『人民の星』
6034号1面 2015年10月21日
岩国市川下 誰も知らぬアメリカ村特区
米軍優先に怒る住民
米軍岩国基地のある山口県岩国市では、米空母艦載機部隊の岩国移転を前にして、岩国市議会や市当局が安倍政府の「地方創生」にかこつけて、米軍基地のある川下地区を特区の「アメリカ村」にする構想や軍需企業の誘致、航空機博物館の建設などをうちだして岩国を「米軍の街」にしようとしている(本紙六〇三二号)。川下地区の住民の話で第一にはっきりしたことは、市議会や市当局はそうした計画について地元の住民にはまったく知らせずことをすすめていること、そして、このことを知った住民は怒り、強く反対していることである。
朝鮮戦争のとき米兵あふれる
車町の七〇代男性は「はじめて聞いた。川下を“アメリカ村”にするというが、ほんとうに地元のためなら、まず地元への説明なり、意見を聞くなりしてしかるべきだ。それがなく“アメリカ村”をつくるというのは米兵やその家族、外国人観光客のためで、地元住民にはメリットがない。空母艦載機部隊がくることになっているし、それを当てにしたものだろう。とにかく、岩国はなにごとも米軍基地優先で、市民をないがしろにしている」と語った。
べつの七〇代の男性は「その話はまったく聞いていないし、この付近では話題にもなっていない。また昔の朝鮮戦争のときのような川下にしようというのか」といい、「朝鮮戦争のときは川下に米兵があふれかえり、ほんとにひどかった。当時、アメリカは米兵が川下地区からでないようにしており、そのために外人バーなどの歓楽街ができ、また全国からパンパン(売春婦)があつまった。空母が入港すると国道一八九号からスリーコーナーまでは外人だらけだった。そうして事件や犯罪もおきた」と語り、川下をそうしたアメリカ村にすることはゆるされないとのべた。
また、岩国の活性化に関連して「岩国は土地がないというが、約八〇〇㌶を基地がしめている。岩国市の平地の半分近くが川下地区で、その三分の二が米軍基地だ。岩国の一番いいところを基地がおさえている。そのうえ、愛宕山もけずり米軍住宅にする。米軍基地がなければ岩国は住宅も工場もなんぼでもつくれる。戦後、日本鋼管が進出しようとしたが、米軍基地のためにだめになったという話もある」「アメリカは、戦後進駐したら海軍航空隊の飛行場を使うことを考えていたから、九月六日の海軍航空隊空襲のときも滑走路にも格納庫にも建物にも一発も爆弾をおとさなかった。周辺の大企業にも爆弾を一発もおとさなかった。おとしたのは飛行場の周辺と岩国駅周辺だけだ。航空隊周辺に民家に隣接して零戦の格納庫があり、それをねらって爆弾をおとし機銃掃射をおこない、徴用工や住民ら大勢が殺された」と語った。
いつまでアメリカにこびる
六〇代の婦人は「なんで“アメリカ村”という名にするのか。いくら空母艦載機部隊がきて、米軍がふえるといってもアメリカにこびるもいいかんげんにしてほしい。艦載機がきてこれ以上基地が増強されるのには反対だ。桑原議長らは昨年、沖縄にいって沖縄の負担軽減のために基地受け入れをするようなことをいっていた。岩国でも市民は基地の増強に反対しているのに、それを無視して市議会や市長は勝手なことばかりやる」と怒っていた。
五〇代の男性も「そのことははじめて聞いた」といいながら「市議会や市長はこれまでも“基地との共存”をいってきたが、今度の“アメリカ村”は度はずれている。米軍基地はどんどん増強されているが、岩国市はますますさびれている。岩国駅前は人通りがへり、シャッターを閉めた店が多く、若者は仕事が少ないために市外にでていっている。基地が岩国の発展をもたらさないどころか阻害しているのははっきりしている」と「基地との共存」を批判していた。
楠町の六〇代女性は「アメリカ村をつくるというけれど、すでに岩国の街はアメリカに占領されつつある。基地はもとより、愛宕山の米軍住宅やスポーツ施設、それにこの辺でも、米兵や米軍家族相手の一軒家がたち米軍関係者が住んでいる。庭にYナンバーの車が駐車しているのですぐわかる。家主は日本人に貸すより、米軍に貸す方が家賃も高いし、払いもいいといっている。地元の住民にとっては、治安のことが心配になる」と語っていた。
アメリカ村はもってのほか
六〇代男性は「川下にアメリカ村をつくるとはどういうことか。基地内には日本人ははいることができない。愛宕山の米軍住宅やスポーツ施設も、日本の国でありながら日本人が自由に出入りすることができない、通行もゆるされない治外法権のアメリカ村ではないか。市議会も市当局も“基地との共存”をかかげるならこのような治外法権をなくし、日本の法律が適用されるようにしなければならない。川下地区の活性化を叫ぶなら、基地をなくすことが先決だ。川下地区にアメリカ村などつくる必要はない」ときっぱりと語った。
また、五〇代女性も「アメリカ村などいらない。現在も基地内や愛宕山では艦載機の移転のための準備工事がすすんでいる。二年後には五九機もの艦載機が移駐し、米兵や軍属、家族など五〇〇〇人近くがくると聞いている。そうなると現在の米軍の数とあわせると一万人の米軍基地になる。だが、基地の人口が増えたからといって岩国市が発展するわけではない。“基地のなかに沖縄がある”といわれるように、“基地のなかに岩国がある”という街にしてはいけない。米兵の犯罪や事件、事故をなくすためにも基地はいらない。アメリカ村などもってのほかだ。基地のない岩国を望む」とのべていた。