『人民の星』
6034号1面 2015年10月21日
平気でうそをウソつく安倍政府
TPPは典型 国民だまして戦争へ
アメリカの後押しで安倍内閣が再登場して三年近くになるが、人民の怒りは高まるばかりである。その一つがウソのオンパレードである。政治家のウソはめずらしいことではないが、安倍内閣はきわだっている。閣僚や党幹部が平気でうそをつき、それがばれてもなんの反省も謝罪もなく、厚顔無恥の開き直りのくりかえしである。それは米日反動派のためならどんなこともいとわない安倍政治がうみだすもので、人民に貧困をおしつけ、若者をアメリカの肉弾としてかりだし、日本を荒廃させ、原水爆戦争の戦場にさらす亡国の道である。
いま安倍政府は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の「大筋合意」を宣伝している。安倍は「大筋合意」の直後、「国家百年の計だ」「生産者が安心して、再生産に取り組むことができるよう、若いみなさんにとって夢のある分野にしていくために、われわれも全力をつくしていきたい」といった。だがコメ七万㌧の追加輸入や関税の大幅引下げなど日本市場をアメリカなどにあけはなとうとしていることに、日本農業に致命的な打撃をあたえるものだと農民をはじめとする勤労人民は怒りをつのらせている。日本の主権をそこない、日本社会全体をおびやかすものだとの批判も高まっている。
三年前、まだ野党だった自民党は民主党野田政府が推進していたTPP交渉参加に「断固反対」をさけんでいた。当時、全国各地の自民党がはっていたポスターは「ウソをつかない TPP断固反対 ブレない」だった(写真)。前厚労相・田村憲久は当時、「日本の農業や公的医療保険制度を破壊する恐れがある」といい、自民党政調会長・稲田朋美も「TPPは日本をアメリカの価値観で染めるということですから。そんなことをしているうちに、日本はつぶれてしまいます」といっていた。
ところが二〇一二年一二月の総選挙で、公約を反故にした民主党政府が人民から見すてられ、タナぼたで政府与党に復帰した安倍ら自民党は手のひらをかえし、安倍が日米首脳会談でTPP交渉参加をきめ、アメリカの要求に譲歩をかさね、「大筋合意」した。「アメリカの価値観に染めるということ」といっていた稲田は九月末に訪米し、元米国務副長官アーミテージら対日政策専門家が巣くう米戦略国際問題研究所で講演し、「大筋合意」について「国会で承認されるのはまちがいない」と、尽力することをちかっている。
「原発はコントロール…」
安倍のウソのなかでも日本人民をあ然とさせたのが、二〇一三年九月アルゼンチンでひらかれたIOC(国際オリンピック委員会)総会での東京オリンピック招致演説である。安倍は演説の冒頭で、福島第一原発事故についてふれ「お案じの向きには、わたしから保証をいたします。状況は、コントロール(統御)されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまでおよぼしたことはなく、今後とも、およぼすことはありません」と断言した。また安倍は「日本の原発は安全」といって、世界各国に売り込みをはかっている。
福島第一原発がいまも放射能をたれながすなど、まったく「コントロール」されていないことは周辺住民にとどまらず、だれもが知っていることである。福島第一原発では、地下水の流入をとめることができず、高濃度の放射能汚染水六〇〇㌧以上を毎日うみだしている。汚染水の浄化装置は故障をくりかえし、高濃度の汚染水は貯蔵タンクにあふれかえり、たびたび海にながれでている。それは復興を切望する人民をさかなでする暴挙である。
安倍の首相復帰の第一声は「東日本の大震災の復興の加速化がなによりも重要。あらゆる政策を総動員する」(二〇一二年一二月)とさけんだが、まったくの大ウソだった。東京オリンピックについて安倍は「どのようにしても“復興五輪”にしたい」などといっていた。
実際は東京オリンピック事業で人も資材ももっていかれ、東北各地の被災地復興はまともにできなくなっている。すすんでいるのは独占資本の大規模公共事業だけで、各地の復興住宅建設はまったくすすまず、震災から四年あまりもたつのに二〇万人以上が避難生活をしいられている。さらに避難生活につけいって土地をとりあげ、福島第一原発の放射性廃棄物処分場建設をたくらんでいる。
安倍は原発事故をめぐって、米GE(ゼネラルエレクトリック)の製造責任を不問とし、東京電力には税金をそそいでささえ、アメリカの要求にそって原発再稼働や原発輸出に奔走している。日本のすべての原発がとまっていたにもかかわらず、夏であろうと冬であろうと、全国のどの地域でも停電となるようなことはなく、電気はありあまっている状態である。それにもかかわらず、安倍政府はアメリカの指示で、人民の反対世論を無視し、原発再稼働を強行している。
「アベノミクス景気回復」
