『人民の星』
6028号2面 2015年9月30日
アベノミクス第二ステージ
安倍得意のだまし戦術 戦争法からそらす
安保関連法成立を強引にすすめた安倍にたいする国民の批判がうずまいているにもかかわらず、対立候補はすべておさえこまれ、二四日、自民党両院議員総会で安倍が自民党総裁に再選された。その後、自民党本部で記者会見した安倍は、安保法のことには一言もふれず、これからは経済優先でいくと「GDP(国内総生産)六〇〇兆円」をぶちあげた。この日、フォルクスワーゲンの不正問題で株価は急落していたが、安倍の新経済政策にこれを回復させる力はなかった。
安倍は「アベノミクスは第二ステージにうつる」とし、「あらたな三本の矢」として、①強い経済(GDP六〇〇兆円に、現在四九〇兆円)、②子育て支援(合計特殊出生率一・八に、現在一・四)、③社会保障の改革(介護離職ゼロ)をうちだした。
GDP六〇〇兆円については達成年度については語らず、これらをどのようにして実現するのかはまったく不明で、「新三本の矢」については「日経」ですら「問われる具体策」と問題視せざるをえなかった。
他方で、安倍は消費税率一〇%については二〇一七年四月に予定どおり引きあげることを明言し、「日本一億総活躍プラン」をつくって高齢者にもばりばりはたらいてもらうとし、年金をもぎとることを示唆した。
来年の参院選にむけて“目あたらしい”政策をうちだして、安保法制にたいする批判をかわそうという意図は見え見えであるが、安倍のあらたな経済政策も、これまたアメリカ仕込みを手直ししたものにすぎない。
TPPの歌い文句の焼直し
安倍はGDPを六〇〇兆円にすることで「戦後最大の経済、そこから得られる戦後最大の国民生活の豊かさ」を実現すると大風呂敷をひろげた。そのために「経済圏を世界にひろげ、投資や人材を呼びこむ」とした。これは目あたらしいものでもなんでもなく、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)のうたい文句である。
米通商代表部(USTR)は今年四月一日、「二〇一五年外国貿易障壁報告書」を発表した。そのなかで日本にたいしてつぎのようにのべている。
「日本はいぜんとしてOECD加盟国のどの主要国とくらべても投資全体にしめる対内直接投資がもっとも低い。…二〇一三年六月、安倍総理が二〇二〇年までに対内直接投資残高を倍増するとの目標を発表し…推進している」
「さまざまな要因が日本におけるインバウンドM&A(=外からの企業買収)を困難にしている。それらは、外部投資家にたいする態度、株主の利益よりも保身的な経営陣を擁護する不適切な企業統治メカニズム、株式持ち合い…などである」
USTRは、アメリカの投資家が直接に日本企業などの買収や併合などをおこなうには、まだまだやりにくい日本企業独特の慣行などがたくさんあり、それを一掃しろという。これが実行されれば利益率の高い日本企業がつぎつぎとアメリカの支配下にはいっていく可能性がある。
安倍は「戦後最大の経済」などと夢物語をえがいているが、実態は日本経済がアメリカによって徹底的に収奪されていくというのが、「GDP六〇〇兆円」の中身なのである。
「第一次アベノミクス」は、アメリカ金融資本に大いに利益を提供したが、日本経済の繁栄という点では失敗におわっている。この二年間で企業収益は三割以上拡大しているが、労働者の実質賃金は下落し(労働分配率で五%低下)、正規労働者も六五%から六二%にへっている。うるおったのは米日金融資本だけで、労働者、勤労人民の貧困化は逆に深まった。その結果、今年にはいって四~六月期はGDPがマイナスになっている。
ここからいえることは「戦後最大の経済」をかかげる「第二次アベノミクス」は、人民大衆には「最大の豊かさ」はけっしてもたらさず、最大の貧困をおしつけ「貧乏から戦争へ」の道を突きすすむということだ。