『人民の星』
6038号2面 2015年11月4日
安保法成立下で米日軍事一体化に拍車
米軍に自衛隊組み込み戦争
安倍政府と自民、公明は、安保法を九月に強行成立させた。安保法を前後して、米日の軍事一体化が急速に強まっている。それは戦争の道である。
四月末に日米防衛・閣僚会議(いわゆる2+2)でとりきめた新日米防衛ガイドラインは、戦時だけでなく、日常不断に米軍と自衛隊が共同の行動や軍事作戦をおこなうために、「同盟調整メカニズム」=日米共同の軍事司令部を設置し機能させ、また共同作戦計画をつくるとしている。これまで、訓練・演習のときには作戦司令部を設置してきたが、これを日常から設置し人員を配置して、そのまま戦時に移行できるようにした。
すでに在日米軍および在日米空軍司令部のある横田基地(東京都)に自衛隊との共同統合運用調整所(司令部)が設置されており、航空総隊司令部も移転している。
陸上自衛隊については、新防衛大綱によって五方面隊を一元的に指揮する「陸上総隊」をつくり、中央即応集団は今後、廃止してその傘下の部隊(空挺部隊やヘリ団など)は陸上総隊の直轄部隊としてくみこまれる。そして、陸上総隊司令部(朝霞駐屯地)機能の一部を米陸軍司令部のあるキャンプ座間(神奈川県)にうつして、共同司令部をつくって、米陸軍との関係強化をはかろうとしている。
こうしたもとで、日米が重視している軍事作戦の一つは、強襲上陸作戦である。安保法案が審議されているさなかの八月三一日から九月九日まで、陸海空自衛隊一一〇〇人が米カリフォルニア州で米海兵隊を中心とした米軍三〇〇〇人と「ドーン・ブリッツ2015」という軍事演習をおこなった。
メキシコやニュージーランドの軍隊も参加した多国間の強襲上陸作戦である。自衛艦隊もふくめた艦砲射撃、自衛隊のヘリ空母「ひゅうが」での、米海兵隊のオスプレイの離着陸や、自衛隊の上陸用舟艇を使った上陸、兵站拠点の建設などをおこなった。
政府・防衛省は陸上自衛隊と米海兵隊による上陸演習を尖閣諸島などの「島しょ防衛」と説明している。尖閣をめぐる紛争対処で上陸作戦をやろうというのである。むろん、その他の国や地域にたいしても強襲上陸作戦をやるために演習を強めているのである。
「日本版海兵隊」作る
アメリカは、陸上自衛隊をアメリカの海兵隊のようなものにすることをもとめてきた。これをうけて日本版海兵隊といわれる水陸機動団(約三〇〇〇人。陸上総隊の直轄部隊)を一八年度までに編成することをきめている。その核となるのは西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市)で、この部隊はいつも米海兵隊といっしょに強襲上陸演習をおこなっている。
防衛省は、日本版海兵隊のために米海兵隊とおなじようにアメリカ製のオスプレイ機や水陸両用車を導入する。佐世保基地に揚陸艦をおける港湾施設をつくったり、水陸両用車もおく。オスプレイを佐賀空港に配備し、佐世保基地においた揚陸艦に兵隊、オスプレイ、水陸両用車をつんで出撃する態勢をつくろうとしている。ちなみに、隣接する米海軍佐世保基地には米海軍の揚陸艦隊がいる。
米軍は、空港制圧、市街戦などの特殊作戦にも自衛隊を引きだそうとしている。今年八月、アラスカでおこなった米空軍主催の多国間演習「レッド・フラッグ・アラスカ」には、航空自衛隊の部隊とともに陸上自衛隊の空挺部隊がはじめて参加した。陸自・空挺部隊は、米空挺部隊といっしょに米軍の輸送機にのりこんで、目的地に近づくとパラシュート降下して空港制圧作戦をおこなった。
陸自の中央即応集団所属の特殊作戦部隊は、米陸軍の特殊部隊グリーンベレーとひそかに反テロ作戦をおこなっている。これは、沖縄近海での訓練中に、日米の隊員がのりこんだ特殊作戦ヘリが米軍の輸送船に墜落して、双方の隊員に負傷者がでたことであきらかになった。グリーンベレーは、敵地に潜入し、政権転覆などの謀略活動をおこなう部隊である。自衛隊もこうした部隊とひそかに訓練している。
海上自衛隊の艦隊は、米空母機動部隊にくみこまれて軍事演習を強めている。
米空母部隊海自が護衛
一〇月一日、原子力空母ジョージ・ワシントンにかわって原子力空母ロナルド・レーガンが米海軍横須賀基地に配備された。入港をはじめて先導したのは海自のヘリ空母「いずも」だった。「いずも」はジョージ・ワシントンがアメリカに帰港するさいも随行して見送った。海自艦隊が米空母機動部隊にくみこまれ、米空母機動部隊をまもる任務となっているということである。
