『人民の星』 5955号1面 2015年1月14日付
マクドナルドの異物混入 破産するアメリカ型搾取
米国資本の子会社で、大手ファストフードの日本マクドナルドの商品のなかからあいついで異物が発見された問題は、大きな社会問題になっている。食の安全性や衛生管理がいちじるしくくずれ、コスト削減、利益第一の外食産業の実態が白日のもとにさらされている。アメリカ方式のファストフード・チェーン店は、製造・販売形態から工場や店舗での労働にまで深刻な問題をおよぼしている。
ことの発端は今月三日、青森県三沢市のマクドナルド店舗でチキンナゲットを購入した男性から、ビニールのような異物がでてきたと、とどけたことであった。チキンナゲットは、タイ工場で製造されたもので、岩手県や宮城県、大阪府などの三一〇〇店舗に納入された。およそ一九万食のうち九九%はすでに販売されていた。
同七日には長野県松本市の店舗でソフトクリームを買った客が、商品のなかから四a四方のビニール片がでてきたと訴えた。
こうした異物混入の発覚を契機にこれまで公表されなかったマクドナルド関連の異物混入の実態があいついで明るみにだされた。
昨年一二月には、埼玉県川口市で「クォーターパウンダー・チーズ」に金属片が混入していたことがあきらかになり、パン焼き器の鉄板の金属カスではないかとされた。同月、沖縄県那覇市では「ダブル・チーズ・バーガー」からはおよそ三aほどの発泡スチロール片がみつかり、福島県郡山市の店舗ではソフトクリームからプラスチック片がでてきた。機械の一部が欠けたものと思われるとのことである。
東京都江東区でもチキンナゲットにビニール片が混入していたが、現物を紛失しているために原因をあきらかにすることができていない。
一一月には沖縄県北谷町で子どもが食べた「チキン・マフィン」から八_ほどのプラスチック片がでてきた。食べた子どもは口のなかにケガをした。
さらに九月には京都府宮津市の店舗で購入されたホットケーキに金具のような者がはいっていたという苦情がよせられた。しらべたところ金属はアクセサリーの留め金のようだということがわかっただけで、原因は特定されていない。
八月には大阪府河内長野市の店舗で購入したマックフライポテトから人の歯が発見され、同月、鹿児島県霧島市でもおなじくマックフライポテトから人の歯の詰め物とみられる金属片がでてきている。以上の事例が氷山の一角にすぎないことはあきらかだ。
マクドナルドを利用したことがあるという五〇代の婦人は「これだけ多くのクレームがいまになってあきらかにされるということは、実際はもっと多くの隠し事があるのではないか」と懸念し、「もうマックを利用することはないと思う」と語っている。
材料と賃金は最低 特許料と配当金は最高
日本マクドナルドは、世界最大の米マクドナルドの子会社で、チェーン店の売上高は国内でトップである。二〇一三年の売上高(直営店とフランチャイズ店への売上)は二五八九億円で、営業利益一一〇億円、税引き後の純利益四五億円をあげている。だが親会社の米マクドナルドは日本マクドナルドから純利益以上の利益をもぎとる。
まず売上高の三%を毎年ロイヤリティとしてとっている。一三年のロイヤリティは七八億円になる。これに日本マクドナルドの株式の約五〇%を米マクドナルド系の資本がもっており、これが剰余配当として繰り越しの剰余金もあてて約六〇億円せしめている。こうしてじつに売上高の五%を米マクドナルドは日本の子会社から利益として収奪している。
それは、労働者の賃金を低くおさえることと、材料費を徹底して引き下げることによって実現している。日本マクドナルドの人件費と材料費は、他の外食企業とくらべてももっとも低い。しかも、日本マクドナルドの労働者(中国やタイのマクドナルドの下請け労働者も同様)は、米日の資本から二重に搾取されているのである。ここに異物混入などの問題があとをたたず、しかも不断に拡大していかざるをえない構造的要因がある。
今回の異物混入について山口県の配食業の労働者は「自分たちも弁当のなかに異物が混じったりしないよう、いつも細心の注意を払っている。それでも髪の毛がおちていたとか、ビニール片が混じっていたといったクレームがつくことがある。それはたいてい製造能力をこえるような大量の注文がはいったときとか、従業員が急にやめていって補充がきかないで人手不足になったりするときだ。わたしらはそういうときにこそ、なによりも手洗いを励行し、食中毒につながらないようなことを第一におきながら、キャップ、手袋、マスクをきちんとするようにしている。それでもクレームを完全にゼロにすることはむずかしいが、クレームがきたらすぐにお客のところへいって状況をたしかめ、(製造、梱包の)工程を点検する」とはなしている。
11年で売上高一位 高収益体制が衰退生む
