『人民の星』
5993号1面 2015年5月27日付
佐賀農民 TPPに強い怒り
農繁期ついて集会ひらく 米作、畜産どちらも必要
二三日、佐賀市のマリトピアでTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題での要請集会が佐賀県農協中央会などによりひらかれ、農民を中心に全県から約五五〇人が参加した。農繁期であり参加できなかった農民も多いが、そういう人たちもふくめ農民からは、TPPは佐賀県の基幹産業である農業を崩壊させるもので絶対反対だ、アメリカいいなりでどこまでも譲歩する安倍政府はゆるせない、安全安心な食料の生産態勢を次世代にのこさなければならないなどの意見がだされた。
集会で中央会の中野吉實会長は「日米交渉でコメが話にあがってきており、大変な状況になっている。佐賀の農業を将来にひきつぐためにもいまは重要な時期だ。農業のためにたちあがって意見をのべていく」と決意をのべた。
情勢報告にたった同会の古賀孝博専務は「アメリカでは貿易促進権限(TPA)法案が提出されており、可決されればTPP交渉は一気に動く」と緊迫した局面について報告した。
集会では三人の農民代表が決意表明にたった。
佐賀市の米作農民・西岡正博氏は「日米協議でアメリカは主食用米一七万五〇〇〇㌧を中心に二一万五〇〇〇㌧の輸入枠新設をもとめている。米価がさがりつづけているもとで、こんなに輸入がふえれば供給過剰による米価の下落など国内のコメ生産へ大きな影響がある。日本の美田である中山間地の棚田、平坦部の水田農業は社会環境に大きな価値がある。食料生産をになうわたしたちは、先代たちがつくってくれたこの農業を次世代につなぐ責任がある。農業者が再生産できるようにしてほしい。TPPは農業だけでなく国民全体の食と暮らし、命に大きな影響をあたえるものだ」とのべた。
伊万里市の畜産農民・福野隆繁氏は「飼料や子牛の価格があがっており、販売価格では補えなくなっている。経営努力をしているが、TPPでそれも水の泡になる。わたしは五八歳になるが、息子もあとをついで経営をいっしょにやっている。われわれの世代で経営をおわらせてはならない。後継者がそだつ農業を構築したい。佐賀平野の豊富な稲ワラを畜産農家がとり、われわれの優良堆肥を米作農家に提供しながら、循環のなかで農業をやっている。いずれかの分野がくずれれば、すべてがくずれる。TPP交渉は国民の理解が得られなければテーブルをたってほしい」と訴えた。
JA唐津女性部長の原ひろ子氏は「TPP交渉をめぐる状況に不安を持つ。子どもたちの心と体をつくっているのは毎日の安全で安心な食べ物だ。TPPで食の安全にかんする規制もゆるめられる。子どもの成長にどんな影響をあたえるかわからない食べ物を食べさせるわけにはいかない。わたしたちは農業生産の拡大、地域の活性化に全力をあげている。各地域から声をあげて、運動を展開していく」とのべた。
集会では「農業の明るい未来を切りひらき、農業がいとなまれる基盤を将来につなげていくことをめざす」とする特別決議を採択し、全員で「がんばろう三唱」をおこなって閉会した。
低米価TPPでつぶす気か 川副町の農家
佐賀平野はいま、麦刈りや田植えの準備などひじょうにいそがしい季節をむかえている。
川副町の生産組合で麦刈りの真っ最中という農民は「TPPは絶対にダメだ」と、つぎのように語った。
「裏作のムギと表作のコメ、大豆をくみあわせて、組合をなんとかまわそうとしている。去年、コメの概算金(仮渡し金)が三〇〇〇円もさがったのはほんとうにいたかった。TPPをやって何千円だとかのアメリカのコメがはいってきたら、お手上げだ。生産組合もやっていけなくなる。だれも農業をやるものがいなくなる。川副町のあたりは先祖が干拓で苦労して切りひらいてくれた大事な農地だ。わしの代で、ここを荒れ野にさせては絶対にいけんと苦労しているのに、TPPなんかやったら全部おじゃんだ。なにがなんでもとめないといけない」
親子で麦刈りをしているという男性も「TPPはダメにきまっている」と強調した。
「息子がせっかくあとをついでくれるということになった。息子としてもいろいろと計算して、この面積でコメとムギをこうすればなんとかやっていけるとメドがたったのだろう。それもいまの米価とか麦価、補助金があってのことだ。ほんとうは補助金なしでまわさないといけないのだが、米価が二万円近くにならないとどうにもならない。
概算金が去年あんなにさがって、もうこれ以上はというぎりぎりだ。そこにコメの関税をさげるとか、まして一〇万㌧もアメリカから食用米をいれるとか、なんでそんな発想になる。安倍はとにかくアメリカのいいなりだ。以前の選挙でも自民党はTPP反対といっていたではないか。いまはなにがなんでもTPPをやるといっている。アメリカになんでそこまでいい顔をしないといけないのか」
またビニールハウスでトマトやキューリをつくっているという婦人は「ごらんのとおり、ムギにコメにと耕地がものすごく有効に使われているのが佐賀平野だ。このあたりもむかしの人が苦労してひらいてくれた。有明海とともに佐賀県の大事な宝物だと思う。それをダメにするようなTPPはやってはいけない」と強調した。