安倍の首相復帰いらいの政策の大きな柱が、日本の景気回復をかかげた「アベノミクス」だった。このなかで「企業の収益を、雇用の拡大や所得の上昇につなげる。それが消費の増加をつうじて、さらなる景気回復つながる」と大企業が儲かればすべてよくなるというトリクルダウン(おこぼれ)を宣伝した。これも大ウソだった。
アベノミクスで株価はあがり、大企業は増益となり、政府は「景気回復」を宣伝したが、一般の労働者、勤労人民からは「いったいどこのことか」という声があがった。アベノミクスの実態は、「日本を世界でいちばんビジネスのしやすい国」しようとするもので、「異次元の金融緩和」など市場に資金をあふれさせ、外資をよびこみ株価を引上げ、もうけさせるものだった。賃金があがったのはごく一部の大企業だけで、中小零細企業はコスト削減を強いられ、派遣労働など非正規労働は拡大し、インフレ政策や消費税率引上げで実質賃金はさがる一方である。
消費税率八%の引上げ(二〇一四年四月)にあたって安倍らは「税収は、全額社会保障の充実・安定化にあてる」と宣伝したが、年金削減や介護切り捨てに直面している高齢者をはじめ勤労人民にはこんなウソは通用しない。消費税の導入(一九八九年、三%)いらい、政府は「社会保障のため」をくりかえしてきたが、その四半世紀は医療・社会保障切りすての歴史だからである。
アベノミクスによる「景気回復」なるものも、破たんの淵にある。実体経済の回復のともなわない株価は暴落し、乱高下をくりかえし、中国経済のバブルの破たんのなかで、日本経済もあらたな過剰生産恐慌にひきよせられている。いま安倍はアベノミクスの「第二ステージ」などといって、東京オリンピックまでにGDP(国内総生産)を六〇〇兆円にするなどとぶちあげたが、圧倒的多数の人民は「また大ぼらをふいている」である。
経済で選挙し勝つと安保法
さきに安倍政府は、圧倒的な反対世論を無視し、安保法制を強行成立させた。この過程はウソにウソをつみかさねたものだった。
昨年七月、安倍政府は集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行した。このさい安倍は「現行の憲法解釈の基本的な考え方はなんらかわることはない」「閣議決定で戦争にまきこまれる恐れはいっそうなくなっていく、ふたたび戦争をする国になることはない」といいはった。
安倍がなんといおうと、集団的自衛権の行使容認は「専守防衛」のたてまえをすて、アメリカのために日本を「戦争のできる国にする」のが目的である。二〇〇〇年代にはいっていらい、米政府やアーミテージらの対日政策専門家は、「日米同盟の障害だ」と集団的自衛権容認を要求し、米兵の代替として日本の若者を戦地に投入させようとしてきた。アーミテージは「同盟とはおたがいのために血をながすことだ」といってはばからず、安保法案の国会上程にさいし「アメリカのために血を流す決意をした」と手をたたいた。
現場の自衛官からは「ようするにアメリカの指揮で戦地にいくことだ」と安保法制反対の声がでている。戦争体験者からは「軍隊が実弾をこめた銃をかついで外国にいくことは戦争にいくということだ」と、安倍政府が戦争につきすすんでいることに危惧(きぐ)を深めている。
安倍政府は集団的自衛権行使容認の閣議決定後、その具体化をはかる安保法制を成立させるために、大ウソをついて総選挙をやった。安倍は解散(二〇一四年一一月)にあたって、二〇一五年一〇月に予定していた消費税率一〇%への引上げの先送り(二〇一七年四月へ)を発表し、「アベノミクスについてさらに前にすすめるべきか、国民の判断をあおぎたい」とし、経済問題を最大の争点とした。
与野党をとわず既成政党への人民の批判は高く、投票率は戦後最低を記録し、自民党の絶対得票率は二割ほどだった。安倍が争点ずらしで総選挙をきりぬけ、新年にはいると安保法制成立につっぱしった。安倍の国会答弁にたいし、「他人の話を聞こうとしない」「質問の内容にこたえられず自分の主張をくりかえすだけ」「いいまかそうとし、平気でうそをいう」との人民の一致した意見である。
憲法学者からはいっせいに安保法制案が憲法違反だと批判されると、「憲法学者の役割や責任と政治家の責任はちがう」「憲法学者のいうとおりにしていたら日本をまもれるのか」とひらきなおった。
安倍の手本は「フセインは大量破壊兵器をかくしている」と大うそをついてイラク侵略戦争をやった米大統領ブッシュである。ブッシュはうそが判明しても、知らん顔している。オバマの「核のない世界」もうそであった。うそも堂堂とやればノーベル平和賞だってもらえるのである。それでアメリカの後ろ盾を得て安倍自民一統もウソがとまらないのである。
今年一二月で安倍が首相に復帰し、安倍政府が再登場していらい、三年になる。安倍政治のウソのつみかさねは、米日独占資本に奉仕し、日本の労働者、勤労人民に犠牲をおしつけ、日本の若者をアメリカの肉弾としてかりだすためであった。人民の怒りは充満し、安保法制に反対するたたかいはさらにひろがっている。対米従属の安倍政治への暴露を強め、全国各地、各戦線で首相の座から安倍をひきずりおろすたたかいをまきおこそう。