マクドナルドの異物混入は、中小零細の弁当産業のような現状と同列におくことはできない。それは、極限までコスト削減して高い利益をあげるためにつくられたアメリカ方式のシステム、フランチャイズ化のツケとしてあらわれたものだからだ。
日本マクドナルドは、一九七一年に米マクドナルドから商標、営業ノウハウを取得し、第一号店を銀座三越に出店したのをてはじめに七六年にはフランチャイズ店を出店した。直営店を極力へらし、フランチャイズ店を拡大する一方、海外から安い食材を大量に購入してコスト削減を徹底して実行した。こうして銀座三越に一号店をだしてからわずか一〇年あまりの八二年には単体ブランドチェーン店として外食産業売上高日本一にまでもっていった。
九〇年一二月には山形県第一号店が開店し、これで全都道府県にマクドナルド店を出店させた。そして、九〇年代後半から二〇〇〇年代にかけて、日本のハンバーガー市場においてマクドナルドのシェアは六〇%台から七〇%台をしめるにいたった。
シェア拡大の背景には、九〇年代半ばの円高を利用した「価格破壊」戦略をとったことがあげられる。ハンバーガー単品の値段を八〇円に値下げしたり、「平日半額キャンペーン」を展開するなど、他社をよせつけない低価格戦略で市場を拡大した。二〇〇一年、「マクドナルドは“デフレ時代の勝ち組”」などともてはやされるようになった。同年、ジャスダック市場に株式上場をはたした。
ところがこのころ、一j一四〇円もの円安におちいったことや、極端な価格破壊で客単価がへったことで二〇〇二年には創業いらいはじめての赤字決算となった。経常収支を立てなおすために「平日半額キャンペーン」などを終了させたところ客離れを加速させ、ふたたび値下げセールをはじめたものの、格安牛丼を売る吉野家の攻勢などで客足はもどらなかった。
「一〇〇円マック」をだしてみたものの「安物商品」をいうイメージがひろがり、それではと「クォーターパウンダー」(大きい肉のハンバーガー)を販売戦略の中心においたが、徹夜で行列をつくった二〇〇〇人のうちの大半が派遣会社からおくられた「さくら」だったことが発覚するなど、イメージダウンがさらにすすんだ。
〇八年のリーマン・ショックで外食離れが加速し、利益優先主義によるコスト削減へといっそう傾斜していった。中国での期限切れ鶏肉の使用という事件もこうした延長線上でひきおこされた。とりあつかっていた上海福喜食品はアメリカ食材卸大手OSIの子会社である。そのほか、コストをさげることを目的に短期間で鶏を育成するため大量の成長促進剤を投与した問題なども暴露されている。
日本の低賃金誘導 ハンバーガーが代用食
徹底したコスト削減で見落とせないのが、労働者にたいする搾取と抑圧である。低賃金で食肉の加工、成型、梱包の仕事をになわされてきたタイ工場の労働者の低賃金ぶりはいうまでもなく、日本のフランチャイズ店をふくめた数千人の従業員も低賃金と、十分な商品管理ができないような労働強化でこきつかわれていたことが、一連の異物混入を拡散させる一つの要因になっていた。
日本マクドナルドは、若手を採用するという美名にかくれて、〇四年より店長以上の社員の定期昇給を廃止し、給与は原則、業績評価だけできめる職能給制度が徹底された。その後も直営店を中心に退職勧奨が露骨におこなわれ、それが労働への抑圧となった。
その結果、社員に採用されても数日や数週間でやめていくという青年があとをたたず、がんばった社員が過労でたおれることも少なくない。衛生管理などの手引きがあったとしても継承されないのが現場の実態となっている。
日本マクドナルドでの異物混入問題は、たんに一部の店舗の商品や製造工場でのミスというだけではすまない問題をふくんでいる。
一九七〇年代以降、拡大してきたアメリカ型のフランチャイズ方式など低価格の飲食産業の拡大は、日本の労働者の低賃金を側面からささえるテコになってきた。それは、生産費につぐなわない米価の大幅な引き下げとつうじるものである。一九九七年をピークとして労働者の賃金が下降の一途をたどるなかで、これまで「若者の食事」とされていたハンバーガーの購入者が二〇〇〇年代にはいってから四〇代、五〇代の現役世代でふえているというのは、労働者の貧困化の一面をあらわしている。
日本マクドナルドやゼンショーホールディングス(すき家)、吉野家ホールディングスの上位三社だけで年間売上高は約一兆円にのぼる。アメリカからもちこまれた飲食産業での低賃金が、労働者全体の低賃金をうながしていることは、いまやあきらかである。米日独占資本から二重に搾取されるもとで、日本資本主義はますます末期的な症状をしめしている。労働者、勤労人民が平和と繁栄を獲得し、安心して文化的な生活をおこなうためには、独立を実現し、独占資本の支配をうちたおすことが現実的課題としてだされている。