『人民の星』 5929号2面 2014年10月8日付

香港での「民主化」運動 米国が直接指揮

 香港では次期行政長官(首長)選挙をめぐって、九月下旬からデモ隊が金融街を占拠する行動がつづいている。二日には梁振英・行政長官の即時辞任を要求し、行政庁舎を包囲した。ブルジョア・マスコミは、それを「民主派」の運動と呼び、アメリカ大統領オバマは先頭にたってこれらの行動を「支持」すると旗をふり、香港をふくむ中国への干渉をすすめている。「民主派」による行動は、アメリカの香港略奪の陰謀によるものであり、香港をふたたび植民地にし、中国を転覆しようとする意図によっている。

植民地化・中国転覆ねらう
 オバマは一日、訪米中の中国外相・王毅にたいし、露骨に、「香港市民の志を支持する」と表明した。これにたいして王毅は、「いかなる国も違法集会を激励し、支持するようなあやまったメッセージをだすべきではない」とアメリカによる内政干渉に強く反発した。
 香港は、一五〇年にわたってイギリスの植民地とされ、イギリス支配階級とその代理人である総督府が全権力をにぎって支配していた。一八四二年、イギリスは当時の清朝から、香港島、九龍半島、新界、周辺の島々を割譲したり、租借地として植民地にしたのである。
 香港がイギリスから中国に返還されたのはようやく一七年前、一九九七年のことにすぎない。このときはじめて香港は、約一五〇年の長きにわたるイギリスの植民地状態から脱却した。民族主権は長期にわたる内外の人民の斗争によってかちとられたのである。
 その後香港は、中国政府の「一国二制度」の方針のもとに特別行政区として統治されている。
 行政長官は、じゅうらいは職域組織や業界団体の代表による間接・制限選挙で選出されていた。だが二〇〇七年一二月、中国全国人民代表大会の常務委員会は、行政長官の普通選挙を二〇一七年に実施するという方針をきめ、今年八月の常務委員会は、「指名委員会」をつうじて候補者を二〜三人にしぼりこむことをきめた。
 「民主派」による一連の抗議行動は、「指名委員会」による候補者選定が「民主派」を排除するもので、撤回をもとめるというものである。
 また、「民主主義」「表現の自由」「普通選挙」というスローガンをかかげ、二日には政府庁舎を包囲しようという動きで事態をエスカレートさせている。
 ところが、この「民主派」の行動は、香港の住民の意思によってはじまったものではない。

米が「民主派」に資金を提供
 アメリカは以前から、香港にいる親米派野党や「民主化団体」に資金を提供してきた。今年七月、その一部が暴露されている。
 アメリカの手先となっている香港の日刊紙『アップルデイリー』を発行する壱伝媒集団(ネクストメディア)が、二〇一二年四月から今年六月までに九団体と一四人にたいして、四〇八〇万香港j(約五億七〇〇〇万円)をばらまいている。
 資金提供をうけたもののなかには道路占拠を呼びかけた香港大学副教授ベニー・タイもふくまれている。
 献金にかんする書類にサインをしている壱伝媒集団幹部のマーク・サイモンは、じつは、米共和党香港支部長を兼務していた。サイモンは米海軍の情報工作に従事した経験があり、父親はCIA(米中央情報局)に三五年間勤務していた。
 サイモンや壱伝媒集団会長ジミー・ライは米ブッシュ政府時期の元副大統領ディック・チェイニーや元国防長官ウォルフォウィッツなど、ネオコンと密接な関係もっていた。また日常的に在香港アメリカ総領事館、歴代総領事、外交官と連絡をとっていた。
 壱伝媒集団による資金提供は今回だけではない。〇六〜一一年には政界や宗教界にたいして、約六〇〇〇万香港j(約八億四〇〇〇万円)の政治献金をおこなっている。資金の出所はアメリカである。
 米政府は、壱伝媒集団以外でも、CIAの関連機関である全米民主主義基金(NED)が香港人権観察、香港職工会連盟などの団体、労組に資金を提供し、「民主化」の訓練・指示をだしていた。NEDの所属組織である全米民主国際研究所、アメリカ国際労働センターは香港で活動している。
 アメリカの手先は今年にはいり、あいつぎ訪米した。「民主派」の指導者である民主党初代の代表マーチン・リー、元香港特別区政務官のアンソン・チャンは今年三月に訪米し、ホワイトハウスで副大統領バイデンと会談した。サイモンとライは今年五月に訪米し、ウォルフォウィッツと密会した。
 「民主化」の騒乱をおこし、親米政府をでっちあげようとするのは、アメリカの常とう手段である。アメリカは「天安門事件」(一九八九年)で、社会主義制度の転覆をはかろうとした。「チベット問題」なるものをでっちあげた干渉は新中国建国いらい、くりかえしおこなっている。
 旧ソ連、東欧でもこの手口をとり、ウクライナでは「民主化」の騒乱やネオファシストを使ったクーデターをひきおこした。

米国の対中戦争策動と一体
 香港の次期行政長官選挙に介入の糸口を見いだそうとした今回の「民主化」は、「中国の脅威」をかかげた戦争策動と一体である。アメリカはいま世界各地であらたな軍事介入をおこなっている。「民主化」をかかげた争乱をひきおこすという謀略もその一環である。そして、香港ひいては中国を植民地にしようとしているのである。
 アメリカ帝国主義の謀略の手口に注意をはらうとともに、日本で米日反動派との斗争を発展させることがきわめて重要になっている。日本も第二次大戦後、七〇年にわたって、アメリカが米軍基地をおき、日本を植民地的状態においている。安倍政府など歴代政府は、アメリカにもみ手をし、屈従し、日本の民族主権を売り飛ばし、アメリカの言いなりになっている。
 このような民族的屈辱をうち破り、アメリカからの真の独立をかちとることが日本人民の任務である。それは、世界の進歩発展にも貢献するものである。