始、サイバー・セキュリティ分野の協力、防衛当局間の交流促進などをあげている。
 安倍政府が強行した集団的自衛権の行使容認、解釈改憲は、「わが国と密接な関係にある国」への戦争に参戦するということである。安倍政府がイスラエルとの「包括的パートナーシップの構築」をうちだしたことは、イスラエルを集団的自衛権の行使の対象である“準同盟国”にさせようとするアメリカの思惑が見える。
 首相・安倍は集団的自衛権について国会での集中審議(七月一四、一五日)のなかで、中東・ペルシャ湾のホルムズ海峡での機雷掃海について「日本にむかう原油の八割がそこをとおる」「石油の供給不足で国民生活に死活的な影響が生じる」とその必要性をくりかえし強調した。ホルムズ海峡に機雷が敷設されるということは、アメリカとイランとの軍事的対立が激化し、戦争になる事態を想定したものであり、自衛隊の機雷掃海は米艦隊との共同作戦になる。
 またイスラエル軍は米政府の意向をうけて、イランの核関連施設への攻撃を計画し、その演習をしたこともある。
 日本政府は、湾岸戦争では掃海部隊、イラク侵略・占領では「復興支援」を名目に地上部隊を派兵した。またPKO(国連平和維持活動)でイスラエルとシリアが対峙するゴラン高原に自衛隊を派兵した。現在は内戦が激化する北アフリカの南スーダンに自衛隊輸送部隊をおくりこんでいる。
 安倍政府の集団的自衛権行使容認は、あからさまに「戦争をできる国」として中東・北アフリカ地域に自衛隊を派兵できるようにすることもねらっているのである。
 また安倍政府は、さきに武器輸出三原則を放棄し、世界各国への武器輸出や共同兵器開発に道をひらいたが、その対象にイスラエルもはいるということである。安倍政府は、アメリカの最新鋭ステルス機F35の導入、その一部生産をになうことをきめているが、イスラエルもF35の導入をきめている。
 安倍政府の中東・北アフリカの転換は、イスラエルの側にたったということであり、パレスチナ人民をはじめとする中東・北アフリカ諸国人民のたたかいに真っ向から敵対している。日本の若者が、アメリカの肉弾としてかりだされることをゆるしてはならない。