『人民の星』 
  6033号1面 2015年10月17日
辺野古埋立取消 米国は基地を持って帰れ
全県的大衆運動をまき起こそう

 翁長雄志沖縄県知事は一三日、安倍政府が強行している名護市辺野古の新米軍基地建設を阻止するため、前知事・仲井真弘多がおこなった沿岸部埋め立ての承認について正式にとりけし、沖縄防衛局に通知した。翁長知事は記者会見で「辺野古に新基地をつくらせないという公約の実現にむけ全力でとりくむ」と決意をのべた。これは独立と平和をもとめる沖縄県民の総意にもとづく行動であり、県民は強い支持をあらわした。一方、沖縄防衛局は一四日、翁長知事の判断は「違法」とし、国土交通省にたいし行政不服審査法にもとづく無効の審査請求をし、採決がでるまで取消の執行停止を申し立てた。安倍政府は、あくまで宗主国アメリカの要求にこたえる売国的姿勢をあらわした。

安倍政府 新基地建設に必死
 埋め立て取消を発表した記者会見で翁長知事は「県外移設を公約して当選した知事が埋め立てを承認してしまった。そのこと自体が容認できなかった」とのべ、埋め立て承認の法的瑕疵(かし=欠点)を検討して今回の取消にいたったことをあきらかにした。
 そして「普天間飛行場の原点は戦後、県民が収容所にいれられているあいだに強制接収されたものだ。それ以外の基地もすべて強制接収されたわけで、沖縄県民みずからさしだした基地は一つもない」「普天間の危険性を除去するときに、辺野古にうつすということは、自分で土地をうばっておきながら、代わりのものを沖縄にさしだせというような理不尽な話がとおるか」と批判した。
 こうした沖縄県の訴えにたいし、官房長官・菅義偉は「埋め立て承認に瑕疵はない。行政の継続性から埋め立てをすすめるのは自然なことだ」「承認取消は、沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ」とのべ、木を見て森を見ない論法で人民をたぶらかし、翁長知事と沖縄県民にたいする悪罵をなげつけた。
 沖縄県の「行政の継続性」をたちきったのは「いい正月がくる」といって公約をなげすてて埋め立てを承認した前知事・仲井真であり、仲井真を東京によびつけて“変節”させた安倍政府である。沖縄県民は、その後の知事選挙で裏切った仲井真をたたきおとし、「行政の継続性」を回復した。戦争を平和といったり、解釈をころころかえるのが安倍政府のいちじるしい特徴であるが、菅の発言も黒を白といいくるめる相当なものである。
 これから「法的瑕疵」をめぐる法廷斗争がはじまるといわれているが、埋め立てを承認できない最大の理由は明白で、辺野古新基地建設に沖縄県民の大多数が反対しているということである。沖縄県民の大多数が反対しているのに、それがとおらないところに真の問題がある。それは民主主義の問題であるが、民主主義の破壊がアメリカ帝国主義の日本支配によってもたらされているという日本独特の問題がある。
 沖縄県民は、名護市長選、県知事選、国政選挙などあらゆる選挙で辺野古新基地に反対の候補を当選させ、大小さまざまな集会をひらいて辺野古新基地反対を訴えてきた。沖縄県民はさきの第二次世界大戦において沖縄戦を経験し、肉親を亡くし、家や財産をなくし、戦後は米軍に占領され、土地まで基地にとられるという、筆舌につくしがたい経験をしてきた。この経験から戦後、米軍基地にたいする反対運動が一貫してたたかわれ、辺野古新基地をゆるせば米軍はあと一〇〇年、二〇〇年いすわると、危機感をもって新基地反対斗争にとりくんできた。そこには、日本の独立と平和をもとめる県民の強い思いがある。
 ところが政府は、この県民の意思を無視する。知事の権限による埋め立て取消処分すら、逆に「違法」と訴え、沖縄県民にたいしても「普天間基地の危険性除去を無にしている」と難くせをつけるのである。民主主義が実行されず、横暴がまかりとおるのは、日本がいまだ独立しておらず、「日米安保条約」と米軍基地によって戦後七〇年たってもアメリカ帝国主義に支配され、その従属下にあるからである。
 第二次大戦において勝ち目のない戦争をつづけ、沖縄戦をはじめ三二〇万人もの命をうばった天皇や財閥を中心とする日本の支配層は人民革命をおそれ、戦後、アメリカに全面的に従属することで支配階級としての延命をはかった。そして、安倍政府が安保法制の成立をまっさきにアメリカ議会にいって誓ったように、いまもそれはつづいている。米軍がきめた辺野古新基地建設を撤回しようとしないのもそのためである。
 アメリカは沖縄をはじめとする日本全土を戦場にまきこむ対中国戦争を構想している。そのため在日米軍基地の再編、自衛隊の増強、安保法制の整備などがすすめられており、辺野古新基地建設もその一環である。
 「米軍は基地をもって帰れ」という沖縄の米軍基地反対斗争の発展は、日本全国にひびき、本土の戦争反対運動と一体となって米日反動を追いつめている。第二次大戦の性質と戦後日本社会の本質をあきらかにし、アメリカによる日本民族支配を真っ向からうちやぶるという斗争の矛先を鮮明にすることが全国の対米従属打破、戦争反対斗争を団結させ勝利を勝ちとる大きな力となる。