『人民の星』 5971号1面 2015年3月11日付
岩国を乗っ取る米軍 基地の外にも米兵用住宅
山口県岩国市の米海兵隊岩国基地では、昨年、普天間基地(沖縄)から空中給油部隊が移転してきた。厚木基地(神奈川県)の空母艦載機も一七年に移転してくる計画が進行している。これをうけて、岩国基地内と愛宕山地区で米軍住宅などの米軍施設の建設が急ピッチですすめられている。しかも米軍関係者(軍人、軍属、家族)の住宅は基地外にもひろがっており、それはだれの目にも見えるようになってきた。岩国市全体をアメリカ、米軍がのっとる動きとなっている。
増えるYナンバー車
すでに岩国市では米軍基地を中心に軍事道路の整備がすすめられ、米軍住宅の建設のために愛宕山にあるごみ焼却場も米軍住宅に煤煙がかかるなどの理由で移設させられたうえ、あたらしい焼却場ももっぱら米軍増強にあわせて規模を拡大するものとなっている。
このようななかで、市民のなかでは、「最近、Yナンバーが目につくようになった」と、話題になっている。Yナンバーとは、米軍関係者の車両のナンバープレートのことである。後からバイクで走っていて、信号機でとまった前の車のナンバープレートを見るとYナンバーだった、ということが急激にふえている。
昨年七、八月、空中給油機一五機と米兵や軍属、その家族ら約七八〇人が岩国基地に移転してきた。そのこともあり、基地外の住宅地で、米兵、軍属、家族がやたら目につきはじめている。一七年の艦載機部隊の移転では、軍人と家族、軍属をふくめ約三八〇〇人がくる。岩国基地の米軍機は二倍の約一二〇機、米軍人らは現在の二倍の約一万人になる。
これらのために、防衛省は、愛宕山の東地区にスポーツ施設、西地区に米軍住宅の建設をすすめている。西地区の工事用入口(写真)が、牛野谷の市民球場近くの欽明路道路に面してあり、道路をはさんで反対側に柵でかこんだ「国有地」の看板をかけたひろい土地がある。米軍住宅の建設にともなって防衛省がなんらかの施設をつくるのではないかと思われる。
その土地に隣接して、一般住宅より少し大きくて、まあたらしい二階建ての住宅が五軒たっている。見ると英語で「KINTAI TOWN」とある。それぞれの家の前にはYナンバーの車がとまっている。米軍岩国基地の関係者の住宅である。
牛野谷地区の団地のなかにも、Yナンバーの車のある真新しい住宅がある。その住宅からややはなれた場所にも三軒分相当の更地があり、そこも米兵用の賃貸住宅をたてるという話である。
川下地区の旭町では、米兵のための住宅がつぎつぎとたてられていたり、米兵用賃貸住宅のために、農業用ハウスがあった土地を更地にしているという。
川下地区のある住民は、借家の屋根をなおしてくれるように大家にたのんださい、借家を見にきた業者が、大家にむかって、「隣は空き家になっているし、家を新築して米軍に貸したらどうですか」とはなしかけているのが聞こえたという。
岩国市内では、米兵むけの民間賃貸住宅建設の動きが強まっている。
米兵に法外の住宅手当
不動産業者は、米軍関係者に住宅を貸せば、一〇万円以上の家賃がはいるという。そのため、岩国基地の増強にともなう米軍需要を見こんで、土地をもつ住民に、米兵用賃貸住宅をつくらないかと、はたらきかけてまわっているという。
家賃は一〇万円規模だという。市民の感覚では一〇万円は高い家賃だが、米兵にとってなんということはない。軍から住宅手当がでるからである。住民の話では、住宅手当として一一万円、水道光熱費で一〇万円の手当が米兵にでるという。日本政府の「思いやり予算」からでているともっぱらの話である。ちなみに、住宅手当の上限額は階級や家族の有無でかわるが、家族連れの大尉だと沖縄では月額二三万円、厚木基地では約二一万七〇〇〇円という。水道光熱費手当もでる。
防衛省の発表では、岩国基地の場合、一三年三月末時点で、米軍関係の居住者数は五三七九人である。うち基地外の居住者数は一一一五人で、約二割にもなる。これにくわえて、空中給油機部隊の米兵、軍属、家族がきたのである。
空母艦載機部隊が岩国基地へ移転してくるため、岩国基地内や愛宕山地区に家族住宅(約一〇六〇戸)や単身用将校アパートなどを建設中であるが、約五〇〇〇人分もの住宅は基地内だけではまかないきれず、基地外に大挙進出してくるのは必至である。
植民地的支配を許すな
こうした事態に、ある七〇代の男性は「基地の外にすむ米兵や軍属がふえているとは聞いていたが、一〇〇〇人以上もいるのか。最近、各地で米兵による事件・事故がふえていると聞く。空母艦載機部隊がくれば、ますます事件や事故もふえる。それが心配だ。これ以上、ふえたら、岩国はほんとうに米軍の街になる」と語っている。
べつの男性は「先日の防衛の説明会にいったが、住民が愛宕山の米軍住宅について質問しても、米軍側から開示するなといわれているといって、なにも具体的なことは答えない。防衛省も岩国市も米軍のいいなりだ。だから、岩国基地がますます増強される。先日、岩国基地内の工事で一万五〇〇〇g(ドラム缶七五本分)も燃料が配管から漏れていたことがわかったといっていたが、漏れたのは一月のことで一カ月半も前のことだ。防衛局は知っていてだまっていた。先日、福島原発でも放射能汚染水を海にたれ流していたことをかくしていたことが発覚したが、それとまったくおなじだ。防衛省はアメリカのいいなりだから、県や市に報告もしない」と防衛省や岩国市の姿勢に腹をたてている。
そして、「安倍が集団的自衛権の行使容認だといって、自衛隊を海外にだそうとしていることが心配だ。日本の状況を見ているとアメリカのいいなりになって戦争をやるということだろう。戦争になれば岩国は真っ先にねらわれる。いつまでもアメリカのいいなりではダメだ」と語っている。
なお岩国基地内でも突貫工事がつづいており、多数のコンクリートミキサー車、ダンプが行き来している。そのため、市内の民間工事に支障がでているという。岩国を米軍がのっとる事態になっており、岩国市民はもちろん山口県民、日本のすべての人人がたちあがって、植民地的な支配の強化をうちやぶることが猶予ならない課題となっている。