米海軍トップの海軍作戦部長グリナート(当時)は一三年五月の講演で、日本の集団的自衛権の行使容認について「実現すれば、日米合同の空母機動部隊をつくることもできる」とのべていた。日米共同演習では海自の艦隊が米空母を護衛する態勢で演習をしており、新日米防衛ガイドラインでは平時からの「米艦の防護」をきめ、海自艦隊が米第七艦隊にくみこまれて、アジア太平洋地域からインド洋、ペルシャ湾などで行動できるようになっている。
米海軍と海上自衛隊は、弾道ミサイル(BMD)用迎撃ミサイルを搭載したイージス艦をふやしている。米海軍は横須賀基地を拠点に、一七年までにイージス艦を一〇隻にし、海上自衛隊も八隻にする計画である。
また、南中国海でも中国の艦船や島しょ施設にたいして米日共同での警戒監視活動をはじめようとしている。アメリカは中国が領有する南沙諸島の一二内に、米第七艦隊所属のイージス艦ラッセンを侵入させ中国を軍事挑発している。一〇月末には、米空母「セオドア・ルーズベルト」が南中国海にはいり、海自護衛艦「ふゆづき」と軍事演習をおこなった。
弾薬含め米へ兵站支援
戦争遂行には兵站支援も不可欠である。いくら強力な軍隊でも兵站支援がなければ、戦争をつづけることはできない。今度の安保法では、これまでの補給、輸送、修理・整備、医療、通信、空港・港湾業務、施設使用などにくわえ、それまで禁じていた弾薬や兵器の輸送、攻撃に出撃する戦斗機への給油なども可能とした。日本は米軍にたいして全面的な兵站支援をおこなうとしている。
一〇月二〇~二三日には、山口県の米海兵隊岩国基地と広島県の秋月・川上・広の米陸軍弾薬庫で、陸上自衛隊と米軍による日米共同警護出動演習がおこなわれた。自衛隊が米軍の基地・施設を防護するというものである。基地警護も兵站活動の一つとなっている。自衛隊が兵站支援で海外にでていくときは、海外の米軍基地の防護も自衛隊の任務にくわわる可能性がある。さらに、米軍にたいする武器、弾薬などの補給もおこなうようになる。
PKO(国連平和維持活動)も、活動分野と武器使用が大きく緩和される。アメリカの要求である。これまでの日本のPKOでは停戦監視や被災民救援などに限定されていたが、これに治安維持活動や他国部隊への「駆け付け警護」などがくわわる。武器使用もこれまで自分の体をまもる(正当防衛)のに使用可能としていたが、治安維持や駆け付け警護など、任務遂行のための武器使用を可能にした。現在、派兵している南スーダンのPKO部隊の武器使用を緩和しようとしている。
武器輸出も日米一体化
武器輸出でも日米一体化が強まっている。
安倍政府は昨年四月、「武器輸出三原則」を破棄し、武器輸出を促進する「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。アメリカの対日政策書「第三次アーミテージ・ナイ報告書」(一二年八月)は「(日米の)軍需産業のより密接な連携が必要」とのべ、日本がいっそう武器輸出を解禁し、武器の共同開発を強めることをもとめた。
この方針にそって安倍政府は、安保法が公布された翌日の一〇月一日に「防衛装備庁」を発足させた。防衛装備庁は、戦斗機や艦船などの武器や弾薬、通信機器、機械、燃料、食糧などの「防衛装備品」の調達や、武器の研究・開発、輸出などを一元的にあつかい、国内の軍需企業への助言や各国との交渉窓口にもなる。
日本は次期主力戦斗機としてロッキード・マーチン社のステルス戦斗機F35を導入するが、その部品生産もおこなう。部品は日本だけでなくアメリカが輸出する機体にも使われる。またアジアで使われるF35を整備する工場を日本とオーストラリアにつくる。昨年七月、迎撃ミサイルPAC2の部品(シーカージャイロ)をアメリカが製造していないために、日本が生産し、アメリカへ輸出することをきめた。
日本企業もアメリカの兵器生産のなかに組みこまれるということでもある。武器生産、輸出でも対米従属がさらにいっそうすすむのは必至である。
日本は安保法制のもとで、ますますアメリカに支配され、中国や北朝鮮をはじめ世界中でアメリカがたくらむ戦争に引きだされようとしている。しかも、この態勢で戦争にすすむならば、日本がミサイルの標的となり、廃墟になることは疑いない。
安保法廃止の斗いは、戦争と対米従属の根源である、「安保」破棄、米軍基地撤去の課題とかたくむすびつけて発展させなければならない。