『人民の星』 
  6036号2面 2015年10月28日
安倍がモンゴル・中央アジア歴訪
アメリカの手代でまたカネばらまく

 首相・安倍は二二日からモンゴルと中央アジア五カ国(トルクメニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタン)の歴訪に出発した。安倍は首相に復帰していらい、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」と称して毎月のように外遊し、今回の歴訪で訪問国は六〇カ国になる。歴代政府のなかでも外遊が突出した安倍外交は、力のおちるアメリカの影響力を補完するのを目的とし、日本人民の血税を湯水のようにばらまくのである。資金援助ということで各国は安倍訪問を「歓迎」はするが、「アメリカの手先」「アメリカの提灯持ち」という評価はどこでもひろがり安倍政府の影響力はひろがらない。
 日本の首相が中央アジア諸国を訪問するのは二〇〇六年の小泉いらい(カザフスタンとウズベキスタン)、九年ぶりである。中央アジアは石油、天然ガス、ウランなどの資源が豊富で、安倍政府は今回の歴訪で、「資源外交」を前面にだしている。
 安倍もなにはばかることなく、「トップセールス」といい、約五〇の日本企業・団体の幹部が同行している。「日本の高い技術力」をアピールしてインフラ整備などでの商機拡大をもくろんでいるわけである。

上海協力機構をくずす意図
 だが政治目的もある。アメリカの戦略にそって、中国およびロシアを中心にした上海協力機構にくさびをうちこむことである。上海協力機構は中ロ両国と旧ソ連邦諸国のカザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンをあわせた六カ国となっている。この機構は二〇〇一年に発足した地域安全保障機構で、アメリカを中心とした西側同盟とは一線を画している。
 発足後、インドとパキスタンが加盟し、旧ソ連邦諸国や中央アジア、南アジア諸国から加盟申請があいつぎ、オブザーバーや客員として十数カ国が会議に参加している。
 安倍の最初の訪問国、モンゴルはオブザーバー国、トルクメニスタンは客員参加国である。中近東では反米のイランがオブザーバー国で、アメリカの政府転覆策動とたたかっているシリアは今年加盟を申請し、上海機構は、アメリカに対抗する地域安全保障機構としての性格を強めている。
 今回の安倍の中央アジア歴訪は、その上海協力機構をなんとかくずそうとする意図がある。
 安倍は九月末、国連総会にでたあと、カリブ海のジャマイカをおとずれた。中南米・カリブ海諸国はアメリカと一線を画す動きをとっている。そこでのアメリカの失地回復を側面から援助するのが目的だった。安倍は昨年七月にも、日本の首相として一〇年ぶりに中南米・カリブ海五カ国歴訪をおこなっている。

国際会議で日本の地位低下
 しかし安倍は、この三年近く、アメリカのために外遊をかさねているが効果はうすい。モンゴル・中央アジア歴訪のあと安倍は、一連の国際会議に出席するが、日本の地位の低下が一段とはっきりしてきている。
 一一月一日からソウルで日中「韓」三国首脳会議がひらかれるが、「韓国」は中国に経済的な依存を強めており、「韓国」大統領・朴槿恵はアメリカの制止をふりきって中国の抗日戦争勝利七〇周年記念式典に参加するほどである。さらに一一月にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(フィリピン・マニラ)、G20(主要二〇カ国・地域)首脳会議(トルコ・アンタルヤ)、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議(マレーシア・クアラルンプール)などの会議がひらかれ安倍も出席するが、いずれも主役は中国でアメリカではない。

中国の影響力示すAIIB
 今年六月に中国などが提唱したアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立協定調印にしめされたように、アジア・太平洋地域で米日は孤立している。AIIBは中国とASEAN諸国が呼びかけたもので、アジア諸国への中国の経済的な影響力のひろがりをしめした。
 今年三月末の創設メンバー申請の締め切りにさいし、長年にわたってアメリカの同盟国であったイギリスが加盟申請にふみきり、ドイツ、フランス、イタリア、ロシア、ブラジル、南アフリカなどがなだれをうって加盟を申請した。現在の加盟国は五七カ国になっている。さらに二〇カ国が関心をよせており、世界に加盟国がひろがっている。自国の利益第一でAIIBに加盟した英首相キャメロンは、二一日の英中首脳会談で対中関係が「黄金時代」にはいったとまでいってはばからない。

米追従の日本国際的に孤立
 アメリカは世界的にはIMF(国際通貨基金)・世界銀行、アジア地域ではアジア開発銀行を、金融・投資の面からの支配の道具としてきた。日本はアメリカの手先としてアジア開発銀行の歴代の総裁役をつとめてきた。オバマ政府は、中国主導のAIIBを警戒し、不参加を呼びかけたが、各国はそれはおかまいなしに参加をきめ、アメリカに忠実な日本は「不参加」にしたが、アメリカともども国際的に孤立した姿をさらした。
 日本政府は第二次大戦の戦後賠償を糸口として、東南アジア諸国にたいする政府開発援助(ODA)で影響力をひろげ、アメリカの支配をささえてきた。日本独占資本もアメリカの戦略にそうことで利益を得てきた。だがいまでは東南アジア諸国への日本政府の影響力は低下している。
 さいきんインドネシアの高速鉄道計画で安倍政府は、中国に受注をさらわれた。インドネシアは東南アジアでは日本が最大の援助国だった。高速鉄道計画についても、新幹線の売り込みをはかっていた日本の受注が確実視されていた。今年三月にインドネシア大統領が来日したさい、安倍は日本の新幹線方式の導入を前提に一四〇〇億円の円借款を表明していた。
 しかしAIIBともかかわって今年にはいり中国が売り込みをはかり、九月末にインドネシア政府は中国受注を発表した。安倍政府は「中国の計画には疑念がある」といったが、あとの祭りである。アジア地域では、マレーシアやインドでも高速鉄道網の整備が検討されているが、いずれの国もAIIB加盟国で、日本は劣勢である。
 安倍はこの三年間、「地球儀を俯瞰する外交」といって三〇兆円もの資金を経済援助としてばらまいてきた。それもアメリカのためである。
 多くの人は、「外国ばかりゆかないで、国の復興をやれ」「東日本大震災の復興がさきではないか。なにを外国に遊びにいって、カネをばらまいているのだ」と怒っている。アメリカのために税金を外国にばらまいて、国内の人人の生活は苦しくなり、震災の復興など進んでいない。
 外交、政治、軍事、経済など、すべてで安倍政府はアメリカ言いなりである。しかしその道をとることで国際的には孤立し、戦争の鉄砲玉にまでされようとしている。