『人民の星』
6026号1面 2015年9月23日
必ず廃案みなぎる決意 安保法案強行糾弾
安倍追い詰めた国会包囲
「戦争法案廃案」「安倍はやめろ」の声に包囲されるなか、安倍政府、自公与党は一九日未明、参議院本会議で安保法案を強行採決した。一四日いらい、国会包囲の行動を連日くりひろげてきた人たちは、安倍政府の暴挙を糾弾しながら、青年学生をはじめ人民運動が歴史の転換をしるす発展をとげていることを肌で感じ、「たたかいはこれからだ」と斗争意欲を高めている。
一四日からはじまった国会前での抗議行動は、一六日からは夜を徹してとりくまれた。一七日は豪雨がつづくなかで、それまで午後からだった抗議行動は朝九時からはじまり、機動隊の厳戒態勢を圧倒する行動となった。一七日午後、特別委での強行採決が伝わると、六時半ころには、その数は三万人にふくれあがった。一八日も朝から続続おしかけ、夜の国会前大集会には四万人以上が参加した。
市民団体や弁護士、学者・文化人は、挨拶のなかで、安倍政府をつよく批判し、「団結した民衆はかならず勝利する」「たたかいはこれからだ」「未来はわれわれのものだ」「もともと地上には道はない。わたしたちのたたかいで道をきりひらこう」と語った。
九月一八日が、中国侵略から第二次世界大戦という一五年戦争の起点となった柳条湖事件(一九三一年、日本軍による鉄道爆破の謀略)の八四年目にあたる、と何人もの人が発言でふれ、「戦争で犠牲となった人たちがいまの事態を見たらどう考えるのか」「きょうはなんの日か絶対わすれてはならない」「二度と戦争をくりかえさせてはならないとたたかってきた」と語った。
職場の人が抗議参加を激励
国会前の抗議行動に参加した人は、さまざまな問題意識をもって参加している。
一八日の国会抗議行動にはじめて参加したという大学三年生は「安倍政府のやっていることは異常きわまわりない。ぼくは教職課程をとっているが、教育はほんらい生徒たちの認識や人生に大きな影響をあたえるものであると思うし、そのためには、ぼく自身がはっきりとした考えをもっていなければと思う。自分自身のことばで語らなければ、生徒たちにひびかないと思う。ぼくは国際法も学んでいるが、安保法案はほんとうにひどい。国際法をまなんでこい、と安倍にいいたい。政府の答弁は答えになっていないし、議論にならない。首相が質問者に“はやくしろ”などヤジをとばすなどありえない」といっきにはなした。
母親とつれだった社会人二年目という女子青年は「安保法案が大きな問題になっているがマスコミだけではほんとうのことがわからない。はっきりしているのは安倍さんは民意を聞く気がないということだ。現場にくればいろいろ勉強になる。きょうは会社をやすんできたが、会社の、まわりの人から“いっておいで”とおくりだされてきた」とのべた。
デザイナーでいまアイルランドから里帰りしているという男性(三六歳)は「国会前にくるのは三回目だ。安保法案に反対する理由ははっきりしている。“日本をまもるため”といっているがウソだ。アメリカにいわれイギリスやオーストラリアといっしょになって戦争にいくということだ。ぼくは前にアメリカに三年間いた。アメリカから見ると世界や、国際政治がよくわかる。いまの大学生はぼくらのときとくらべて大きく変化している。ぼくが大学生だったのは九〇年代で“バブルの平和ボケ”などといわれてきたが、福島第一原発事故が大きなショックをあたえたのではないか。政治のでたらめさがだれの目にもあきらかになった。一人一人がものを考え、行動していくことに大きな力がある」と語っていた。
青年の決起支持する中高年
若い世代がたたかいにたちあがったことは、中高年の世代の強い支持をうけ激励している。
「ごく普通の事務職員だ」という会社員の男性(五〇代)は、仕事のあいまに国会の動向もみながら、仕事の終業後、国会前にかけつけた。
男性は安保法案について、「安倍のやっていることは憲法無視、“おれが最高責任者”で人のいうことを聞かず、アメリカといっしょに戦争ができるようにしようとしている。民意などまったく無視だ」と怒った。
そして「いまの青年は“政治的無関心層”といわれてきたが、そうではなかった。自分の目で見て、考え行動している。学生らのラップ調の抗議をみて、“お祭りをやっているようなものだ”という人がいるがそうではない。ぼくらの世代は、デモなどはこわいものとして教えられ、運動が停滞するなかで学生生活をすごしてきた。しかし原発再稼働問題で国会前の行動をのぞいてから、こうした行動に参加するようになった。子どもたちに平和な未来をわたすためだ。安倍はなにをやるかわからない。このたたかいはおわらないし、つづく」とのべた。
国会前行動にはいわゆる「団塊の世代」といわれる六〇代後半の世代が多く参加した。そうした人の一人である男性(六四歳)は「学生たちのたちあがりを尊敬する。わたしらみたいな退職者とちがい、これから就職活動などに直面する人たちが、おもてだった行動にたちあがっている。ぼくたちはこうした若い人たちに、平和な社会をひきついでいく責任がある」とのべ、「日本は天皇や政治家はだれも政治責任をとっていない。アメリカが天皇を利用する政策をとったからだ。アメリカは東京空襲で一〇万人をなぶり殺しにしたが、皇居は爆撃しなかった。GHQのために丸の内も爆撃しなかった」と戦後の日本の対米従属を問題にした。
戦争法廃案から社会変革へ
国会前の行動に参加するのは二四回目だという男性(六六歳)も「若い人たちのたちあがりは心強い」といいながら、「わたしのおじさんにあたる三人が戦争に召集されている。いちばん上のおじさんは三度も召集された。おなじ敗戦国でも、ドイツやイタリアは地位協定をかえさせ主権をとりもどしている。日本はいまだにアメリカの属国のようだ」と安保法案を批判した。
また戦争反対の世論の高まりについて「家のまわりに何枚もスローガンや国会前の抗議の写真をはっているが、なにか悪さでもされるかと覚悟していたがそんなことはなかった。車に“廃案へ”のステッカーをはっているが、“がんばってくれ”の声もかかる。政府が強行成立させても、民意で戦争をはばみ、政府をかえればいいだけだ。安倍は国民世論をおそれている」と語っていた。
古参の労組活動家(七六歳)は、六〇年「安保」斗争と比較してつぎのように語っていた。
「世論の変化をつよく感じる。反対署名を訴える活動をしていても、子どもをつれた若い人たちが署名をしていく。署名した人たちのなかには元自衛隊員、現役の自衛隊員もいた。現役の隊員は“現役だから住所は勘弁してください”といいながら“けっきょくぼくたちはアメリカの指揮で戦地にいくということなんですよね”と法案の本質をずばりついていた。うちの組合ではこんどの問題でストをうったところがあるが、経営者がそれに理解をしめしてくれるところがでている。こんなことはこれまでなかった。中小企業の経営者のなかでも安倍批判が高まっているということだ。六〇年“安保”斗争のときはストライキで交通機関をとめた。これが社会的に大きな影響をあたえた。全港湾などがたちあがり、連合傘下でも動きだしているところもあるが、これが課題だ。ぼくらは戦争体験のある最後の世代だ。大学に入学したのは一九五九年だが、クラス討論をかさねて認識を深めていった。一九六〇年にはいるとみんなデモにくりだし、大学は休校状態になった。いま学生がたちあがってきたのは大きい。たいせつなことは廃案のたたかいにとどまらず、日本の社会そのものをかえるたたかいにしていかなければいけないということだ」