『人民の星』 5937号1面 2014年11月5日付
米軍栄え、さびれる岩国 基地優先の歪んだ街作り
米海兵隊基地のある山口県岩国市では、勤労市民のあいだで、市のさびれようが話になっている。市最大の繁華街である駅前商店街は、土日でも人影が少ない。若者はもとより高齢者の姿もなく、一四万市民はいったいどこにいるのだろうという感じとなっている。商業者は米軍基地が一等地を占拠しているがゆえの市のさまざまなゆがみを指摘している。米軍基地をなくすことが社会と人人の生活の繁栄につながることがますますあきらかになっている。
第一に問題となっているのは、他の都市とくらべても異様なほどのさびれ方である。
岩国駅前には駅前本通商店街と中通商店街の二つの商店街があるが、あいているのは宝石販売や居酒屋などの大手のチェーン店、携帯ショップ、パチンコ屋くらいで地元の店はシャッターをしめたところが多い。店の半分以上がしまり、文字どおりシャッター街と化している。
商店街は半分以上店閉める
ある呉服屋の話では、バブル崩壊以降、しめる店が多くなったという。とくにここ一〇年、高齢化して後継ぎもできずしめる店が多い。中通商店街では第三日曜日に軽トラ市をやっているが、人がくるのはそのときだけだという。
店主は「きょうは土曜日だけど、ごらんのような状況です。ほとんど人がとおらない。うちもきてくれるのはお得意さんだけで、一見(いちげん)のお客さんは滅多にこない。むかしは若い人向けの小物もおいていたが、バブルがくずれて以降、若い人たちはこなくなったし、一見のお客さんで五〇〇〇円以上買う人はいなくなった。とくにここ数年ひどい。みんな広島や周南にいく。岩国に魅力がないからだ」という。
洋品店主は大型店の進出の影響をつぎのように指摘した。
大型店進出で客をとられた
「南岩国に(イオン系の)マックスバリューができて、このあたりのお客はみんなとられた。去年、室の木に(広島に本社のあるスーパーの)フレスタができて、駅前のフジグラン(百貨店)は閉鎖の噂がでている。おなじくイズミ(スーパー)も店舗が古くなっており、駅前開発との関係でしめるかもしれない。県が新規開業者の家賃の半分を補助する制度がある。それを利用してうちの商店街でも、腕に自信のある若い人たちが料理屋をひらいたりしたが、つづかない。駅前に都会の大手居酒屋チェーンができて客をとられた。若い人たちはおカネがなくなっているから、ユニクロとかにいく」
CD店主は「大手系列のレンタル店がふえて、みんなCDを買わなくなった」といい、眼鏡店主は「メガネチェーン店の安売りや中国などの輸入物にやられている。国内の眼鏡卸がずいぶんつぶれた」と語った。
雑貨店をのぞきにきたという市内の婦人は「広島や周南によくいくけど、駅前なんかもいろいろ開発している。岩国は一〇年、二〇年全然かわらない。正直いって魅力ない街になっている」といっていた。
第二に、商業者のなかからは市の施策のおかしさが指摘されている。
ある呉服店主は、新築された市役所の問題をだしながらつぎのように語った。
「ガラス張りでみてくれだけ。夏はあつくて冬は寒く、熱効率がわるい。電気代がかかる。一番頭にくるのは設計が東京で、都会発注だということ。なぜ地元発注にしないのだろう。いろいろな施設をたてたりしているが、ほとんど市外発注だ。なぜ地元に仕事をつくらないのか。市長も議会も地元愛がないように思う」
なぜ広島直行バスを作った
先の洋品店主も「市のいろいろな施設をつくるが、おなじ所にまとめればいいのに、ばらばらにつくるものだから不便でしょうがない。体育館なんかでも基準がみたせなくて、公式の競技ができない。公式試合なんか柳井市にいってやっている。それに市営バスに広島直行の路線をつくるというバカなことをした。“広島からお客が呼べる”なんてことをいっていたけれど、くるわけがない。JR並みの料金だから、若い人たちだけでなくお年寄りもみんな広島にいくようになった。だから防長バスもまねをしておなじような路線をつくる。市は、市民が暮らしづらくなるようなことばかりする」と怒った。
靴屋の店主は愛宕山米軍住宅の問題をだした。
