『人民の星』 5983号2面 2015年4月22日付

米州首脳会議 米の中南米支配を糾弾 ラウル・カストロの演説(下)

 一九六〇年四月六日、革命勝利のわずか一年後にアメリカ国務次官補レスター・マロリーは、悪辣な覚え書きを書いている。この覚え書きは、数十年後に機密扱いを解除されたものだが、その一部を紹介しよう。
 「キューバ人の大多数はカストロを支持している。力のある政治的反対派は存在しない。国内の支持を減少させるには、経済的な不満と困難にもとづいた幻滅と不満を通じる以外に、考え得る可能な方法はない」「キューバ経済を弱体化させるためには、キューバからお金と物資の供給をうばうことであり、その目的は、名目賃金や実質賃金を低下させ、飢餓と自暴自棄を引きおこし、政府を転覆することにある」
 われわれはきびしい困難にたえてきた。現在、キューバ人の七七%が経済封鎖がおしつけた困難のなかで生まれた。それはキューバ人をふくめて多くの人が想像する以上にきびしいものである。しかし、われわれの愛国的な信念は強まった。侵略は抵抗を増大させ、革命の過程を促進した。
 われわれがすでに社会主義を宣言し、アメリカのピッグス湾侵攻をうちやぶって社会主義をまもっていたとき、ケネディ大統領が暗殺された。それは、まさにキューバ革命の指導者、フィデル・カストロがキューバとの交渉をはじめようというケネディのメッセージをうけとったその日のことであった。
 「進歩のための同盟」をへて、われわれが債務の増大をさけることができずに何回かにわたって対外債務を支払ったのち、われわれの国国は、グローバル化する野蛮な新自由主義を押しつけられた。帝国主義の表現であるこの新自由主義によって、われわれの地域は「うしなわれた一〇年」を経験した。

北米自由貿易協定をはばむ
 「成熟した半球のパートナーシップ」の提案は北米自由貿易協定の強制となり、それは、これまでの米州機構のサミットともむすびついていた。もし、二〇〇五年にマルデプラタで、キルヒナー大統領とチャベス、ルラのイニシアチブによって阻止されていなかったら、われわれの国国の経済と主権、および共通の運命は破壊されていたであろう。
 その前年に、チャベスとフィデル・カストロが今日「われらのアメリカ諸国民のボリバル同盟」として知られるボリバルの代替案を誕生させていたのである。
 われわれは、オバマ大統領にたいして、われわれの間に存在する深刻な相違を尊重しつつ、敬意をもった対話とわれわれ両国の間の文明化された共存に応じる用意があることを表明してきた。
 わたしは、オバマ大統領が近いうちにキューバをテロ支援国家のリストから除外するであろうと表明したことを、肯定的な一歩であると歓迎する。キューバはけっしてそのようなリストにふくめられるべきではなかった。
 こんにちまで、キューバにたいして全面的におこなわれてきた経済的、商業的、金融的な封鎖は、わが国の人民に損害と犠牲をもたらし、わが国の発展にとっての主要な障害となっている。事実は、それが国際法の違反だということであり、その治外法権をひろげればすべての国の利益に損害をあたえるものである。
 外交関係を樹立することは一つの問題であり、経済封鎖はまたべつの問題である。それゆえ、すべてのみなさんにおねがいしたいことは、この経済封鎖に反対するたたかいを支持しつづけることが世の中の要請だということである。
 この問題やその他の問題は、将来の両国関係の正常化にむけたプロセスのなかで解決されるべきである。
 われわれについていえば、わが国の社会主義を改善し、人民にとってのすべての正義を獲得することを目的としたキューバ革命の成果を発展させ強化するためにはたらきつづけるであろう。

中南米各国の斗い支え合う
 ベネズエラは、アメリカ合衆国のような超大国の国家的安全保障にとっての脅威ではないし、脅威ではありえない。われわれは、アメリカ大統領がそのことをみとめていることは積極的なことであると評価している。
 わたしは、兄弟のベネズエラ・ボリバル共和国にたいして、その合法的な政府にたいして、ニコラス・マドゥロ大統領にひきいられる市民・軍事同盟にたいして、みずからの道をすすむためにたたかい、不安定化と一方的な制裁にたちむかっている人人にたいして、われわれの完全な、断固とした、誠実な支持を再度表明する必要がある。そうした制裁は解除されるべきである。
 われわれは、フォークランド、サウスジョージア、および南サンドイッチ島を回復しようとするアルゼンチン共和国の努力を引きつづきはげまし、金融上の主権を擁護する正当なたたかいを支持しつづける。
 われわれは、国内の環境破壊をもたらし、いちじるしく不等な条件を課そうとしている多国籍企業にたいするエクアドル政府の行動を引きつづき支持する。
 わたしは、ブラジルとルセフ・ブラジル大統領の地域統合への寄与と、進歩と利益を幅ひろい人民各層にもたらした社会政策の強化への寄与がみとめられることを希望する。
 われわれは、国連独立委員会が何十回にもわたって忠告してきたように、自決と独立を達成しようとするプエルトリコのラテンアメリカとカリブの人人への確固とした支持を維持する。
 われわれはまた、コロンビアにおける和平交渉が成功裏に終了するようわれわれの貢献をつづけるであろう。
 われわれすべてが、ハイチに対して、人道的な援助だけでなく、国の発展を保障するような財源をともなった支援を増加させるべきである。そして、カリブ海諸国が経済関係において正当な扱いをうけ、奴隷制と植民地主義によってもたらされた被害の賠償をうけることができるように支援すべきである。
 われわれは、一掃されるべき膨大な核兵器の脅威のもとに、また、気候変動のもとに生活している。平和への脅威が増大し、紛争がひろがっている。
 フィデル・カストロ議長がのべたように、「根本的な原因は貧困と低開発にあり、富の不公平な分配と世界を支配している意識にある。現代における低開発や貧困の原因は、征服と植民地化、奴隷制、植民地大国による地球の大半の略奪、帝国主義の誕生と世界の再分割のための血なまぐさい戦争にあることをわすれてはならない」。
(おわり)