『人民の星』 5956号3面 2015年1月17日付

マクドナルドの実態 一人もいない調理師 米国流商法でバイト主体

 「マックやモスバーガーなど全国には多くのハンバーガーショップがあるけれど、調理師という資格者は一人もいない」。元従業員の話だ。日本マクドナルドは一九七一年に創業してわずか一〇年でファストフード業界で売上げトップにまでのしあがった。いま社会問題化している異物混入の原因などは、そのことばにもあらわれた経営の構造にある。それは、食のグローバル化といって、世界的な範囲で低賃金化をひろめ、ひいては労働者の経済的地位の引下げをもうながしている。
 直営店とフランチャイズとでは若干ことなるが、マクドナルドにはクルー、クルートレーナー、スウィングマネージャー、マネージャートレーニー、セカンドアシスタントマネージャー、ファーストアシスタントマネージャーなど何階層ものスタッフがいて、ピラミッドのような構造をなしている。

階層を作って管理する仕組
 学生時代にマクドナルドでアルバイトを経験したという男性は「バイトでも制服の着用、身だしなみは厳格で、バイトにもバッジをつけさせたりした。仕事はフロントカウンターでの注文受付、レジと、キッチンエリアでの調理と二手にわかれ、作業をする。単純なものだが、いろんな階層をつくったり、バッジをつけさせることで帰属意識をうえつけるという感じだった」とはなした。
 大学を卒業していまではべつの会社に就職しているが、「生涯つづける仕事という思いはまったくなかった。若者を中心に、とくに学生アルバイトを重視しているようだった。長くても卒業までにやめていき、バイト料もあがらず、結束もしないからということらしい」ともはなしている。
 モスバーガーでアルバイトをした経験があるという二〇代の婦人は「経験というのはほとんどいらない感じだ。調理をしているのもバイト生で、冷凍の食材をきめられたとおりの手順をまもってフライヤーにいれさえすれば、だれにでもできる仕事だった」とふりかえる。
 こうした経験者の話を総合すると、ハンバーガー店からつぎのような実態がうかびあがる。

輸入冷凍品を解凍するだけ
 ハンバーグパティ(丸く成型されたハンバーグの肉)やチキン、フィレオフィッシュ(すけそうだら)、フライドポテト用のジャガイモなどなにもかも加工、調理されて冷凍状態になったものが段ボールのケースで各店舗に配達される。タルタルソースからアイスクリームの原料まで同様である。
 レタスやトマトといった野菜は、国産のものが多く、大きなシンクのなかにいれて、水洗いしながらちぎったりする。ここまで経験や知識などなくてもだれでもやれる。教育されたマニュアル通りにやればいいだけだ。だから、賃金の高い調理師などおく必要がない。全員アルバイトでいい。人件費が低くおさえられる分、定価をひきさげられる。
 ちなみにフライドポテト用のジャガイモとタマネギはアメリカ産。ハンバーガー用のビーフパティ、ポークパティもアメリカ産。チキンナゲットはタイ産。フィレオフィッシュはタイや日本、スイートコーンもタイ産。ピクルスはスリランカやトルコ産、スライスチーズはニュージーランド産などとなっている。
 自動車や電機製品の部品を賃金の安い新興国でつくらせて、日本やアメリカでくみたてて安く販売するというのとおなじやり口だ。
 熟練労働者が排除されていった結果、自動車ではたびたび大規模なリコールが発生しているが、今回のマクドナルドの異物混入問題も同様の性質だ。
 かつてはアメリカでも都市近郊に屠畜場があり、熟練労働者がはたらいていた。いまでは都市からはるかはなれた地代の安い荒野に工場を建設し、移民など安い労働力をあつめて加工から成型、梱包まで一貫作業でやり、冷凍して世界に空輸する。

異物混入も追及の意思なし
 異物が混入しても最終加工場国は複数あり大規模工場だから、どこで混入したのかわからないし、それを本気で追及する意思もない。なぜならビーフパティにしろジャガイモにしろ、腐食をおさえたり、変色をふせぎ、味と香りを安定化させるさまざまな添加物、ひろい意味での異物がくわえられている食材となっているからだ。
 マクドナルドの異物混入は、ファストフード全体から見れば、氷山の一角である。そこから見えてくるのは、グローバル化、市場原理主義によってごく一握りのアメリカ独占資本がばくだいな利益をすいあげ、健康破壊をひろげているという実態である。
 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の項目のなかには、食の安全性を確保するための添加物検査を非関税障壁などと難癖をつけてとりはらうことももりこまれている。アメリカがなぜTPPの決着にやっきになっているか、今回のマクドナルドの異物混入からもうかがうことができる。アメリカによる食の支配をゆるしてはならない。