『人民の星』 5916号1面 2014年8月23日付

消費税8%で何もかも上がる ますます進む生活苦

 四月からの八%への消費税率引上げが、人民生活を直撃している。「なにもかも値上がりした」「三%どころか一割はあがった」というのが実感であり、他方で「給料はあがらない」「年金はけずられるばかり」と収入はへりつづけ、家計は苦しくなる一方である。集団的自衛権行使容認の閣議決定など戦争への道をひた走る安倍政府のもとで、消費税増収は米軍再編や自衛隊増強につかわれ、就職難の青年へ自衛隊の勧誘の手ものびている。かつて一九三〇年代の「みんなが貧乏になって戦争になっていった」を思いおこさせる事態が進行している。

貧乏から戦争へのコース
 消費税増税で、物価がいっぺんにあがったという声が多い。とくにガソリン、軽油や食パン、食用油、ティッシュなど、生活に必要な品で値上がりがめだつ。
 下関市内の市営住宅に一人で住む七〇代の婦人Aさんは「四月からいっぺんにあがった気がする。食パンなんか前は一〇〇円しないのもあったけど、いまそんなのはない。ハムとかマーガリンとか一割はあがった。三%どころではない。年金が少ないから節約して生活しているけど、年金はへるばかり。とられるものがふえて、もらうものはへるばかりです」と語った。
 おなじく夫と二人暮らしの六〇代婦人Bさんは「四月からいっぺんにあがったし、七月からまたあがった」といい、つぎのようにのべた。
 「パンとかハムやチーズとか、よく使うものがすごく値上がりした。一割くらいあがったような気がする。近くにいる娘夫婦の中学生の子がよくうちにくるのでソーセージなんかも買うけど、外袋はおなじなのに中身がずいぶんみじかくなってダブダブになっていた。値段は前とかわらんけど、これも値上げにはちがいない。アベノミクスなんていうけど、二人(夫婦)とも給料はあがらない。小さな会社の工員とパートだから、あきらめている。ガソリンも一七〇円くらいになったし、これもいたい。休みの日はどこもでないようにした。これで来年も(消費税を)あげるなんて考えられない」

駆込み需要の二倍落ち込み
 農家の五〇代婦人Cさんは「うちは食べ物はあまり買わないからまだいいけど、車の油なんかがあがっているのはこたえる。肥料やマルチ(シート)なんかもあがっているし。雨がつづいて野菜がうまくできない。とれないから値段があがってみんなこまっているようだ。天気は関係ないのかも知れないけど、消費税があがってなにもかもあがりだした感じがする。テレビなんか見ていると、消費税引上げの影響はたいしたことはないとか、アベノミクスのおかげで景気がよくなっているとかいっているけど、全然実感とちがう。前は新聞とかテレビとか見ていても、生活が苦しいとか奥さんたちの話もだされていたけど、いまごろは全然でなくなった。NHKなんかとくにひどい。安倍さんヨイショばかりではないか。経済がずいぶんおちこんだといっていたが、消費税をあげた影響はほんとうは大きいのではないか」といっていた。
 この婦人のいう経済とは、四〜六月期のGDP(国内総生産)のことだろう。GDPは前期比で一・七%、年率では六・八%ものマイナスとなった。東日本大震災のおこった一一年一〜三月期の六・九%減に匹敵する落ち込みだ。うち国内需要は年率一〇・五%減もの落ち込みである。
 GDPの六割をしめる個人消費は、四〜六月期に前期比五・〇%もの減となり、前回消費税をあげた九七年四〜六月期の三・五%をはるかに上まわる落ち込みとなった。個人消費額の試算では、三月には前年同月比で二一兆六〇〇〇億円ふえた。これは消費税前のいわゆる「駆け込み需要」の影響だろう。だが四月には同一三兆八〇〇〇億円、五月には二四兆円、六月には九兆円も前年にくらべておちこんでいる。三カ月間で四六兆八〇〇〇億円と「駆け込み需要」の二・二倍も消費が減っているのである。消費の落ち込みは七月以降もつづいている。「想定内」の話どころではなく、実際には深刻な市場縮小=消費不況が日本経済でおこっている。これで来年、消費税を一〇%にまたあげれば、まちがいなく恐慌になる。