「住宅をつくるといって開発しながら、けっきょくベース(基地)向けの住宅にするのは納得いかない。なぜ米軍の施設をひろげるようなことをするのか。ベースの滑走路を沖合にうつすことだって、けっきょくうつした跡地はかえさないで、ひろげただけではないか。愛宕山にスポーツ施設をつくるというが、米軍の許可がないと使えない。そんなものは意味がない」
米軍基地ばかり拡張される
地方都市ではどこでも中央集中による荒廃、商店街のシャッター通り化や若者をはじめ人口減少が問題になっている。そのため行政主導で街作り計画がたてられ、なんとかして人を集めようという施策がすすめられている。それが大型店の出店であったり、娯楽施設の建設であったり、独占大企業の利益のためで市民不在であることが問題になっている。ところが岩国では、そうした街作りプランそのものの影がうすい。市民のなかでは、米軍関連でそうとうのカネがおりるから、市も街作りや人口増に不熱心なのではないかという声があがっている。
さきの呉服店主はこう指摘した。
「市長も議会も、愛宕山に米軍住宅をつくるとか、アメリカにばかりいい顔をする。その分市民にはつめたい。いろんな施設をばらばらにつくったり、不便な街になっている。魅力ある街にしなくても、米軍関連でおカネがはいってくるからいいくらいに思っているのだろうか。米軍関連の補助金はいっぱいおりているはずだが、どこにつかわれているのだろう。すくなくとも市民のためにはつかわれていない。補助金の使途明細など見たことがない。岩国は街作りのプランがおかしい」
「米軍補助金はどこにつかわれているのか」というのは、市民からよくだされる意見だ。ようするに米軍に寄生した市民不在の腐敗行政だという批判がつよまっているのである。
商業者の意見で特徴的なのは第三に、こうした現状をかえるためにはどうするかという意識の強まりである。
ここに出店して二、三年という店主は「むかしを知らないから、商売はこんなものかなと思っている。すこしずつお得意さんもできてきたし」といいながら、つぎのように語った。
「一番問題なのは政治家だと思う。高い視点にたって将来を見とおすような政治家がいない。国でも市でもそう。議員なんてみんな自分のことだけで、カネにきたない人が多い。自分のことはおいても市や国の将来を考えようという人が一人もいない。
高杉晋作とか吉田松陰のような人がほしいのに、お金持ちでもっとおカネが欲しい人ばかり議員になるからどんどんひどくなる。岩国を見ても市の顔である駅も古くさいままほうってある。新幹線の駅をなぜあんな遠いところにつくったのか。いったいどういう市のプランを描いているのかと思う。とにかくもっと高い志をもった政治家をわたしたちでおくりだすようにしないといけない」
洋品店主も「ここの商店街だけでなく全国どこもおなじようなものだからね」として、つぎのようにのべた。
「ここだけでどうなるものでもない。岩国は岩国でもうちょっと米軍向けではなく市民向けの行政をやってもらいたいが、どこも外面(そとづら)ばかりよくて内面がわるい(市民軽視)のはおなじようなものだと思う。全国というか、日本の国をよくしていかないといけない。全国がよくならないと岩国もよくならないし、ここもよくならない」
岩国は対米従属の国の縮図
岩国は市の一等地である三角州を米軍基地が占拠する街である。滑走路移転と称して沖合に一・四倍拡張され、そのうえに愛宕山開発地を米軍住宅にとられ、基地は拡張される一方である。普天間基地(沖縄県)から空中給油機がうつされ、海軍厚木基地(神奈川県)からは艦載機が移転する計画で、極東有数の巨大基地として増強されつつある。福田市政や議会はそれを容認し、米軍関連でおりる補助金に寄生し、市行政を隷属的で腐敗したものにしている。それがたとえば商業にも深刻な影響をおよぼしているのである。
岩国はアメリカに従属する日本の縮図にほかならない。米軍基地はますます拡大し、市民生活はますます疲弊しているのである。こうした政治を勤労市民主体のものに転換させること、アメリカや戦争をやるための米軍基地にすがるのではなく、独立し平和で繁栄した岩国市や日本をつくろうと、岩国勤労市民は意欲を燃やしている。