法人減税と軍事につぎ込む
 人民生活の窮乏化を尻目に、安倍政府は法人税減税をうちだすなど独占資本の私的利潤拡大には手あつい策を講じている。消費税増税でふえる税収を独占資本のためにつぎこもうとしているのである。それだけではない。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設のための環境調査、山口県の米軍岩国基地の増強や愛宕山への米軍住宅建設、京都への米軍レーダー施設の新設、また自衛隊の南西配備や陸上自衛隊の海兵隊化など、米日両軍の増強のために湯水のように血税をつぎこんでいる。集団的自衛権の行使容認など戦争態勢の強化のための増税である。
 Bさんは「安倍さんは顔つきがおかしい。なにかにとりつかれたような顔だ。集団的自衛権はぜったいおかしい。戦争になりそうというか、いやな空気だ。戦争の記憶はないけど、人がいっぱい死ぬようなことをしてはいけない」といった。
 むかしは夫と商売をしていたが、いまは一人で年金暮らしという八〇代のDさんは「空襲のときはこのあたりにも米軍の飛行機から焼夷弾がばらばらまかれ、火の海になった。たまたまうちは焼けのこったし、当時としては大きな家だったので、焼けだされた人たちの避難所になった。ああいうことは二度とおこってほしくない」と戦争のときを思いおこしながら、つぎのように語った。
 「“満州”にいけば食べていけるというのでわたって苦労された方もいる。下関も空襲があったし、あちこちの町が焼かれた。広島や長崎には原爆がおちたし、戦争でなくなられた方はいっぱいいる。生きていく苦労も少少のものではなかった。食べるものなんてまともになかった。秘密保護法とか集団的自衛権とか絶対におかしい。また戦争になるようなことには手をだしたらいけない」
 二人の孫がおり、下の男の子は高校を卒業して就職したばかりという七〇代の農村婦人Eさんは、求職活動でこんなことがあったと語った。

貧困につけ込み自衛隊勧誘
 「学校に自衛隊から求人があった。資格がとれるとかいろいろといいことをいっていたらしい。親をさしおいてとも思ったが、これだけはいけんと思って、“自衛隊だけはやめとき”といってやった」
 自衛隊は定員不足でもともと勧誘をやってきたが、ここにきて勧誘活動をつよめている。集団的自衛権の行使で自衛隊員を戦地に派遣しようとしても、自衛隊員そのものが不足していればいかせようがないからだ。自衛艦や軍用機の操縦には訓練も必要だ。まして戦地で犠牲者がでるようになれば、ますます自衛隊員が不足する。だから、就職難をつくりだして自衛隊にさそいこもうとしている。アメリカでは深刻な貧困のなかで貧困世帯の若者に軍隊が勧誘の手をのばしているが、おなじことを日本でもやろうとしている。それでも数がたりなければ徴兵制も導入するだろう。
 かつて第一次大戦後のバブルがはじけて一九二九年恐慌になり、天皇制政府は市場をもとめて朝鮮、中国に侵略をつよめるなかで戦争に突入していった。「娘の身売り」までしいられるほどの貧乏のなかで「暴支膺懲(横暴な中国をやっつける)」と排外主義があおられ、「満州は日本の生命線」と侵略が賛美されて、貧困青年は問答無用で兵隊として徴用された。二〇歳だった徴兵検査は一九歳になり、甲種合格以外の者、兵役が満期となり除隊した者も召集令状でかりだされた。まさに「みんなが貧乏になって戦争になっていった」(『原爆と大戦の真実』)。いままったくおなじことがやられようとしている。
 消費税増税は、その増収分を戦争準備に費やすだけでなく、みんなを貧乏にして戦争へとかりたてていくために意図的にやられている。「消費税は硝煙のにおいがする」といわれるゆえんである。消費税増税など人民の貧困化政策をうちやぶるたたかいを、集団的自衛権など戦争準備に反対するたたかいとむすびつけて大きく発展させなければならない。